大魔王フリーチェ編2
「大魔王フリーチェ……ダメや、それだけはダメなんや 」
「大魔王エタールを倒すには、大魔王で無ければ無理でしょう。私は大魔王になってエタールを倒すのです 」
「中魔王でもきっと大丈夫やで。デアールなんかポン吉に負けてるんやで 」
「ム、ムキーッ。デアール様を馬鹿にすると許しませんよ。ポン吉はきっと悪魔のような恐ろしい奴なのです 」
「ポ、ポン吉は…… 」
たいした奴では無いとは言えないウルフン。
「仕方ないんやで。この大魔王昇格書類にサインするんや。それでフリーチェはんは王様連盟公認の大魔王フリーチェや 」
ウルフンは一枚の紙とペンを差し出した。受け取るフリーチェ。
「ワイは中魔王の方が良いと思うで。慌てて偉くなってもろくな事があらへん 」
聞き流しサインするフリーチェ。サインし終わった書類をウルフンに渡す。
「契約完了や。フリーチェはん、あんさんは今から大魔王フリーチェや 」
フリーチェは自らの身体の中に膨大な魔力が宿ったのを感じ取った。この力なら世界を支配できると。
「くくく…… 」
「なんや? 」
「くっくっく…… 」
ボンッとフリーチェの右腕が丸太のように大きくなった。
「愚かなりウルフン、貴方は憎っくき若造達の仲間ですね 」
「な、なんやて 」
「若き天才フリーチェは騙されません。
貴方が読んでいた王国スポーツの一面に、貴方達の写真が載っていますよ。
だから私を大魔王にしたくなかったのですね 」
右腕の次は左腕、次は胴体とムキムキになっていくフリーチェ。
「ち、違うんや。テッドorアライブとfeatしているのは事実やけど、ワイはフリーチェはんの事を思って…… 」
「問答無用……魔力解放!! 中魔王モード!! 」
両足がムキムキになっていくフリーチェ。見る見るうちにムキムキの上半身を支える足腰が完成していく。自分の身体に見惚れるフリーチェ。
「素晴らしい肉体です。これならば格闘戦で私に勝てる者はいないでしょう。しかし……ウルフンさん、貴方には冥土の土産に見せてあげましょう。本当の恐怖という奴を…… 」
「や、止めるんや、フリーチェはん 」
「問答無用、世界よひれ伏せ!!支配者降臨、大魔王フリーチェ顕現!! 」
ガラガラガッシャーン!!
ガラガラガッシャーン!!
雷鳴が響き渡り、地面が大きく震えた。
フリーチェの頭が見る見ると大きくなっていく。それは肩幅を超えて更に大きくなってゆく。
「と、止めるんや、フリーチェはん 」
「愚かなりウルフン。巨大な頭に巨大な脳みそが詰まっているのは必然。天才を超えた天才、超天才に私はなるのです 」
グングンと頭が大きくなっていき胴体と同じくらいの大きさになって止まった。
「くくく……3mの最強の肉体に、3mの世界一の頭脳といったところでしょうか。これこそが最強であり、超天才である大魔王フリーチェにふさわしい…… 」
「残念や……残念やでフリーチェはん…… 」
ウルフンは悲しい目でフリーチェを見つめる。そして警備員の呼び出しボタンを押した。
「ノット クール!!警備員ごとき何人きても大魔王に敵うわけがないでしょう。貴方は憎っくき若造達の仲間。ここで死んでもらいます 」
「『「『「ウルフン様!!」』」』」
ドアがバンと空いて警備員達がワラワラと入ってくる。
「くくく……魔力のカケラも感じられませんね。さぁ、誰から死にたいのですか。選ばせてあげましょう 」
「ワイ1人で充分や。警備員はん、その弓矢を貸して欲しいんや 」
警備員から弓矢を受け取るウルフン。
「これがワイの答えや 」
ウルフンはフリーチェの顔に向けて弓矢を放った。
「くくく、大魔王にそんな弓矢では傷1つつけられないでしょう 」
傲然と身動きしないフリーチェ。
警備員の1人が前に出た。
「フリーチェ様の美しいお顔に万が一でもお傷がついたら……」
「ふん!! 」
一歩も動かずに、鼻息で弓矢を弾き飛ばすフリーチェ。
「ふふふ……ふふふふふ……
私が慌てて避けてバランスを崩して頭から倒れこませるのが狙いだったのでしょう 」
「なんやて!! 」
「くくく……それで『くっ!!頭が重くて立ち上がれない 』とか言わせたかったのでしょう 」
図星で青ざめるウルフン。
「愚かなりウルフン。若き天才フリーチェには同じ手は2度通用しません。大魔王たる私は人智を超えた超生物。下等生物と違い足だけには頼りません 」
「どういう事や? 」
「フン!! 」
鼻息で宙に浮くフリーチェ。室内が生暖かくなる。
「大魔王にとっては鼻息すら自在な手足となるのです。下等生物とは違うのですよ 」
「ウルフン君!! 」
「ノーミズ博士!! 」
ノーミズ博士と助手達がやって来た。
すみません。2話で終わりませんでしたので、まだ続きます。