大蛇再臨4
大蛇が大口でリッキー達を飲み込もうとした時だった。
リッキーは頭のモヒカンの入墨シールを剥がして、大蛇の口に投げ込んだ。
「1枚目、結界のお札!! 」
ガンッ!!
大蛇の顔が見えない壁で遮られた……何だと表情を変えた大蛇は、動きを止めて、舌を出して見えない壁にぶつけた。
バキッ……パリン!!
脆くも崩れさる結界。大蛇の舌は、そのままリッキー達を絡め取ろうとする。
「2枚目、紅炎のお札 」
轟々と燃え上がる炎が大蛇の舌を捉える。慌てて舌を引っ込める大蛇。鎌首を持ち上げてリッキー達から離れた。
「リ、リッキー副隊長。大蛇が下がりましたよ 」
ほっとする親衛隊員達。
「八賢者のイルス様が死ぬ前に残してくれた3枚のお札を、シール加工して入墨デザインにして頭に貼っていたおかげだな 」
何故、そんな事をと思いつつも誰も口を出さない。
「たたお札はもう1枚しか無い。次に俺がお札を使ったらもう終わりだ。モヒーバズーカを撃ちまくれ 」
誰かがゴクリと息を飲み込んだ。
大蛇は大きな目でこちらを見続けていた。
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大陸北部から騎士王国につながる街道では、南下する避難民達が恐慌を発しそうになっていた。百年前に多くの人々を食い殺した神話の怪物が再び現れたのである。そんな中、シュラオン率いるマッドマキシマム本隊が人の流れに逆らう様に北上を続けていた。
「シュラオン様 」
7番隊隊長シルヴァルトは、本隊の中のシュラオンを見つけて駆け寄って行く。
「シルヴァルト!! 」
シルヴァルトに気が付くシュラオン。
「北方だけでなく、街道に向けて敵の反応が多数向かって来ております。ミズガルノズの大蛇ほどでは無くても、異様に巨大な反応も複数……」
「うむ……味方をも犠牲にして大蛇を騎士王国にぶつける気だ。エタールのやりそうな事だ 」
「いかが致しましょう 」
「シルヴァルト、うぬに本隊から1、2、3隊以外の全隊の全権を任す。避難民の警護、誘導は任せる 」
「はっ!! 」
「敵の大物は、我々と騎士王国と王様連盟の精鋭で受けもつ。避難民を頼んだぞ 」
「はっ!! 」
シルヴァルトは深く頭を下げた。
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ミズガルノズの大蛇の顕現による闇はテッド達の元にまで広がっていた。
「空が暗く……遂に出たか……」
テッドは大蛇が顕現したであろう北方を見つめる。
「テッド様、早く大蛇の元に行かないと 」
「テッド殿、ここは拙者達に任せて先に行くでござるよ。拙者には、この骸骨達の無念の声が聞こえるでござる……拙者に考えがあるでござるよ。テッド殿、Xの炎と共に大蛇の元に行ってくだされ 」
ケンマロはライルのハンググライダーの上に飛び移った。軽いから出来る技である。
「ケンマロ師範の言う通りだ。先に行けテッド。Xの炎と共に…… 」
真顔で見つめて来るライル。風神剣で風を操りバランスを取っている。
「あぁ、ここは俺達に任せろ。行けテッド、Xの炎と共に……」
クールなダースク。
「行け、Xの炎と共に……」
寡黙なアンジーも口を開く。
「オイラ達に任せて先に行ってくれテッド。Xの炎と共に…… 」
目を輝かせるパルン。
「え…… 」
なんか……みんな……Xの炎を連れて行けって言うんですけど……持ってけるの?これ。
「行きましょう、テッド様。Xの炎と共に 」
ブリーフワンがそういうのなら大丈夫か!!
「わかった、行くぞ、ブリーフワン!!Xの炎と共に!! 」
「はい!!尻からジェット3……2……1……ファイヤー!!! 」
チュドドドドドーン!!
ブリーフワンはテッドの尻から超圧縮した炎を噴射する。超加速で発進したテッドは一瞬で遥か先へと飛んで行ってしまった。
残されたパーフェクトオーダーの面々が顔を合わせる。
「行っちゃったね……」
「あぁ、Xの炎を置いて行ったな……」
「どうするんだ?これ 」
「…… 」
残された超巨大なXの炎に大量のXの炎。寂しげに揺れている。
「Xの炎は後回しでござる。
ライル殿、拙者を巨大なスケルトンの頭まで飛ばすでござるよ 」
「わかりました。風神剣!! 」
ライルが風神剣で突風を巻き起こすと、ケンマロはジャンプして風に乗った。そして巨大なスケルトンの頭に飛び乗った。
「遂に、遂に、この時が来たでござる 」
小さなスケルトンが重なりあって出来た巨大なスケルトンの、額の辺りの隙間を掘っていくケンマロ。
「これくらいで大丈夫でござるな 」
隙間に下半身を埋めて、ぴったりと入りこむケンマロ。上半身だけが飛び出ている。
「し、し、師匠。それは一体? 」
「拙者にはガチャで無残に捨てられた、この骸骨達の気持ちがわかるでござる。ならば思いは同じ……共に戦えるでござるよ 」
「ま、まさか…… 」
「超巨大骸骨inケンマロ、始動するでごさる!! 」