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外伝キュードランドの危機編4

 ゴーレム2号が口を開き、再び壁に映像が移り出した。


 暗くなった入り口の前で男は1人倒れている。ゴーレム1号も2号もビートゥール博士ももういない。ただ乾いた風が吹いて枯れ葉が舞っていた。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 コツコツコツ……


 闇の中に足音が響いて、キュードラ男爵が現れた。キュードラは倒れた男に哀しげな目を向ける。


「……ヴァンパイアハンターQよ、貴方は楽しいキュードランドを求めて彷徨い……力尽きて亡くなった初めての男です ……」



 キュードラは冥福を祈るかの様に瞳を閉じた。



「可哀想に……」



 完


 ゴーレム2号が口を閉じると映像が消えた。



「はい? 」

 何だ?何なんだ?今のは?


「皆さん。お分かりになられましたね。これが、これこそがキュードランドの闇なのです 」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が噛み合わないぞ。キュードランドの経営危機を立て直す為の会議のはずだ。闇なんてどうでも良いじゃないか!! 」


「もしもキュードランドが24時間営業だったなら……」


 イヤービはため息をついた。


「ちょ、ちょっと 」


「もしもキュードランドが24時間営業だったなら……では、ゴーレム2号さん続きをお願いします 」



 ゴーレム2号が口を開き、壁に映像が映り出した。


 更に暗くなった入口の前で男の亡骸は風に晒されていた。キュードラも既に立ち去ったようで誰もいない。


 ガタン!!


 画面が急に大きく乱れて、そして消えた。


「茶番は終わりです……」


 ゴーレム2号の頭の上にスッと立つ1人の影。腕を組んで皆を見下ろしている。


「フォ、フォージュリー係長? 」


 キュードラ様の配下になって以来、一言も喋らずにニコニコだけしていた男。ガヤ担当の係長になってからもひっそりと皆の後ろでニコニコだけしていた男が、ゴーレム2号の頭の上で皆を見下ろしている。


「フォージュリーさん、準備は整いましたか? 」


「はっ 」

 ゴーレム2号の頭の上から飛び降りたフォージュリーは、キュードラの前で跪く。


「キュードラ様、万事準備は整いました 」


「じゅ、準備とは一体? 」


「それは……」



「フォージュリーさん、それは私の口から説明しましょう 」


「はっ 」


「キュードランド(スカイ)……」


「キュ、キュードランドスカイ? 」


「私は王様連盟の結界術によって、このキュードランドの半径100mから出られません。ならばキュードランドごと空を飛んで移動する 」


 キュードラはゆっくりと皆を見渡す。


「ここでの生活も悪くはありませんでした。大切なキュードラ愛の詩、多くのファン、楽しい仲間達、そしてキュードランド……しかし私にはエタール様こそが望む全てなのです。さぁ、参りましょう。エタール様の元に 」


「はっ!! 艦橋に御案内致します 」


 フォージュリーを先頭に会議室から出ようとするキュードラ達。その前にゴーレム3体が現れる。


「キュードランド、タノシイ、ユメノクニ。イカセナイ、オレタチ、キュードランド、マモル 」


「ゴーレム1号さん、貴方は世界最強のゴーレム、いや、世界最強の戦士かも知れません。そして、その知能も世界最高クラス。しかし……」


 ゴーレム1号の腕をゴーレム2号が左から、ゴーレム3号が右から押さえつける。


「エッ? 」


「ゴーレム2号さんと3号さんの魔法AIは一世代前のウルフン6、最新AIのキュードラ2000で上書きさせて頂きました。お金をケチったのが貴方達の敗因です 」



「ナメルナ、オレ、ツヨイ 」


 ゴーレム1号は腕を大きく動かして2号と3号をぶん回す。腕に必死にしがみつく2号と3号。


「ウフフ、知っていますよ、イカ課長、タコ課長、お願いします 」


「エッ? 」


 多数のタコとイカがゴーレム1号に飛びついて行く。ペタペタと引っ付いてゆき、1号は動きを止めた。


「1号さん、貴方の弱点は小動物に決して暴力を振るわない優しさです。私は貴方のそんな所を気に入っていたのですが……しばらく……エタール様が世界を手にするまで眠っていて下さい 」


「オ、オレ……」

 多量のイカとタコの間から小さな声が漏れる。


「Qさん、1号さんとイカ課長、タコ課長を水槽に移して上げて下さい 」


 後ろの方でひっそりと佇んでいたフードの男が前に出てフードを脱ぎ捨てた。


「はっ!!畏まりました、キュードラ様。この元ヴァンパイアハンターで、今はキュードラ様の影の護衛役のヴァンパイアハンターハンターのQが水槽に移して参りましょう 」


キュードラはニッコリと微笑む。


「ウフフ、それでは他の皆さんは艦橋に参りましょう。キュードランド(スカイ)の出撃です 」


 ・

 ・

 ・

 艦橋はキュードランドの最上階の上にそびえ立つ様に新しく作られていた。中に入るキュードラ達。中を見渡したキュードラは感嘆の声を上げた。


「ほほう、実用性と美しき装飾を兼ね備えた見事な司令室です……気に入りました。さすがフォージュリーさんです。特命係長フォージュリーさん、特命課長に昇進です 」


「はっ!!有難き幸せ 」


「それでは皆さん、配置に付いて下さい。机に名前の紙が置いてあるみたいですよ 」


「はっ!! 」




「ふふふ、エタール様。このキュードラ、貴方にやっと、やっとお会い出来ます……フォージュリーさん、では、お願いします 」


「エネルギー充填80パーセント、飛行可能水準に到達しております 」


「全方位敵影無し 」


「各種ロック解除 」


「キュードラ様、準備が整いました 」


 フォージュリーはキュードラの目を見る。頷くキュードラ。



「天空要塞 キュードランド(スカイ)、発進!! 」




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