サウザー攻防戦1
天高く赤く渦巻く雲の中から、燃え盛る炎を纏った何かが高速で飛び出した。
それは、空中に展開する氷壁を、瞬時に溶かして、次々と突破していく。それに向けて次々と巨大な樹氷が放たれるも、近づく事すら出来ずに溶けてゆく。
そして燃え盛る何かが、賢蛇の首に突き刺さったかに見えた。しかし賢蛇の強大な魔法防御が押し返す。
2つの強大なエネルギーがぶつかり合い均衡したかに見えた瞬間。燃え盛る炎を纏った、もう一つの何かが急降下して賢蛇の頭に突き刺さった。
瞬間、膨大な熱量が膨れ上がり爆発した。世界が真っ赤に染まり、何も見えなくなった。
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同時刻 南部都市サウザーでは、ウルフンとブレインマッスルウィザーズが、スラウィン大将軍と戦っていた。
「ウルフン ダイナミック キック!! 」
ウルフンの飛び蹴りが、巨大なスライムであるスラウィン大将軍に炸裂する。しかしブヨヨンと弾き飛ばされてしまう。
「ウルフン殿に続くんだ!!ブレインマッスルウィザーズ、行くぞ!! 」
「『「『「おう!!!!」』」』」
ダダダダダとスラウィン大将軍に駆け寄るブレインマッスルウィザーズの精鋭達。総勢100人近い強者達が両手を後ろに下げながら走り出し、頭を前にしてジャンプする。
グングンと加速しながら雄叫びを上げる強者達。
「『「『「『ブレインマッスル〜』」』」』」
流れ星と化した100人近い強者達がスラウィン大将軍に突き刺さる。
「『「『「ウィザーズ!!!! 」』」』
しかしブヨヨンと弾き飛ばされる。
「くっ、なんて奴なんや。全ての攻撃が弾き飛ばされてしまうんやで。なんか、透明の中に脳みそみたいのが見えるんや。きっとアレが弱点なんやで 」
「ウルフン様!!物理攻撃は効きそうにありません。
魔法で、魔法で戦いましょう 」
ウルフンの横に立つグレティ姫。
「そうや!!ワイらブレインマッスルウィザーズの本職は魔法使いや!!巨大スライムを燃やし尽くすんや 」
「『「『「おう!!!! 」』」』
ムキムキの男達が次々と前に出て呪文の詠唱を始める。
「なんや、なんや。ワラワラとみんなが前に来よるで。ほぼ全員やないんか 」
「ふふふ、ブレインマッスルウィザーズは精神を燃やして戦う情熱的な魔法使い集団。炎熱系の魔法と相性が良いのですわ 」
ニヤリと笑うグレティを見返すウルフン。
「姫さんは魔法は唱えないんか? 」
「ふふふ、私は指揮官なので出番はまだですわ。それより、今はブレインマッスルウィザーズ 最高奥義 星屑の戦士達の出番ですわ 」
ヒュンヒュンと炎を纏った戦士達が次々と上空に飛び出してゆく。
上空で停止する戦士達。ウルフンは重大な事に気づいた。
「な、な、な、なんやて!!あ、あれは北斗七星やないか!!」
「ふふふ、あちらにはオリオン座がありますわ。それぞれの宿星を背負った戦士達が、流星群のごとく敵を貫く。それこそがブレインマッスルウィザーズ 最高奥義 星屑の戦士達ですわ 」
グレティは上空を見上げて、剣を高く掲げた。
「姫さん、どうしたんや? 」
「ウルフン様、私の出番ですわ 」
グレティは、天高く北斗七星の配置で宙に浮く7人の戦士達に剣を向けた。
「はっ!! 」
「とうっ!! 」
「やぁ!! 」
「ふぅ〜!! 」
「むん!!」
「むむむん!!」
「むむむむむん!! 」
掛け声と共に決めポーズを決める戦士達。
「なんや、なんや。何なんや。あの怪しげな筋肉ポーズは 」
「ふふふ。この程度で驚かれては困りますわ。これからもっと凄い決めポーズが続きますわ 」
ゆっくりと向きを変えて、天高く位置する5人の戦士達に剣を向けるグレティ姫。
「ひょ〜!!」
「ほぇ〜!! 」
「ふぃ〜!! 」
「いょ〜っ!!」
「あちょ〜!! 」
流し目で決めポーズを決める戦士達。
「ちょい待ち!!これ、全員分続くんかい!! 」
「うふふ、彼らは南十字星の宿星の戦士達ですわ 」
「いや、いや、ワイの話も聞かんかい!!ワイらには時間がないんやで!! 」
「ウルフン様、彼らは今、心の精神を燃やして力を高めているのです。決して遊んでいるのではありません 」
ウルフンを見据えるグレティ姫。
「しかし…… 」
「姫様!! 」
全身黒ずくめの黒衣が姫達の元に駆け寄って来る。
「なんや黒衣はんやないか。そないに慌ててどうしたんや? 」
「き、緊急通信が入りました。ほ、北方の街道にミズガルノズの大蛇が現れました 」
「予想通りね。なんとかテッド様達に頑張ってもらうしかないわね 」
「そうやな。ワイらが今すべき事は、巨大スライムを倒してサウザーを解放する事や。こうなる事はわかってはいた事や。そないに慌てて、らしくないで黒衣はん 」
「そ、そ、そ、それが、き、緊急通信が、もう1件。騎士王国上空に、キュ、キュ、キュードランドが現れました!!」
「な、な、な、なんやて〜!! 」




