外伝 キュードラ 愛の詩5
「ゴ、ゴーレムさん、貴方、何を笑っているのですか? 」
「ミテレバ、ワカル。ウフフフフ……」
羽の生えた8つ目の魔族が前に出た。
「私は、魔界秩序管理局 係長のエイング。さぁ、その指輪を返して頂きましょうか。それはエタール様から局長が拝領した宝物。狼男風情が持って良い物ではありません 」
狼男のリーダーは、ちょっと待ってという感じで、手を前に突き出した。
「えーっ、本部、本部。魔界秩序管理局 係長のエイング様より、キュードランドのゴーレム様からお預かりの指輪を寄越せとの要望あり、返答求む 」
腕時計のような魔法具に語りかける狼男。
「えーっ、責任者に確認を取ってくる。エイング様に少しお待ち頂くように伝えて頂きたい 」
魔法具から返答が来た。
「了解 」
「え〜、今のは何でしょう? 」
「すみません。現場には権限が無いんです。ちょっと待って頂いて宜しいですか? 」
「わかりました。我々は紳士。不要な争いは望みません。指輪さえ戻れば良いのです 」
鷹揚に構えるエイング。大人の対応である。
「ありがとうございます。それでは返事が来るまで、少々お待ち下さい 」
そう言うと、狼男達は棍棒の先を、キャップの蓋を開く様にクルクルと回しだした。
パカッ
棍棒の上部が取れる。蓋の様に取れた上部をポケットに入れる狼男達。
何だ、あの棍棒、中が空洞みたいだ。あんなスカスカじゃ痛くないぞ、と思う魔族達。
「えー、本部より返信。エイング様には大人しくお引き取りを願うとの事。あとは一任する。頼んだ 」
「え…… 」
「すみません。お引き取り頂く事になりました 」
「くくく……ふざけおって。貴方達は既に包囲されているのですよ。我々、上位魔族の力を思い知らせてくれましょう 」
エイングは仲間の魔族達を見渡す。
「行きますよ!! 」
「『「『「おう!! 」』」』」
一斉に襲い掛かる魔族達。狼男達にあと一歩と迫った瞬間だった。
ブァサァァ
狼男達が中が空洞の棍棒を振り下ろすと、網が発射されて魔族達に絡みついた。もがけばもがくほど絡みつく網。
「一丁上がり 」
リーダーの狼男が満足気に頷く。
「な、なんなんですか?この網は 」
網から顔だけ飛び出したエイングが聞いてくる。
「王国技術部のノーミズ博士のグループが開発した魔族捕獲ネットです。魔力阻害繊維が練り込まれているので、力が出せないでしょう 」
「くっ……」
「それに動けば動くほど絡まるし、ネバネバ接着成分が出ますので、逃げられませんよ 」
「エイング様、チ、チカラが出ません 」
「ま、魔法が発動しない……」
「ネ、ネバネバします……」
「それでは、王様連盟の憲兵隊に引き渡しに行きますか……」
「『「フォ、フォージュリー様〜っ!! 」』」
「仕方ありません。皆さん、助けに行きますよ!! 」
ダダダっとゴーレムがフォージュリーに駆け寄る。
「ダメ……ウルドラ、ケイビタイ、ツヨイ……」
ゴーレムがフォージュリーに抱きついた。
「ゴーレムさん……」
「キット、ミンナ、ツカマル。オマエタチ、キュードラ、タオス、モクテキ……」
「くっ……確かに、我々はキュードラの首が最優先ではあります 」
「ダイジョウブ、キュードラ、タオス。スベテ、オッケー 」
「しかし……仲間達が……」
「ダイジョウブ、ホシャクキン、ヒトリ、1センマンG……オマエタチ、ナラ、キット、オッケー 」
「え……? 」
「フォ、フォージュリー様、ウルドラ警備隊が去って行ってしまいました……」
メレッドが悲しい顔で告げた。
「くっ、こ、このゴーレム……」
「オレ、タオス、イミナイ。プロフェッショナル、ユウセン、ジュンイ、マチガエナイ……」
「ムキーッ!! 」
その場で地団駄を踏むフォージュリー。
「ムキーッ!! 」
「ムキーッ!! 」
「ムキーッ!! 」
フォージュリーに続いて、地団駄を踏む部下達。
「ダイジョウブ、3カイ、チリョク、タメサレル。デモ、モンダイ、ダイタイ、イツモ、オナジ 」
「え? 」
「シュッダイ、ハンイ。キュードラ、アイノウタ 」
ゴーレムは一冊の本を差し出す。
「コレ、キュードラ、アイノウタ、ゲンテイ、サインボン。セカイニ、イッサツ 」
「げ、限定、サイン本……」
「ソウ、オレ、テバナシ、タクナイ……デモ、オマエタチ、ガンバッタ。オレ、カンドウ……ダカラ、1センマンGデ、トクベツニ……」
ふらふらと本に手を伸ばすフォージュリー。
「フォージュリー様!! 」
メレッドが声を上げる。
「キュードラのサイン本なんかに1千万Gなんか払っては駄目です!! 」
メレッドが止めに入った。
「しかし……」
「大丈夫です。私はキュードラ 愛の詩を暗記するほど愛読しております 」