外伝 キュードラ 愛の詩8
「フォ、フォージュリー様!! 」
ゴーレム2号の水晶を見ていた局員から声が飛んだ。皆の視線か水晶玉に集まる。
「な!! 」
キュードラ愛の詩 限定サイン本の価格が暴騰している。ウルフン商会とノーミズ投資ファンドが猛烈に競り合っているのだ。
ノーミズ投資ファンド 7000万G↑
ウルフン商会 7500万G↑
ノーミズ投資ファンド 8000万G↑
ウルフン商会 8500万G↑
ノーミズ投資ファンド 8800万G↑
「くっ、な、なんだ、こいつらは 」
「ウルフン、ショウカイ、カネモウケ、プロ。カネ、ニオイ、ビンカン 」
「お、おのれ、ウルフン 」
「ノーミズ、トウシ、ファンド、ハカセ、トッキョリョウ、ウンヨウ。キュウ、セイチョウ 」
ウルフン商会 8900万G↑
ノーミズ投資ファンド 9000万G↑
「上昇のペースが落ちてきました。今がチャンスです。皆さん、金目の物を提供してください。我々も参加するのです 」目が血走るフォージュリー。
「フォージュリー様、お待ちを。これは詐欺です。明らかな詐欺です。キュードラのサイン本に1億近い価値があると思いますか? 」
「し、しかし……」
「問題は大体変わらないとアコギなゴーレムは言いました。ならば、いくらでも時間はあります。しっかりと作戦を立てましょう 」
「そうだ。メレッドさんの言う通りです 」
「そうですね」
「その通りだ 」
ゴーレムがゆっくりと首を振る。
「キュードランド、タノシイ、ユメノクニ。リピーター、タクサン。マイニチ、アトラクション、ヘンコウ。ミンナ、ハッピー 」
「え? リピーターというか、お客様なんて、他にいるのですか……」
「……」
丁重に無視するゴーレム。
「3カイ、モンダイ、ホトンド、カワラナイ。デモ、1.2カイ、アトラクション、マイニチ、ヘンコウ 」
「えぇっ!! 」
「ホンジツ、エイギョウ、ジカン、18ジ、マデ。アスハ、10ジカラ、エイギョウ。アラタナ、アトラクションデ、オマチ、シテマス 」
「フォージュリー様、メレッド様、あと1時間しかありません!! 」
皆の顔が青ざめる。
「仕方ありません。今日クリアするしか無いのです。我々はエリート部隊、エタール様より、皆が高価な魔法具を拝領しているはずです。皆さん、協力して下さい……」
深々と頭を下げるフォージュリー。
「わかりました 」
メレッドが前に出る。その手には光り輝くネックレスがあった。
「メレッドさん……」
「エタール様より拝領した、目の充血を抑えるネックレスです。私の宝物ですが、仕方ありません 」
目が更に真っ赤になるメレッド。
「俺はエタール様から拝領した『オナラを好きな場所に飛ばせる指輪』を提供するぜ 」
たまに急に臭くなるのは、お前の仕業か……と思いつつ受け取るフォージュリー。
「私は、あくびを人に飛ばせる籠手を提供します 」
「私は昆虫が寄って来るネックレスを提供しましょう。あっという間に虫だらけです 」
「自分は1か6しか出ないサイコロを……」
皆が次々と高価?なアイテムを出してくる。
「皆さん……ありがとう、ありがとう 」
涙ぐむフォージュリー。
「鑑定スキル持ちの私の見るところ、ざっと3億Gはありますね。フォージュリー様、一気に勝負を決めてしまいましょう。
キュードラの首さえ取れば褒美と領地が貰えます。人族どもから絞りあげて取り戻せばよいのです 」
真っ赤な目でアイテム鑑定を進めるメレッド。
「そうだ!!人間どもから巻き上げろ!! 」
「生意気な人間どもに思い知らせるのだ!!支配者は我々だと!! 」
「フォージュリー様、メレッド様、奴らの勢いは完全に止まっております 」
ノーミズ投資ファンド 9675万G↑
ウルフン商会 9676万G↑
ノーミズ投資ファンド 9677万G↑
「ふふふ、エリートとはオークションでも優秀なのですよ、一気に決着をつけて見せましょう。1億2000万Gで入札します 」
「リョウカイ……」
「さすが、フォージュリー様。微妙に手が出せない値段を付けてきました 」
フォージュリー局長 1億2000万G↑
ウルフン商会 9676万G→
ノーミズ投資ファンド 9677万G→
「ふふふ、奴ら、完全に止まってしまいました。我々の完全勝利ですね 」
皆の視線がゴーレム2号の水晶玉に集まる中で、ゴーレム2号の目が光る。
「ソウは、いかナイ。オレも、サンせん 」
ゴーレム2号が喋り出した。
「キュードラ あいノ ウタ。2おく9000マンGで、ニュウさつ 」
「『「え?」』」
キュードランド ゴーレム2号 2億9000万G↑
フォージュリー局長 1億2000万G→
ウルフン商会 9676万G→
ノーミズ投資ファンド 9677万G→
「な……ギリギリまで価格を上げて……我々からギリギリまで巻き上げるつもりですが……」
愕然と肩を落とすフォージュリー。
「皆さん!!ゴーレム1号の頭のつまみを左に回すのです!!それで全て解決です!! 」
メレッドの指示が飛ぶ。
6人の上級魔族がゴーレム1号に襲いかかる。
ドガッ!!
バギッ!!
ゴンッ!!
ガンッ!!
ベギッ!!
ズゴッ!!
倒れこむ6人の上級魔族を、傲然と見下ろすゴーレム。
「ミンナノ、ユメノクニ、マモルタメ……オレ、ツヨクナッタ……」