外伝 キュードラ 愛の詩1
かつてテッドorアライブに敗れ、捕虜となったキュードラ男爵は、人里離れた山中の牢屋の中で、忙しい毎日を過ごしていた。
王国スポーツ新聞では、大人の恋愛小説『キュードラ、愛の詩』の連載、質問コーナーの『キュードラ様に聞いてみよう 』、連載コラム『キュードラの秘密情報 』の3本を持つ人気作家である。
額から出る汗を拭うキュードラ。
「次は質問コーナーだな、何々、何でキュードラ様は伯爵から男爵になったのですか?キュードラ様は公爵にするべきだと思います……か 」
キュードラは原稿に筆を進める。
回答、大魔王様の大事な壺を割ってしまったから。如何ともしがたい……若き日の過ち……
遠い目で過去を振り返るキュードラ。
「次は……大魔王軍の弱点とな……我輩が居ない事が弱点です……と 」
「次は……え、エタール様の弱点ですと……」
キュードラは戦慄した。そんな物を新聞で公開するわけにはいかない。
しかしキュードラとエタールの禁断の愛を描いた『キュードラ、愛の詩』の人気が落ち目なので、無理を言って、ちょいエロなシーンを増やさせてもらった恩がある。おかげで人気はチョットだけ回復した……ような気がする。
「仕方ない。許して下されエタール様。我輩とエタール様の愛を描いた『キュードラ、愛の詩』は我々の子供の様な物……きっと許して下さる 」
「えーっと、エタール様の弱点は、愛する我輩が側に居ない事……エタール様はロンリネスっと ……」
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キュードラの公開した秘密情報『エタール様はロンリネス 』は瞬く間に世界中に広まった。それに合わせて王国スポーツ新聞は世界中に販路を広げていくのである。
当然、大人の恋愛小説『キュードラ、愛の詩 』も世界中に広まって行く。
そして『キュードラ、愛の詩』は世界を駆け巡り、大魔王城のエタールの元まで届いたのである。
エタールは『キュードラ、愛の詩 』については何も語らなかった。しかし、以後、魔王軍の休憩所に王国スポーツ新聞が置かれる様になったので、下級魔族の中では「あれは事実だ 」と噂される様になった。
一方でエタールに接する事の多いドーシャやハデダスなどは、エタール様は面白い事に飢えていると判断した。エタール様は残酷だがアホな事は嫌いでは無い。むしろ好きだ。
ただ一方で怒りが収まらない連中がいた。フォージュリー率いる魔界秩序管理局の者達である。南部都市サウザーの謀反や、マッドマキシマムなる抵抗軍の伸長で彼らの威信は地に堕ちていた。そこにキュードラの恋愛小説である。
「キュードラは不敬である 」
「エタール様の愛は我々にこそ向いている 」
「妄想小説で魔王軍の恥さらし 」
「我々を主人公にすべし 」
「ちょいエロ要素が足りぬ 」
彼らの怒りは留まる事を知らなかった。実はキュードラが捕虜になってから、秘密保持の為に何度も暗殺部隊を送っていたのである。
しかし相次ぐ失敗と、次から次へと出てくる真偽不明の情報で、彼らの面子は丸潰れであった。
フォージュリーはエタールに願い出た。魔界秩序管理局の精鋭を持ってキュードラの暗殺に向かいたいと。
エタールはつまらなそうにフォージュリーを見る。そして、少しだけ考えてから「……構わぬ……」と許可を出した。
フォージュリーは魔界秩序管理局の管理を、魔王軍特務部隊のドーシャに依頼して、魔界治秩序管理局の精鋭100名を持ってキュードラ暗殺に向かったのである。