サウザー攻防戦2
「なんやて!キュードランドが空飛んで、騎士王国上空まで来たって言うんか 」
「はい、ウエスタン大陸から浮上し、海上を飛行して
攻めて来たようです 」
「何て事なんや、ミズガルノズの大蛇を相手にせなあかん上に、キュードランドまで攻めてくるなんて、そんな馬鹿な事があるんかいな 」
「ちょっと待って、キュードランドって何かしら? ミズガルノズの大蛇と同列に並べる様なヤバイものなの? 」
「黒衣はん、説明して上げて欲しいんや 」
黒衣が資料を捲り必要なページを探し出した。
「キュードランドとは、元大魔王軍四天王の一人で、現在、王様連盟の捕虜 兼 キュードラ愛の詩の作者 兼 エッセイスト等でマルチな活躍をする吸血鬼キュードラが運営するテーマパークです 」
「え……と、テーマパーク? 」
「はい、体育系のアトラクションが満載なのですが、アコギな料金設定との噂です。しかし、実際にキュードランドに行った事がある人はほとんどいない幻のテーマパーク……」
黒衣はゆっくりと皆を見渡した。
「夢の国、楽しいキュードランドを自称しております 」
「自称? 」
「姫様、これを 」
黒衣は一枚の紙をグレティ姫に差し出す。受け取ったグレティ姫を囲んで皆で紙を覗き込む。
黒衣に渡された紙を見ると、『おいでよ、夢の国、楽しいキュードランド。24時間営業』の文字。紙の中央は集合写真になっていた。
「何かしら、この怪しげな人達は……」
写真では笑顔の魔族やゴーレム達が楽しげに肩を組んでいる。中心にいる吸血鬼がキュードラだろうか?端には虫まみれの老人が、そこら中にタコとかイカがいる。
「極秘に入手した従業員募集のポスターです 」
「…… 」
「悩んでも仕方がないわ。空中戦でキュードランドと戦えるのは、このグレートグレティだけ。とっととスラウィン大将軍を倒して救援に向かうわよ 」
「はっ!! 」
・
・
・
・
騎士王国中央区部では、上空からの大音声が一晩中響き渡っていた。
「おいでよ!楽しいキュードランド!!
24時間営業、ただ今、入場料無料!!
キュードラと楽しい仲間達がおもてなしします。
おいでよ!楽しいキュードランド!!
24時間営業、ただ今、入場料無料!!
キュードラと楽しい仲間達がおもてなしします。
おいでよ!楽しいキュードランド!!
24時間営業、ただ今、入場料無料!!
キュードラと楽しい仲間達がおもてなしします。
おいでよ!楽しいキュードランド!!
24時間営業、ただ今、入場料無料!!
キュードラと楽しい仲間達がおもてなしします 」
「くそぅ、一晩中大音量で騒ぎやがって 」
「もう3日3晩よ 」
「何なのよ、軍は何をしているのよ 」
「軍は国境を守っているんだ。首都警備隊はどうしているんだ? 」
騒ぎ立てる住民達。
「すまぬ。首都警備隊のほとんどは北方からの避難民誘導に携わっておる…… 」
「き、騎士王様!! 」
剣を杖代わりにした騎士王が現れた。
「儂が奴らを止めるしかないのぅ 」
「お待ち下さい!騎士王様!! 」
青い鎧の戦士達が現れた。
「お主らは? 」
「私達は頭は軍師で身体は戦士部隊。ブービー様発案の最強にクールな戦士達です 」
「おぉ、お主らが噂の秘密兵器か 」
「はっ!!頭は戦士で身体は軍師部隊が、騎士王国の敵を倒す剣であるならば、我々は騎士王国を守る盾であります 」
・
・
・
・
南部都市サウザーにて
「みんな!!時間がないわ!!パフォーマンスの時間はカットして終幕に向かうわよ 」
「『「『「はっ!! 」』」』」
「えっ? 」
グレティ姫を見るウルフン。
グレティは高く掲げた剣をグルグルと回し出す。
「グレティ流星剣!! 」
掛け声と共に剣を振り下ろすと、燃え盛る炎を纏った戦士達が一斉に急降下を始めた。
「『「『「ブレインマッスル〜 」』」』」
星屑の戦士達が次々とスラウィン大将軍に突き刺さる。
「『「『「ウィザーズ!!!! 」』」』」
しかしブヨヨンと弾き飛ばされる。
「だ、駄目なんか…… 」
「まだよ!! 」
「なんやて!! 」
スラウィン大将軍に駆け寄るグレティ姫。大きくジャンプするが、スラウィンの脳みそには届かない。
「姫様!! 」
ブーマー隊長代理がスラウィン大将軍を駆け登り、グレティ姫の予想着地地点に飛び込んで、グレティを大きく上にトスをする。
グングンと急上昇するグレティの頭上にに大きな蚊が現れる。
「ワイのスキュポス!! 」
「姫様!! 」
スキュポスに乗った黒衣が顔を出す。
「黒衣様!!お願い 」
スキュポスは上昇してくるグレティ姫の手を掴んで、グルッと急降下を始めた。
「紅炎剣!!」
グレティは引っ張られながら魔法剣を発動させる。
「姫様!! 」
「任せて!! 」
グングンと急降下するスキュポスからスラウィン大将軍に向けて、グレティが猛スピードで放たれた。
「秘剣!!震天の擲穿!! 」
天地を揺るがす轟音が響き渡り、グレティがスラウィン大将軍に突き刺さった。