外伝 キュードラ 愛の詩9
「な、なんて強さ……」
フォージュリーとメレッドは愕然と立ち尽くす。凄腕の上級魔族6人が瞬殺(死んではいない)されたのだ。しかも、何がどうなったのかすら、よく理解出来なかった。
「コイ、オマエタチ。スベテヲ、ヒテイ、シテヤル 」
クイッと手招きするゴーレム1号。
「こ、このアコギ野郎……」
フォージュリーの口調が荒くなる。
「だ、駄目です。フォージュリー様、今、何かとてつも無い事が起きました。でも、何がどうなって、どうなったのかすら分からないのです 」
メレッドがフォージュリーを抑える。
シュン!!
ゴーレム1号が瞬時にフォージュリーの後ろに回り込んだ。
「『えっ??? 』」
唖然とするフォージュリー達。
「サヨナラ……」
ゴーレム1号がフォージュリー達をぶん殴ろうとした時だった。
「ウォオオオオ!! 」
ビートゥールが雄叫びを上げながら、ゴーレム1号に突進して行く。ゴーレム1号はニヤリと笑い、迎え撃とうとして、動きが止まった。
「ム、ムシガ、イッパイ……」
「とぅう〜っ!! 」
虫を衣の様に全身に纏ったビートゥールが大きくジャンプして、ゴーレム1号の頭にしがみついた。
「『ビートゥールさん!!』」
「つまみを左にオン!! 」
つまみを左にオンするビートゥール。
「アァアァアァアア……」
ゴーレムの口から悲鳴が漏れる。ふるふると震えるゴーレムは、シュウシュウと煙を出して活動を停止した。ビートゥールはゴーレムから飛び降りた。
「ふふふ、どうですかな?このビートゥールの大活躍は……」
「さすが魔族領随一の昆虫博士。虫を纏って突撃をするとは……このメレッド、感服致しました 」
「……ピコン!!」
ゴーレム1号の目が開き再起動する。
「オイ、オマエタチ……」
ゴーレム1号がフォージュリー達に近づいて行く。
「コレ、アゲル 」
キュードラ 愛の詩 限定本を差し出すゴーレム。
「タダで良いのですか? 」
フォージュリーはおずおずと本を受け取った。
「カネ、ナンテ、イラネーヨ 」
「ゴーレムさん……」
「フォージュリー様!! 」
フォージュリーから本を奪い取ったメレッドは、血眼になってページをめくる。通常本を完全暗記している自分が知らなかったのならば、サインをしたページに何かあるのかも知れない。
「カネ、カネ、イウ、ヤツ、ナサケネーゼ 」
「ゴ、ゴーレムさん……」
ページをめくるメレッドの手が止まった。サインがあるページだ。そこにはキュードラのメッセージが添えられていた。
『ちょいエロの秘訣はギリギリを攻める事である。キュードラ 』
「何を馬鹿な事を……」と言いながらメレッドは気がついた。そうか!!ギリギリまで待てば良かったのか……
「カネ、カネ、カネ、カネ、ハジヲ、シレヨ 」
「そ、それでは、私のオリハルコンの指輪を……」
「……」
「フォージュリー様、謎は解けました。残るは我ら2人のみ。私が行って参ります 」
フォージュリーはメレッドの元に駆け寄った。
「メレッドさん、答えは何なのですか? 」
「フォージュリー様、このメッセージを見てください。これが答えです。こ、こんな物の為にさ、3億も巻き上げられるところでした 」
「スマネー、オレ、ハンセイ……デモ、キュードラ、クビノ、カチ、プライスレス 」
「まぁ、良いでしょう。キュードラの首さえ取れば万事解決です。貴方と私の2人が残っていれば、魔界秩序管理局は滅びません 」
「ふふふ、私、ビートゥールも協力しますぞ 」
虫まみれのビートゥール博士が近づいて来る。顔が引きつるフォージュリー。
ガンッ!!
フォージュリーとメレッド、ビートゥールはガッチリと拳を合わせた。