大蛇再臨7
透明な結界の壁を破るべく、ガンガンと舌をぶつける大蛇。モヒカンを外して睨みつけるモヒー・カーン。
「た、隊長。お、お札の効果は3分間です。あと少しで消えます!! 」
後退して距離を取ったリッキーから声が上がる。
パキン!!
大きな音を立てて結界が割れて、大蛇の巨大な舌が目の前に迫って来た。
「モヒー・カッター!! 」
モヒー・カーンは巨大な舌に向けて、至近距離からモヒーカッターをぶん投げる。
ガンッ!!
「隊長ダメだ!!爆発に巻き込ま…… 」
「モヒー・ダイナマイト!! 」
ピカッ!!
世界が白く染まった。
ドガガガガガガガガガガガガガーン!!
大爆発が起こり爆炎がモヒー・カーンを巻き込んだ。
「た、隊長…… 」
座り込んで呻き声を上げるリッキー。
次々と力無く座り込む隊員達。
その時、爆炎の上から黒い何かが飛び出した。
「リ、リッキー副隊長!!あ、あれは飛竜騎兵隊の3号副長です!! 」
爆炎を超えて空高くを指差す隊員。彼の指差す先に皆の視線が集まった。
飛竜の足に逆さ吊りされた3号副長が、焦げ気味のモヒー・カーンの片手をしっかりと掴んでいる。
「ううう…… 」
「気がついたか……無理はするなと言ったんだが 」
「けっ……馬鹿やろ…… 」
「副長!!東方よりガ、ガーゴイルの大群が!! 」
3号の後ろを飛ぶ飛竜騎兵隊員から報告が飛んだ。
「時間が無いか……1号、少々荒いが許せよ。サイクロン。乗せろ!! 」
3号の命令を聞くと、飛竜は3号達を前に投げ出した。
「うわぁあああ…… 」
情け無いモヒー・カーンの悲鳴が響き渡る。
上方に投げ出された2人はグルグルと回転しながら落下して行く。そこへ2人の下から飛竜が現れると、3号は手を伸ばして手綱に掴まった。そして、すかさず手綱を引き寄せて飛竜の上に着地した。
「副長!!大蛇が!! 」
爆炎の中から現れるミズガルノズの大蛇。その身に傷の一つも無いように見える。
「化け物め…… 」
どうする……考える時間が無い。大蛇もガーゴイルも放置は出来ない。
ミズガルノズの大蛇は、爆炎の中からスルスルと前進を開始した。
「第1飛竜騎兵隊は俺についてミズガルノズの大蛇の牽制に向かう。第2、第3飛竜騎兵隊はガーゴイルに向かえ!! 」
「『「『「はっ!!! 」』」』」
第2、第3飛竜騎兵隊の30騎ほどが離脱してガーゴイルに向かった。
「第1飛竜騎兵隊!!10騎は大蛇の牽制に回れ。俺と5騎はピット器官及び目を攻撃する。このままでは第1隊が全滅する 」
大蛇に向けて急降下する3号達の眼下に、全速力で後退するリッキー達が映る。
「雷槍準備!!目標、ピット器官!! 」
3号が右手を上げると、後ろの4騎が3号を追い越して行った。
「撃て!! 」
大蛇めがけて急降下する4騎から、雷魔法を纏った槍が至近距離でピット器官に向けて放たれた。
ズガガガガーン!!
爆音が響き渡り、大蛇の目に衝突した槍が衝撃で砕け散る。
その直後だった。
急降下する飛竜から飛び降りた3号が、雷を纏ったモーニングスターをピット器官に振り下ろした。
「秘奥義!!降龍の雷鎚!! 」
ドガガガガガガガガガガガガーン
雷が突き刺さり、衝撃音が響き渡る。
一撃を食らわした3号は大蛇の頭から飛び降りると、愛騎のサイクロンが現れて背に乗せた。
「効果無しか…… 」
ミズガルノズの大蛇は3号達の攻撃を意に介さずに、リッキー達に近づいて行く。大蛇がリッキー達を一飲みにしようと構えた時だった。
「牽制隊!!焼夷弾投下!! 」
3号が合図を出すと、牽制に回った10騎が大蛇の頭に向けて黒い物体を投下した。次々と投げ込まれる黒い物体。それは大蛇に当たると燃え出した。
「何だ?あれは 」
訝しげなモヒー・カーン。
「焼夷弾。着弾すると延焼して消えにくい。炎は目隠しとなり、ピット器官は赤外線を感知しにくくなる。ダメージが与えられないなら、奴の目とセンサーを奪えばいい 」
頭の各所が燃え上がり大蛇は進行を止めた。
「けっ、やるじゃねーか 」
「お前の部下もな。逃げる方向を微妙に東に誘導して、避難民達から遠ざけている 」
「けっ、なめんじゃねーよ 」
「そうだな。彼らは役割を果たした。そして、遂に大蛇を倒す役割の男が来たようだぜ 」
3号は遠い空を見上げた。
モヒー・カーンが3号が見上げる方を見ると、そこには極みXの炎を尻から出し続けるテッドがいた。




