大魔王フリーチェ編1
フリーチェの人気が高かったので追加しました。2話予定で完了後は日常編のどこかに組み込む予定です。
「ここは…… 」
私は薄暗い部屋の中で目が覚めた。頭が痛い……私はなぜこんなところに……
「起きはったか、フリーチェはん 」
青い毛色のワーウルフが、読んでいた新聞を置いて話しかけてくる。
「はい? 」
「なんや、もう元気そうやないか。顔色も良くなっとるで 」
「え、え〜、どちら様ですか? 」
「ワイか?ワイの名はウルフン。王様連盟の人材開発室の臨時コーチや 」
「臨時コーチですか? 」
「そうや。王様連盟のお偉方に、ウルフンはん、おまんやないと出来ないミッションでっせ、って頼まれたんや 」
「何を頼まれたのですか? 」
「あんたの事やで、フリーチェはん。フリーチェはんの最後がかわいそ過ぎるって、木こり達がデモ行進を始めたんや 」
「え??? 」
「『ムキムキマン、滑って、転んで、水の底 』」とか『木こりの給料を上げろ〜』とか『木こりの休みを増やせ〜』とか大騒ぎやで 」
「えええ??? 」
「本当の目的は木こりの地位向上やとワイは睨んでおるけど……確かに、ムキムキマンになって、滑って転んで、湖の底は惨めやな 」
「…… 」
「ちなみに今年の勇者語大賞に、アイム クールやらノ、ノットクールやら、足は?中魔王になってからみたいです、やらが大量にエントリーされた見たいやで。ワイなんか1つもエントリーされてないんや、ほんまにうらやましいんやで 」
「ちょ、ちょっと待って下さい。私はどれだけ湖の底にいたんですか? 」
「だいたい2〜3年くらいやないか。ちなみに勇者語大賞は、世に明らかになった時にエントリーされるので、期限の心配はないんやで 」
「そんな事は心配しておりません。あの憎っくきノットクールな若造達は…… 」
「憎っくき若造……あぁ、テッドはんとアライブはんか……残念やったな…… 」
ウルフンは目を落とす。
「残念? 」
「去年の勇者語大賞を受賞しておるで。しかも今年も最有力候補や。ライバルは何歩も先を進んでいるんやで 」
満面の笑顔になるウルフン。
「お、おのれ、若造 」
「まぁ、今年はフリーチェはんの方が有利とワイは見とる。ワイは『ノ、ノット クール 』派や。今回はメガネ君に負けへん、ワイが根回ししたる。フリーチェはんは心配する必要はあらへんよ 」
「別に勇者語大賞などに興味はありません。あの若造達が活躍しているのが憎たらしいのです 」
「フリーチェはん、そんなんやからあんさんはダメなんや。せっかく凄い能力を持っているのに、嫉妬はみっともないで。
テッドorアライブ以上に活躍をすればいいんや 」
「し、しかし…… 」
「ワイはフリーチェはんの為に、凄く良い話を持ってきたんや 」
「凄く良い話…… 」
「フリーチェはん。あんさんの親分の大魔王デアールは、既に大魔王エタールの部下に負けて亡くなったそうなんや 」
「デ、デアール様が…… 」
「なんでもポン吉に負けたらしいで 」
「お、おのれポン吉!! 」
「負けたショックで体調を崩して亡くなったそうや…… かわいそうやな 」
「ウルフンさん、私はデアール様の仇を取らねばなりません。ポン吉の首をこの手で 」
「フリーチェはん、ポン吉はただのサラリーマンたぬきや。本当に悪いのはエタールや。違うか? 」
「そ、それは 」
「王様連盟はエタールと敵対しちょる。もし、フリーチェはんが味方してくれるんなら、王様連盟連盟公認の中魔王に昇格や 」
フリーチェは黙って考える。そして強い目でウルフンを見つめて口を開いた。
「ウルフンさん、ならば私を大魔王にして下さい 」