大蛇再臨9
「異界の怪物よ、この世界はお前の世界では無い。元の世界に帰るんだ…… 」
テッドが右手を掲げると、超巨大なXがグルングルンと回転を始めた。
テッドが右手を振り下ろそうとした時だった。
「ちょっと、どいて〜!! 」
黒い球体が猛スピードで飛んで来る。後ろから大量のXの炎も付いてくる。ミーネさんと黒龍号か。テッドは少し移動して場所を空けた。
ミーネはケンマロの無回転ストレートの異様なブレを、精一杯制御しながら飛んで来る。そして最後に大きく揺れながら落ちて止まった。
「神話の巨人!!ノーコンじゃない!! 」
「神話の巨人?」
「気にしないで。それより私もXの炎を連れてきたわ。ケンマロ様は、し、……大回転Xの2重攻撃ならミズガルノズの大蛇も倒せるかも知れないって 」
「テッド様、確かに尻から火が出て大回転Xの2重攻撃ならば、ミズガルノズの大蛇の強大な魔力の防御を打ち破る事が出来るかも知れません 」
「わかった。尻から火が出て大回転XXで奴を倒す 」
ミーネは黙って頷いた。
「ブリーフワン、作戦計画を頼む 」
「畏まりました。少々お待ちください 」
ブリーフワンは魔法センサーと魔法AIをフル稼働させて複数の作戦計画を検証する。3号と飛竜騎兵隊が時間を稼いでいる間に、少しでも確率の高い作戦を立てなければならない。
大蛇は焼夷弾で燃える頭を舌で舐めて炎を消した。
「ピコーン!!整いました。ミズガルノズの大蛇の魔力の総量は計り知れません。恐らくはXXの力を遥かに上回ると推定されます 」
「そんな……」
「ちょ、ちょっと待って…… 」
「だから……1点集中。我々は全ての力をミズガルノズの大蛇の頭部、更にピット器官周辺にぶつけます。これならば我々の力は局地的に奴の力を上回るかも知れません 」
「おぉーっ 」
「良いわね 」
「まずはミーネ様のXの炎を奴にぶつけます。
次はテッド様、最後にミーネ様の紅炎をぶつければ、XXの炎が力を増して奴の防御力を上回る事が可能と推定します。それでもダメなら…… 」
「『それでもダメなら…… 』」
「お手上げです 」
「ブリーフワン、俺たちにお手上げなんて言葉はないんだ。最後の最後まで戦うんだ 」
「そうね、私達はいつ、いかなる時も最善を尽くす。たとえ私達が倒れても、次に戦う誰かの為に 」
「しかし…… 」
「仕方ない、最悪の場合はあれをするぞ。ブリーフワン 」
「駄目です、テッド様。あの技は……迅雷剣 雅 改は危険過ぎます。しかも、まだ未完成ではないですか 」
「最悪の場合だけだ。俺達が大蛇を止めなければ、世界はエタールの物になるだろう。結局は俺達も死んでしまう」
「しかし、ブリーフワンは…… 」
「テ、テッドさん、迅雷剣 雅って斜め上に両腕を上げて、クイッと手先を曲げて、敵をおちょくる技でしょう 」
テッドの顔色が赤く変わった。
「ミーネさん。悪い噂を信じちゃ駄目だ。あんなに雅な技は他には無い。俺は誰もおちょくっちゃいない。俺を知っている奴らは誰もそんな事は言っていない 」
「でも、ウルフンさんも、アライブさんも、ブービーさんも、モビーさんも、敵を100%挑発する恐ろしい技だって言っていたわ……」
「ブ、ブリーフワンもそう思います 」
テッドの顔色が青ざめた。
「ブ、ブリーフワン……そうか……もしかしたら、運悪く、そう見える事があるかも知れない……しかし、雅改は違う…… 」
「ブリーフワンもそう思います 」
「雅が雛鳥とすれば、雅改は鳳。天空を羽ばたく鳳だ 」
「その通りです。しかし……危険過ぎます、この技は……ただし私の想定では紅炎で倒せると考えます 」
「わかった。最悪の場合だけだ。最悪の場合は大幅にパワーアップした初公開の迅雷剣 雅 改を披露しよう。それで良いな、みんな 」
「ええ 」
「畏まりました、テッド様 」
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テッド達と大蛇の様子を離れた位置から見ていたリッキー達は超巨大なXの炎の回転のスピードが徐々に上がっていくのに気がついた。