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キュードランド落とし編2

「ワシは見たんじゃ。ウルフンがメガネ君からもらった物を…… 」


 ヘーゼルは息を整え、皆を見渡した。


「ちょっと待って、ウルフンさんはメガネさんから切り札の魔法のこもった青いペンダントをもらったはずよ。みんなで見てるわ 」

 ココが口をはさむ。


「あれはダミー(にせもの)じゃ 」


「『「『「え???」』」』」


「ワシは見たんじゃ。メガネ君と別れた後にウルフンの元にメガネ君のスタイリストが現れたんじゃ 」


「『「『「スタイリスト???」』」』」


「そうじゃ。メガネ君のスタイリストを名乗る男は、ウルフンに真っ赤な帽子を渡して、耳元で何かささやいたんじゃ。そして、お似合いですよ〜と笑いながら去っていったんじゃ 」


「…… 」


「ウルフンは、ウヒョヒョヒョ〜、これでワイは最強のモンスターテイマーや〜とか言いながら、踊りながら去って行ったんじゃ 」


「ウルフンが変なのはわかるが、それだけでは青いペンダントがダミーかどうかはわからないだろう 」

 なぜか嬉しそうなカシュー。キッと目を尖らせるヘーゼル。


「それは…… 」


「わかったわ。ここにいるのは信頼のおける仲間だけ。私の知っている事をお話するわ 」


 重くなりそうな空気を察してグレティ姫が口を挟む。


「メガネ指令はキュードラを信用しきってはいない。今は味方なのは間違いないけれど、賢蛇を倒したら敵に戻る。だからダミーのペンダントを渡したの 」


「それじゃあ 」

 嬉しそうなヘーゼル。


「そう。本当の切り札は、あの赤い帽子。(きずな)のあるモンスターとのシンクロ率を100%にする、あの赤い帽子なの 」


「そ、そんな…… 」

 悔しそうなカシュー。


「ふふふ、ワシの見る目に間違いはなかったわい 」


「そんな事より……切り札はやっぱりウヒョヒョヒョヒョィィイなんですか 」


「切り札はウヒョヒョヒョヒョィィイだけではなくて、フリなんとかさんや、グリなんとかさんを後から連れてくるそうよ 」


 グレティ姫は皆を見渡す。


「あと、行方不明のテッドさん達の捜索にブレインマッスルウィザーズ捜索部隊が出動しているわ。

 彼らを見つけたら、回復魔法で回復させて尻から火が出て大回転、回復魔法で回復させて尻から火が出て大回転をエンドレスで撃たせる予定みたい 」


「ひ、ひでぇ 」


「しかし……それなら、希望を見えてきたでござるな。拙者、安心したでござるよ 」

 アーモンの後ろからひょっこりケンマロが顔を出す。


「そう、けっして勝ち目の無い戦いではないわ。だから、みんなの力を合わせて、いざとなったらメガネ指令にも尻から火が出て大回転をエンドレスで撃ってもらいましょう 」


「むぅ、グッドアイデアじゃ 」


「チェックメイト……拙者には完璧な勝ち筋が見えたでござる 」

 ケンマロがパチンと石ころをテーブルの上に置いた。


「テッド殿達は安否不明ゆえに、計算に入れるのはリスキーでござるよ。ゆえに、ポン吉エイトにメガネ君に化けてもらうでござる 」


「そうか!!メガネ君とボン吉エイトを合わせて9人での尻から火が出て大回転の連続攻撃。名付けて『尻から火が出て大回転 永遠の9人(メビウスナイン)

 カシューがドヤ顔る。


「カシュー殿、それは拙者のアイデアでござる。でも、完璧な策でござるな。あの大蛇を遂に倒す日が来るでござるよ 」


 ケンマロの言葉に皆が力強く頷いた。


 ・

 ・

 ・

 ・


 キュードランドスカイ甲板部ではキュードラとポン吉エイトが、ハードな特訓をしていた。


「ワンツー、ワンツー、ワン、ツー、ツー 」

 両手を上げて、ひざを上げ下げするキュードラ。


「『「ワンツー、ワンツー、ワン、ツー、ツー 」』」

 必死にキュードラの動きを真似するポン吉エイト。


「ワン、ワン、ツー、ツー、スリー、ツー、ワン 」

 両腰に手を当て、ひざを高く左右交互に上げながら行進を始めるキュードラ。


「『「ワン、ワン、ツー、ツー、スリー、ツー、ワン 」』」

 キュードラの後について行くポン吉エイト。


「ぜんた〜い、止まれ!! 」


 キュードラが行進を止め、ポン吉エイトも動きを止めた。


 キュードラは振り返り、優しい眼差しでポン吉エイトに微笑んだ。


「皆さん、よくぞ、このハードな特訓を乗り越えました。これで特訓は終了です 」


「『「おぉ〜っ 」』」


「ふふふ、これで、あなた達は立派な吸血鬼のインフルエンサー集団、吸血鬼キュードラ9(ナイン)の一員です 」


「おぉ〜っ!! 」


「ついに、ついに、オイラ達はやり遂げたんや」

「感涙 」

「うひょ〜 」

「キュ、キュードラ様、お願いがあるんだな 」


「ポン六さん、いいですよ。めでたい席です。言って下さい 」


「こ、この、めでたい席にポン六の舞を踊らせて欲しいんだな 」


「うふふ、噂に名高いポン六の舞ですか……私も一度見てみたいと思っていました。

 ポン六さん、お願いします 」


「ま、任せるんだな 」


 ポン六は静かに呼吸を整える。皆の注目が集まる中でポン六は完全に呼吸を止めた。ピクリとも動かないポン六に、皆の緊張感が張り詰めていく。


「ポン…… 」

 静かにポン六が口を開く。


「……ポン、ポ、ポ……ポン 」

 ゆっくりと舞い始めるポン六。


「ポン……ポ、ポ……ポン 」

 悲しげな目で遠くを見つめるポン六。キュードラもポン吉も、ポン六の舞から目が離せない。


「ポン、ポン、ポ、ポ…… ぐはぁ 」

突然、ポン六が口から血を吐いて倒れた。



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