ようこそ!楽しいキュードランド1
グレティの一撃はスラウィン大将軍のコアを打ち砕き、その身体を爆散させた。
グレティ姫は空中でクルクルと回転し、ゆっくりと着地する。
「『「『「姫さま〜 」』」』」
グレティ姫の元に駆け寄るブレインマッスルウィザーズの面々。
「みんな、時間が無いわ。すぐに騎士王国にもどるわよ 」
「『「『「はっ!!!! 」』」』」
ダダダダダとグレートグレティに駆け戻るブレインマッスルウィザーズ。
ゆっくりと彼らの後ろから船に戻ろうとしたグレティの元に白式が降りてくる。ひょっこり顔を出すウルフン。
「ワイの白式に乗るんやで 」
「…… 」
「冗談や、冗談やないか 」
「…… 」
「ところで、今から戻って間に合うんかいな 」
「……大丈夫よ。騎士王国には彼らがいるから 」
「彼ら? 」
「王国を守る最強の盾、頭は軍師で身体は戦士部隊」
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キュードランド空艦橋
憂い顔のキュードラは報告書から顔を上げた。
「メレッドさん…… 入場料無料キャンペーン中ですが、お客様は楽しんで下さっているのでしょうか 」
「イエス、マイ、キュードラ。この楽しいキュードランドを楽しめない人などいるでしょうか……必ずや楽しんで頂けると信じております 」
キュードラはメレッドの言葉に笑顔で頷き、そして顔を曇らせた。
「しかし……では、何故?お客様がゼロなのでしょうか?……ビートゥールさん。天空に浮かぶキュードランドに、お客様をご案内する為の階段は出来ておりますか 」
ビートゥール博士が前に出て頭を下げる。
「はは〜っ、数多の虫で作り上げた虫階段。数多のタコで作り上げたタコ階段。数多のイカで作り上げたイカ階段。巨大な階段を3つ用意しております 」
ざわざわとした雰囲気が艦橋に満ちる。
「さすがビートゥール博士。抜かり無いです 」
「巨大な階段が3つもあれば、ドンドンお客様が来ますね 」
「ふふふ、入場料は無料ですが、退場料でガッポリ儲けましょう 」
ワイワイと盛り上がる若手達に、浮かぬ顔のキュードラ。
「取らぬポン吉の皮算用…… 」
特命担当役員のフォージュリーが、ワイワイと騒いでいたイヤービの頭の上で口を開いた。
「フォージュリーさん…… 」
フォージュリーはイヤービの頭から飛び降りて、キュードラの前で跪いた。
「イエス、マイ、キュードラ 」
「フォージュリーさん、何かお客様が来ない事について気がついた事があるようですね 」
「はっ、イカ階段とタコ階段はヌメヌメして滑りやすいかと、虫階段は…… 」
「……キモいですか…… 」
「はっ 」
イカ階段もタコ階段もキモいだろ、と内心で思うイヤービ。
「何か良い方法は無いでしょうか? 」
フォージュリーはニヤリと笑った。
「既に手は打っております 」
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騎士王国市街地にて
「騎士王国の皆さん。私は楽しい夢の国 キュードランド おもてなし担当部長のエイングと申します 」
上空からの多数のタコとイカを引き連れて、羽の生えた八つ目の魔族が降りてくる。
「ただ今、入場料無料キャンペーン中なのですが、誰もお客様が来ませんので、特別大サービスで皆様をお迎えに参りました 」
エイングは逃げ惑う人々を見渡した。
「イッツ、おもてなしタ〜イム!! 」
エイングが指を鳴らすと、無数のタコとイカが人々をお迎えに参ろうと飛びかかって来た。逃げ惑う人々の中で転んでしまったお爺さんがイカ達に捕まってしまう。
「うわぁあっ…… 」
グングンと急上昇するイカ達は、お爺さんを巨大な真っ白な階段に投げ出した。勢いよく真っ白な階段にぶつかったお爺さんは、座り込んだまま滑るように階段を登ってゆく。
「なんじゃ?なんじゃ? 」
お爺さんが足元を見ると、足元のイカ達が滑る様に階段を上がって行く。そして階段を登り切り大きな扉の前の広間に辿りつくと、イカ達はお爺さんを下ろして階段の方に戻って行った。
お爺さんが去りゆくイカの方を見ると、次々と人々がイカ階段とタコ階段から送り込まれて来る。
その時、ギィ〜ッと扉が開き燕尾服を来た大きな牙の悪魔が、2頭のゴーレムを引き連れてやって来た。
「レディース&ジェントルマ〜ン。ようこそ!!楽しいキュードランドへ 」