大蛇再臨1
テッドとミーネは街道上を高速で飛行し続けていた。右側の遥か先には大きな山脈が見える。
「そろそろ半分くらいかしらね」
「うん、あの山脈が中央山脈として、半分を超えたくらいかな 」
「え……」
街道上を高速飛行するテッドとミーネの遥か前方に巨大な大理石の扉が現れた。
「何だ? 」
「これが噂のエタールの召喚門かしら……それにしても大きいわね……」
数十メートルはあろう巨大な扉が開き、スケルトンの頭が出て来る。
「え??? 」
次から次へと飛び出してくるスケルトンの頭。スケルトン達は必死に押し出されない様に踏ん張るも、後ろから次々と押し出されて地面に激突していく。
ガシャン、ガシャンと地面に激突して破壊されて行くスケルトン。テッドとミーネは顔を合わせる。
「テッドさん、どうするの? 」
「よくわからないけど、勝手に壊れているんだから、無視して先に進もう 」
「そうね。大蛇の元に急がないと……」
テッド達が落ちてゆく骸骨を迂回して進もうとした時だった。
ビリッ!!
「痛っ!! 」
テッドの右腕に激痛が走る。
「何? 」
ミーネはフライングポット『黒龍号 』を防御モードにして炎を纏った。
ボッ……黒龍号に伸びて来た何かが炎に包まれる。
ビリビリビリ……
「うわぁああ〜っ 」
テッドの悲鳴が響く。ぐったりしたテッドが何かに引っ張られて行く。
テッドの引っ張られて行く方向を見るミーネ。その先には半透明の巨大な物体があった。
「く……くらげ?」
山の様な本体に長い触手が大量に出ている。空に浮かぶ巨大な島のような海月である。
「いけない!!テッドさんを助けないと 」
ミーネは黒龍号から黒龍波を立て続けに放つが、テッドを掴んだ触手を阻むように現れた別の触手に阻まれる。黒龍波に触れた触手はすぐに燃え上がるが、次から次へと現れる触手相手にキリがない。
ミーネは黒龍号で引っ張られるテッドを追う。迫り来る触手を躱し、たまに触れて来た触手は、纏った炎で燃え上がる。
「あ、あれは口? 」
テッドが引き込まれようとする先、そこには牙のたくさん生えた大きな口のような物があった。間に合いそうに無い。しかし……
「私は、決して諦めない!!」
ミーネは黒龍号から最大出力で獄龍波をフルオートで連射する。フライングポットの魔力を大きく消耗するが、そんな事は言ってられない。次々と現れる触手を燃やして行く。
「見えた!! 」
ミーネは複雑な魔法陣を構成してゆく。この大陸に着いてから学んだ新しい炎熱系魔法。八賢者ナレジンの得意とした最強の炎熱系魔法。
「紅炎!! 」
轟々とした炎が一直線に巨大な海月に向かう。邪魔しようとする触手は炎に触れる前に燃え尽きる。テッドの横を通り抜けた炎は、巨大な海月に突き刺さって爆発した。巨大な海月のあちこちで炎が轟々と燃え上がる。
巨大な海月は苦しげに触手を振り回す。ミーネは一気に膨大な魔力を消費して、意識が朦朧とするが、黒龍江号のオートカウンター機能で守られている。
しかし、テッドを捕まえていた触手の大元が燃え尽きて、テッドは空高く投げだされてしまった。
「くっ……」
朦朧とした意識の中で必死に落下するテッドを追いかける黒龍号のミーネ。しかしとても間に合いそうにない。
「誰か!誰か!テッドさんを助けて……」
「畏まりました 」
テッドの尻付近から凛々しい声が響き渡った。
ボッと尻付近から4枚の炎の翼が生える。ファイヤーパンツは炎の翼を羽ばたかせて空中で静止した。
テッドの無事を確信したミーネは『翼の生えてる位置が残念ね』と思いながら意識を失った……