氷の魔王編2
「ち、ち、ち、中魔王?私が大量の魔力を消費して作り上げた完璧なスキー場を寄越せと? 」
フリーチェは室内をぐるぐると回りながら考える。
なんたる卑劣、なんたる卑怯。しかし、それでこその魔王。しかも名を名乗らないのがズルい。私の所属する大魔王様の系列なら話し合いが出来るが、それすらわからない。
しかも、手紙の内容があれだけだから、この後、どうすれば良いのか、わからない。木こりは大事な奴隷。こんな事で失うわけにはいかない。
「フリーチェ様!! 」
ドンと扉が開いて村長補佐が入って来る。
「何ですか?騒々しい。常にクール、それが氷雪の魔王フリーチェの部下ですよ 」
「すみません、フリーチェ様。多くの村人が今朝から体調不良で起き上がれない状態でして…… 」
「ノットクール。私は医者ではありません。皆には安静にするように伝えなさい。医者には48時間頑張るように指示を出して下さい 」
「はっ!! 」
急に皆が体調不良……嫌な予感がします。中魔王とやらの能力だとしたら、かなり厄介です……
「フリーチェ様 」
「お入りなさい。どうしました 」
2人いる門番の内の1人がドアを開けて入ってくる。
「それが…… 」
門番は1枚の手紙を差しだした。フリーチェは手紙を奪い取った。
『木こりを返して欲しくば、今すぐにマイナー湖に来い。中魔王サマ 』
「き!き!き!私の大事な木こりを!!なんたる卑劣!! 」
「ノ、ノットクール 」
門番が恐る恐る口を挟んだ。
「ム、ムキーッ!!私を馬鹿にしてるのですか!! 」
フリーチェは右手を後ろに少し下げて奇妙な動きを開始した。その右手の回りに空中の水分が凍って細かい氷のカケラがキラキラと輝き始めた。
「氷の突風ーッ!! 」
掛け声と共に右手を突き出すと、大きな氷の渦が門番を包みこんだ。
カチーンと凍りつく門番。
「人の大事な決め台詞をパクるとはなんたる恥知らず。そこで永遠に凍りついていなさい 」
満足したのか落ち着いたフリーチェ。思考を中魔王サマに戻す。
中魔王サマ……聞いた事がない魔王ですね。しかし嫌な響きです。まぁ、いいでしょう。私は飛べるのでひとっ飛びです。
そう言えば、中魔王サマがどんな姿かを聞いておくべきでした……まぁ、もう1人の門番に聞けば良いでしょう。
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マイナー湖はマイナー村から少し離れた場所にあるマイナー山脈随一の大きな湖である。
面積は10㎢以上、最大深度は30m以上で冬場の今は湖面が凍りついている。
テッドとアライブは凍りついた湖面の上でフリーチェを待っていた。
「テッド、この作戦で大丈夫なのかな 」
「心配するなアライブ。きっと上手くいく。上手く行かせて見せる 」
「……そうだね。しっちゃかめっちゃかになっても、最後には何とかするのが、僕たちだからね 」
「来たぞ 」
村の方から空を飛んで何かが飛んでくる。その姿は徐々に大きくなりフリーチェとなった。上空から降りてくるフリーチェ。
「貴方達ですか、私の大事な木こりをさらったお馬鹿さん達は 」
「そうだ、俺の名前は中魔王サマ。木こりコレクターだ。小魔王ごときに木こりは渡せない 」
右の前に出るテッド。
「き、木こりコレクター…… 」
「そして僕の名前は大魔王カッカ。スキー場コレクターだ。小魔王ごときにスキー場は渡せない 」
左の前に出るアライブ。
フリーチェはクールになって、二人を見比べて笑顔になった。
「アイム クール。貴方達からは魔力をほとんど感じません。この若き天才フリーチェを騙せると思ったのですか 」
テッドも笑って答える。
「愚かなり、小魔王。小魔王ごときに中魔王の魔力は測れない。そんな事も知らぬのか 」
「なっ…… 」
「天才が聞いて呆れる、さすが小魔王 」
「ムキーッ!!私は若き天才小魔王フリーチェ。いずれ大魔王になる男です 」
「……天才はムキーッとか言わないと思う 」
ボソッと呟くアライブ。
「ムキーッ!!人の決めゼリフを侮辱するとは、何たる失礼 」
アライブの方に向きを変えるフリーチェ。右手を後ろに少し下げて奇妙な動きを開始する。右手の回りに空中の水分が凍って細かい氷のカケラがキラキラと輝き始めた。
「氷の突風ーッ!! 」
掛け声と共に右手を突き出すと、大きな氷の渦がアライブに襲いかかる。
走って避けるアライブ。
「は、早い。私のアイスブラストを避けるとは 」
愕然としているフリーチェにテッドが後ろから走りより襲いかかった。