勇者の祭典2
「それでは最後に、本年の勇者語大賞の発表を致します 」司会者が言うと、
メガネをかけた男が壇上に立った。
「あら、メガネさんが出てきて、アーモンが後ろに立っているわ 」
「メガネ君、何しに出てきたんだ? 」
「少し嫌な予感がするのう……」
「勇者語大賞 審査委員長のメガネ君。と申します 」
「審査委員長??」カシューは思わず問い返す。
「今回の審査は、素晴らしい2つの言葉で、審査委員会の票が割れてしまいました 」
「最善を尽くせー!!」
「尻から火が出て大回転ー!!」
王スポを見た観客から野次が飛ぶ。
「そう。その2つです。ほとんどの審査員は最善を尽くせと言います。尽くしてこそ道が開かれる時がある、と」
その通りだ。尻から火なんて論外だろうとカシューは思う。
「ここ10年、魔王軍の進行によって多くの方々が亡くなりました。最近は多くの勇者の奮闘により戦況は改善されるも、悲劇の傷が未だ癒えない方々も大勢います 」
静まり帰り聞き入る観衆。
「そんな時です。テッドorアライブのリーダーのテッドさんが、城塞都市を救い、絶対の死地に陥った勇者達を救い、そして尻から火を出して大回転をして、魔牛の大群を殲滅したのです 」
いや、してないから、とテッドは内心で突っ込みを入れる。
「私は最初、城塞都市の話を友人と共に聞いて泣き、そして最後は腹を抱えて笑ってしまいました 」
「そして思ったのです・・・人は強いだけでは生きていけません。笑顔や、時にユーモアが必要なのです 」
「真の勇者は強さと優しさ、そして人を笑顔にする事が出来る者です。私、メガネ君は勇者語大賞にテッド氏の"尻から火が出て大回転"を推薦致します!!!」
「ウォオオオオ!!!」
7割ぐらいの観客が盛り上がって同意をしている。
よしトドメだとメガネ君は追撃をかける。
「皆さん!!尻から火が出て大回転を、この場で見てみたいと思いませんか!!」
「ウォオオオオオオオオオオオオ!!!」
大観衆の心が一つになった。
そんな事言われても無理だから。テッドは物凄く焦っていた。
先程、冒険にイレギュラーは当たり前とか思っていたのが嘘のようだ。
しかし救いの女神が現れた。
「ダメよ。こんな所で尻から火を出して大回転をされたら、みんな消し屑になってしまう!!」
唯一の目撃者のミーネが慌てて止めに入る。
しかしメガネ君は笑顔で、
「大丈夫ですよ。ミーネさん。王都防衛の最精鋭部隊、結界近衛団に来て頂いています 」
聖なる鎧を着た僧兵40人がぞろぞろとステージを囲みだして、詠唱を始める。
「アーモンさん、お願いします!!」とメガネ君が合図をだすと、いつの間にかテッドの背後に立っていたアーモンが、テッドを掴んで結界内に投げ入れた。
詠唱が終わり結界が完成する。
「さぁ、テッドさん!!お願いします!!」とメガネ君が言うが、テッドはオロオロするしか出来ない。というか出来るわけが無い。
すると、
「テーッド!!」
「テーッド!!」
「テーッド!!」
まさかのテッドコールが巻きおこる。
もぅダメだ……
真実を告げるしかない…テッドが語ろうとした時に奇跡が起きた。
「リーダー、仕方がないですね。真実を語りましょう 」とブービーが前に出てきてくれたのだ。
深呼吸したブービーは語り出す。
「皆さん。リーダーはお尻にデキモノが出来ております 」
「え〜!!!」とテッドが驚くも、
モビーも前に出てきて
「リーダーはデキモノが出来ています。かなり危険な状態です 」と真顔で合いの手を入れる。
騒めく会場。
「リーダーはデキモノなんだってよ 」
「極炎がコントロール出来ずに尻が爆発するんじゃね 」
「尻から火が出て大爆発!!」
好き勝手な事を言い出す大観衆。
天国から地獄。人生最悪の瞬間だとテッドは思った……