激突編5
降下中の8首の巨大生物の目が、急速に、真っ赤に充血していく。
「ウヒョヒョヒョヒョィィイ!!!」
巨大生物は咆哮を上げ、8つの顔の16の目から一斉に怪光線が放たれた。放たれた怪光線は真っ赤に燃え上がる大蛇に突き刺さる。
崩れゆく真っ赤に燃え上がる大蛇。
8首の巨大生物は轟音を響かせて着地した。その上には真っ赤な帽子を被った狼男がいる。
狼男は他の大蛇達を見据えて、8首の巨大生物に声をかける。
「ウヒャヒャヒャヒャィィイ イイや!! 」
8首の巨大生物の16の目がウルウルしていく。
「ウヒャヒャヒャヒャィィイイイイイ!! 」
雄叫びと共に溢れ出た涙が、一直線に超高速で大蛇達に迫り、横薙ぎに薙ぎ払った。
胴体を薙ぎ払われて、一斉に崩れ落ちる大蛇達。土煙が舞い上がる。
傲然と大蛇達を見下ろす狼男。
唖然としていたケンマロは我に帰り、狼男に声をかけた。
「助かったでござるよ。拙者はケンマロでござる。お主は 」
真っ赤な帽子をかぶった狼男は、ポケットからサングラスを取り出し、おもむろに装着する。
「ワイの名はひろ……違った。ポン吉マスターNo.0 THE PERFECTや 」
「はい? 」
「ワイの名はポン吉マスターNo.0 THE PERFECTや。そして、こいつの名はシチュー、7首カシュー一首のヘーゼルを添えてのシチューや」
不味そうなシチューでござると思うケンマロ。
「許さんぞ!許さんぞ!ポン吉マスターNo.ゼロ ジ・パーフェクト 」
先程の攻撃から逃れたキングコブラの大蛇が、鎌首をもたげて近づいて来る。
「くらえ、ポン吉マスターNo.0ジ.パーフェクト。毒液攻撃!! 」
キングコブラの大蛇から放たれた毒液が、狼男と巨大生物に降り注ぐかに見えた瞬間。
「ワイとシチューを舐めたらあかんで。シチューはウヒョヒョヒョヒョィィイだけやない。シチュー!!でんぐり返りや!!」
ぐるん
でんぐり返って毒液をかわすシチュー。首と首の間に挟まっている狼男。
「何!!」
「シチュー!!でんでん、でんぐり返って、コブラツイストや!! 」
グルングルンとでんぐり返ってキングコブラの大蛇に近づいたシチューは、キングコブラの大蛇にコブラツイストを決める。
「ぐえぇぇ 」
シチューに完全にコブラツイストを決められたキングコブラの大蛇は力尽きて倒れた。
「すごいでござるな、ポン吉マスターとは。
拙者、シチューはウヒョヒョヒョィィイしかできないと思っていたでござる 」
狼男はチッチッチッと指を振る。
「ポン吉マスターは、ポン吉の能力を最大限に使いこなせる、最強のテイマーなんや 」
話を続ける狼男の背後から、長老の大蛇が現れる。
「お、おのれ、ポン吉マスターNo.ゼロ ジ・パーフェクト。賢蛇様から預かった大蛇達の仇じゃ〜 」
「なんやて〜 」
振り返る狼男の頭上に大蛇の巨大な顎が迫る。
「血の大槌 」
「震天の擲穿 」
上空から急降下した二つの影が、長老の大蛇の頭を地面に叩きつけた。轟音が響き渡り土煙が舞い上がる。
「うふふ、まだまだですね。ウルフンさん 」
ブラッディーハンマーを持ったキュードラ。
「油断しすぎね。ウルフンさん 」
キュードラの横にグレティ姫が並んだ。
「そして、久しぶりですね。ケンマロさん 」
「キュードラ殿!! 」
「ふふふ、そんな目で見ないで下さい。今回は私達は味方ですよ 」
「ケンマロ師範。ミズガルノズの黄金の賢蛇を倒す為、キュードラさん達とは一時休戦したの 」
「グレティ姫が言うのであれば……承知したでござるよ 」
「ふふふ、ケンマロさんと再び、共に戦える日が来るとは……嬉しいですね 」
「懐かしいでござるな。キュードラ殿、ミズガルノズの黄金の賢蛇は本当にヤバい奴でござる。おふざけは禁止でござるよ 」
「ふふふ、私はいつも真面目ですよ 」
「ケンマロはん、キュードラはんは存在自体がおふざけなんや。好きにやらせた方がわけのわからない力を発揮するんやで 」
心外なという顔をするキュードラ。納得顔でうなずくグレティ姫とケンマロ。
「まぁ、いいでしょう。募る話は上でしましょう 」
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騎士王国城壁司令部司令室
「メガネ司令、王様連盟より、お二方が到着しました。まもなく参られます 」
「わかった。エイマさん、2人が着き次第、我々もミズガルノズの黄金の賢蛇の元に向かう 」
「ミズガルノズの黄金の賢蛇の最大の武器は、強力すぎる広範囲破壊呪文。ゆえに、あえて戦力を分散させたのはわかりますわ 」
「うん、戦力の逐次投入は本来は避けるべきだか、賢蛇の能力の全貌が見えない以上は仕方がない 」
コン、コン
司令室のドアがノックされた。