大魔王フリーチェ編3
「ノーミズ博士、フリーチェはんが…… 」
「心配はいらない、ウルフン君。こんな事もあろうかと結界近衛団のみなさんに来て頂いている 」
ワラワラと室内に入って来る結界近衛団。
「ほほう、これが高名な結界近衛団ですか。私を結界で拘束するつもりですね 」
一際立派な聖なる鎧を身につけた僧兵のリーダーが前に出た。
「大魔王フリーチェ!!お前を拘束する!! 」
40人の僧兵が呪文を唱えだす。それを静かに見守るフリーチェ。まばゆい光がフリーチェ降り注ぎ、フリーチェの周りに光の輪を作り上げる。
「『「結!! 」』」
光の輪が縮まってフリーチェの身体を縛りつけた。
「くっ!! 動けない!! 」
次々と光の輪が降り注ぎ、フリーチェの周りに光の輪を作り上げる。
「『「結!!!」』」
「『「『結!!!」』」』
「『「『「結!!!」』」』
光の輪が幾重にも重なって、フリーチェの身体を次々と縛り付ける。
「凄いで!!ノーミズ博士!!さすが!王様連盟の誇る結界近衛団や!! 」
「結界近衛団は王様連盟を守る最後の砦。大魔王だろうが好きにはさせない 」
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「ふふふ…… 愚かなりノーミズ博士。世界最高の頭脳と聞いていましだが……その程度ですか 」
「なんだと? 」
「ふん!! 」
フリーチェが気合いを入れると縛り付けている光の輪がボロボロと崩れ落ちて行く。
「なんやて!! 」
「アイム、クール 」
「なんやて?? 」
「私は氷雪の大魔王フリーチェ。私に触れた物は何であれ、凍りつくのですよ 」
「そんな……中魔王になって魔法が使えないんやなかったんか? 」
「ふふふ……中魔王モードの時は全エネルギーを筋肉の維持に使っていましたからね。大魔王になった私は、新たに得た膨大なエネルギーをバランス良く使っているのです 」
「ウルフン君!!みんな!!撤退だ!! 」
いつの間にかに部屋の外に出ていたノーミズ博士達がドアの外から呼びかける。
ワラワラとドアに殺到する結界近衛団。ウルフンは一団の一番後ろでフリーチェと向き合う。
「ふふふ……心配しないで大丈夫ですよ、ウルフンさん。大魔王たる私が惨めに逃げる小物を後ろから攻撃などしません 」
ウルフンは訝しげな目をフリーチェに向ける。
「ふふふ、ふふふふふ……伝説の幕開けが小物達を後ろから倒す事であれば、情け無いではないですか 」
「ウルフン君!!出るんだ!!ここは王様連盟本部別館にある地下30階の地下監獄。強大な結界が張られているんだ。大魔王だろうがドアが閉まれば出られない!! 」
「わかったで 」
ウルフンが最後に部屋を出てドアが閉まった。
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皆が出た後でフリーチェは部屋の中を見渡した。そしてドアの前に足を進めた。
「さて、伝説の幕開けです 」
「無駄だ!フリーチェ君!!ドアが閉まった今はいかなる魔法も効果を発揮しない。君は二度と、その部屋からは出られない!! 」
ドアの前に立ったフリーチェは頭を後ろに大きく仰け反らせて、勢いよく頭突きした。
大きな衝突音と共に壁に大きな穴が開き、穴の向こうには目を見開いたノーミズ博士達。
「ば、ば、馬鹿な…… 」
「くくく……大魔王は止められない 」
フリーチェは壁に開いた穴から身体を部屋の外に出した。そこは大広間になっていた。パニック状態の結界近衛団。
「さてさて、騒がしい人々には静かにして頂きましょう…… ふん!! 」
フリーチェが気合いを入れると大広間の温度が急激に下がりだし、結界近衛団の団員達が凍りついてゆく。そしてウルフンやノーミズ博士達も凍りついてしまった。
「口程でもないですね。勇者を数多排出した王様連盟とは思えない脆弱ぶりです。私1人で陥落させてみせましょう 」
フリーチェが地上に向かう階段に目を向けた時だった。
「待ってくれフリーチェさん 」
立派な斧を持った男達が階段を降りてくる。一人、鞭を持った男もいる。
「誰ですか?貴方達は 」
「忘れたのか?俺たちを。あんたの大好きなマイナー村の木こりだよ 」