大蛇再臨2
グギャアアアア……
山のような海月は身体のあちこちを燃やしながら苦しげに暴れまわっている。しかし徐々に高度を落としてゆく。
テッドの尻辺りから炎の翼を羽ばたかさせるファイヤーパンツは、海月と意識を失ったミーネの黒龍号の間に位置した。
「海月は大丈夫そうですね……」
最新の魔法AIを搭載して、言語機能を大幅に強化したブリーフワンがホッとした瞬間だった。後方の至近距離に巨大な敵反応が突然現れた。
「なっ!!! 」
ブリーフワンが後方を向くと、山の様な巨大なスケルトンが骨で出来た巨大な剣を振り下ろす所だった。
このままではテッドさんもミーネさんも危ない。瞬時に判断したブリーフワンは4枚の炎の羽を集束させてジェットの様に勢いをつけて黒龍号に突撃した。
ガンっ!!
「ぐえっ!! 」
黒龍号が弾き飛ばされた跡を巨大な剣が通り過ぎた。
ドガガーン!!
地面に勢いよく叩きつけられた剣は、地面に大穴を開ける。スピードは無いが当たると大変な事になる。
気絶したままのテッドとミーネを守りながら、戦う事は難しい。特にテッド様は紳士of紳士。女性第一だ。
しかし……
ガンっ!!
「ぐえっ!! 」
黒龍号が弾き飛ばされた跡を、横薙ぎに巨大な剣が通り過ぎた。
ガンっ!!
「ぐえっ!! 」
黒龍号が弾き飛ばされた跡を、巨大な足が通り過ぎる。
テッド様と共に、身体が持つ限り戦い続ける!!ブリーフワンは覚悟を決める。
ブリーフワンの覚悟に怖気ついたのか、巨大なスケルトンは動きを止めた。
「ふふふ……テッド様と私の気迫に怖気ついたか骸骨。大人しく立ち去るがよいでしょう 」
勝ち誇るブリーフワン。
骸骨はゆっくりと方向転換する。遠くを見つめる骸骨は、街道の先の方の避難民の集団に視点を定めた。そして全速で走り始めた。
「なっ!! 」
ガシャン、ガシャンと音を立てながら走る巨大骸骨に、避難民を守るべく猛スピードで直ぐに追いつくブリーフワン。
「くらえ!!尻から火が出て大回転!!」
轟々とした炎を纏い大回転するテッドとブリーフワン。次々と炎の鞭が巨大骸骨に当たるが効いている気配が無い。骨は耐火性が非常に高い。
そして骸骨の大きな手がテッドとブリーフワンを掴んだ。巨大な骸骨の握力にテッドの身体が軋んでゆく。
「ブ、ブリーフワン……」
激痛に目を覚ましたテッドが声を絞り出した。
「テ、テッド様……私が着いておりながら申し訳ありません 」
「ミーネさんは無事なんだな……」
「はい 」
「なら、いい。ブリーフワン、あれをするぞ 」
「ま、まさか、ミズガルノズの大蛇に対する最終決戦用必殺技のあれを使うというのですか? 」
「……仕方がない 」
「しかし、もしもエタールの配下にでも見られて、大蛇戦で対策を立てられでもしたら……」
ギギギギギギ……
ブリーフワンの魔力で防御されているテッドの身体が軋みを上げる。
「し……仕方が無い……このままでは……ここで……終わりだ…… 」
ギギギギギギギギギギギギ……
「……畏まりました。尻から火が出て大回転極みXの準備を開始します……3.2.1.準備完了しました 」
「よし、いくぞ!! 」
「『き・わ・み …… X!! 」
テッドとブリーフワンの声が高らかに響き渡る。
ドカーン!!
テッドの尻からX型の炎が飛び出して爆発する。テッドをきつく締め付けていた骸骨の手が緩む。テッドの尻からダダダダダンとマシンガンの様にXの炎が飛び出して爆発する。
「今だ!! 」
テッドは尻から火を噴射して骸骨の手から脱出した。その腰の周りにはXの炎が周回している。
「耐火性が強いなら、爆発させて粉砕するのみ……世界をXで埋め尽くす!! 」
テッドの尻から次々とX型の炎が現れてゆき、テッドの背後の宙を埋めてゆく。大量のXの炎で空が赤く染まる。
「限界突破……尻から火が出て大回転 極みX……」
X型の炎が整列して巨大なXを形作っていく。
巨大な骸骨から必死に逃げていた避難民達が異変に気がついた。
「な、なんだ……空が真っ赤に……」
「見て!!きょ、巨大なXが空に 」
「え、英雄テッド 」
「英雄テッドが助けに来たんだ!! 」
テッドは避難民達の方を優しく見つめた。そして視線を巨大な骸骨に戻す。そしてゆっくりと左手を上げた。
巨大なXがグルグルと大回転を始める。
「さらばだ、巨大な骸骨。天に還れ 」
テッドがゆっくりと左手を降ろそうとした時だった。
「ちょ、ちょっと待つでござ〜る!! 」
空からケンマロが降ってきた。