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勇者の祭典1

 勇者の祭典の当日の朝、テッドとアライブは会場に向けて歩いていた。


「アライブ、モビーとブービーは?」


「直接、会場に向かうって、言っていたよ 」


「俺、どこに住んでいるのかも知らないぞ 」


「僕も知らないよ。未だに謎の連中だからね 」


「謎と言えば、怪しげな噂の件はどう思う?」俺は思い切って聞いてみた。


「怪しげな噂の件?」怪訝な表情でアライブが聞き返す。


「尻から火が出て大回転だ 」


「君が......尻から火を出した事になっているみたいだよ 」


「ちょっと待って!!なんで俺が尻から火を出して大回転をした事になってんの? 」


「王国スポーツだからね。トンデモ記事は日常茶飯事みたいだね 」


「いや、いや、いや、だって尻から火を出して大回転したのはブービーなんだろう 」


「なんかモビーとブービーの2人で決めたみたいだよ。」アライブは笑顔で話しを続ける。


「魔牛討伐とリザードマン対応の2つの功績を、リーダーに譲りたいって、普段お世話になっているから恩返ししたいって決めたみたいだよ 」


「それ恩返しになってないから、トンデモない物を送りつけてるから 」


「まぁ、いいじゃない、おかげで大勢の命が助かったんだから 」


「へ、へ、返品不可なのかよ……でもミーネさんとかパーフェクトオーダーのメンバーはどうなんだ 」


「王様連盟の関係各所に手を回したんだって。

 ミーネさんにもリーダーの素晴らしさを力説して、詳しくは話せないけど、人類の未来の為だってお願いしたみたい 」


「どんな人類の未来だよ……」


「それに口と尻から火を出す技は、リーダーから教えてもらったって事で話にまとめたみたいだよ 」


「え??? なんでそんな嘘を言うの 」


「僕もブービーに聞いたら、人類の未来の為にって王様連盟の幹部に頼まれたんだって、遠からず明らかになるから我慢して欲しいって…… 」


 俺は頭が痛くなる。


「なんで、俺が尻から火を出すのが、人類の未来に繋がるんだよ…… 」


「お、勇者の祭典会場に着いたみたいだよ 」


 ・

 ・

 ・



「リーダー落ち着いて 」


 アライブが緊張する俺を心配しているが、


「そうですよ、リーダー。緊張しないで 」


 お前に言われても、ふざけてるとしか思えないよ。ブービー。


 ここは、勇者の祭典の会場。


 今年活躍した多くの勇者や、各界の著名人や大物等が集まっている。


 下馬評では、テッドorアライブが多くの賞を受賞すると予想されていた為、壇上でのスピーチが予想される俺は緊張していた。


 発表は次々と進んでいた。


「それでは、本年度の最優秀魔法使いを発表致します 」


 会場が静まり帰る。


「パーフェクトオーダー、極炎の魔術師ミーネさん 」


「うぉおおお」

 パチパチパチパチパチパチ


 歓声と拍手が巻き上がる。


「ミーネさんは、本年の新規上場パーティでありながら、既にS級魔法を使いこなし、城塞都市攻防戦の活躍が評価されての受賞となりました 」


 ミーネが前に出てスピーチを始める。


「皆さん。ありがとうございます。パーフェクトオーダーのミーネです。今回の受賞は、決して私だけの力ではありません 」


 ミーネは会場の仲間の方を見る。


「どんな窮地にあっても、どんな死地にあっても、自らの責務を果たし、命をかけてお互いを守り合う大切な仲間がいたからです 」


 パルンは照れ、


 ダースクはニヒルに微笑み、


 アンジーは涙ぐみ、


 リーダーのライルは泣いていた・・・


「私は、今後も大切な仲間と共に、最善を尽くして生きて行きたいと思います。皆さま、ありがとうございました 」


 うぉおおおおおおおお!!

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!


 先程を超える歓声と拍手が会場を包み込んだ。







「今回は、ココが聖女の3位、アーモンが戦士の2位で儂とリーダーはランク外じゃったな 」


「竜王戦までは絶好調だったのに、調子が狂っちゃったわね 」


「ま、仕方がないさ。来年頑張るさ。ところでアーモンとメガネ君が見当たらないんだが 」


「アーモンは護衛としてメガネさんが連れていったわよ 」


「メガネ君に護衛なんて必要無くないか?」


「そろそろ新人パーティ賞の発表が始まるぞい 」


 オレ達はステージに視線を向けた。


「それでは新人パーティ賞を発表します 」


 ダダダダダダン!ドラムが叩かれる。


「3位、サウスエイト」

「2位、パーフェクトオーダー」


「そして1位は……」


「テッドorアライブです!!」


 ウオォオオオオ!!!


「テッドorアライブは城塞都市攻防戦においての大活躍が評価されました。城塞都市が陥落した場合、多くの人命が失われ、更に魔王軍が人類の生存圏に大きな足場を築くところでした 」


 真剣な表情で観衆は聞き入っている。


「まさに人類の危機を事前に防いだ功績は、本年度随一の貢献であります。尚、テッドorアライブは、複数の受賞を果たしている為、スピーチは後ほどとさせて頂きます 」


 ・

 ・

 ・



「次はいよいよ勇者パーティ賞の発表です。本年、一番活躍したパーティはどれか?それでは発表致します!!」


「3位 ダイナミックパワーズ!!!」


「ウォオオオオ!!」

 パチパチパチパチパチパチ!!


「ダイナミックパワーズは、魔王軍に支配されたミスリル鉱山の奪還に貢献しました。今後はミスリル製の装備の流通量が増えて、各戦線での生存率の向上が期待できます!!」


「ウォオオオオ!!」


「いいぞー!!ダイナミックパワーズ!!」


「続きまして2位 不撓不屈(ふとうふくつ)


「ウォオオオオ!!」

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


「不撓不屈は、多くの勇者パーティを壊滅させて来たキメラ公爵に不屈の精神で挑む事3度目。

 ついに魔王軍の大幹部 キメラ公爵を討ち果たしましたー!!」


「ウォオオオオオオオオ!!」


「良くやったぞー!!不撓不屈!!」


「正に不撓不屈だー!!!」


 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!


「そして1位は皆様の予想通り!新人パーティ賞との2冠達成!!テッドorアライブです!!!」


「ウォオオオオオオオオ!!」


 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!


「それでは、テッドorアライブのリーダー テッドさんお願い致します 」


 会場が静まり帰る・・・


「テッドorアライブのテッドです。今回の受賞は私だけの力ではありません……」


「そりゃそうだー!!」

「パーティでの受賞だぞー!!」


 しまった!!そりゃそうだ。しかし修羅場を潜り抜けて来た俺は焦らない。


 冒険にイレギュラーは付き物で、挽回させるのがリーダーの仕事だ。


「そしてパーティのメンバーだけの力でもありません……」


 ???となって静まり帰る観衆。


「今まで私達を支え、助け、応援して下さった多くの方々の力があって、栄誉ある賞を受賞する事が出来ました。一人一人の力は小さくても、助け合い、積み重ねる事で、誰かを支える大きな力とする事が出来るのです……」


 真剣な目で注目する観衆。


「私達テッドorアライブは、皆様との絆を力として戦い抜いて参ります。また、それぞれの場所で最善を尽くし戦う皆様を、支える絆となりたいと思います!!」


「ウォオオオオオオオオオオオオ!!!」大歓声が沸き起こる!!


「必ず魔王軍を倒して平和な世界を取り戻しましょう!!!」


 俺は右手を突き上げる。


「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


「テッドorアライブ!!」

「テッドorアライブ!!」

「テッドorアライブ!!」

「テッドorアライブ!!」


 大歓声がテッドorアライブを連呼する。

 テッドは今、人生最高の瞬間だと思った。


次回は勇者語大賞の発表です。

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