マッドマキシマム結成編3
「ケンマロ師範、敵は殲滅したぞ 」
ケンマロの元に皆が集まって来た。
「さすがでごさるな、シュラオン。我らケンマロ剣舞団、ボロは着てても心は錦でござる 」
シルヴァルト達が頭を下げる。
「ありがとうございます。貴方達のおかげで命が助かりました 」
「気にする必要は無いでござるよ。
我らケンマロ剣舞団はエタールと戦う事を選んだ者達ではござるが、世間には貴方達の父上達に助けられた者も多い。道は違えど、民の為に戦って来たのは一緒でござる 」
「シルヴァルト……久しぶりだな 」
覆面モヒカンの闘気溢れる男が前に出た。
「ま、まさか……生きていたのか、バ……」
「その名前は捨てた……戦う事を選んだ時にな 」
「そうか……でも良かった。生きててくれて 」
「お互いにな……」
「そうだ。僕達もケンマロ剣舞団に入れてくれませんか?僕達もエタールと戦いたい 」
「大歓迎でござるよ、ケンマロ剣舞団は来る者拒まずでござる 」
「駄目だぜ、ケンマロ師範、約束は約束だ 」
覆面モヒカンの闘気溢れない男が前に出た。
「モヒー、そんな事を言わないで欲しいでござるよ。皆、ケンマロ剣舞団という名前を心底気に入ってござる 」
「馴れ馴れしく呼ぶんじゃねーよ。あと別に気に入って無いと思うぜ 」
「どうしたんですか? 」
シルヴァルトがおずおずと聞いてくる。
「我々の名前は確定では無いのだ。過半数が賛成して初めて本決まりとなる。だから新しい入隊希望者が来たのでな。また選挙をせねばならぬ 」
シュラオンが答える。
ケンマロはふるふると首を振る。おひげがふるふるとなびいた。
「無駄でござるよ。前回『ケンマロ剣舞団』は、モヒーの『モヒカン進撃隊』に圧勝でござった。何度やっても同じでござる 」
「馬鹿野郎!!ケンマロ剣舞団なんて軽い名前の抵抗軍なんて聞いた事がねーよ!! それに白票が最大多数じゃねーか 」
「俺もチーム 『シュラーズ』で立候補させてもらおうか 」シュラオンがマントをたなびかせる。
「では、僕も提案させてもらっても良いですか? 」
シルヴァルトがおずおずと手を上げた。
「構わないでござるよ……『ケンマロ特戦隊』でござるな? 」
「違うでござる、じゃなくて……マッド……『マッドマキシマム』はどうでしょう? 」
「けっ、意味がわかんねーよ!!モヒカン進撃隊の方がわかりやすくて良いじゃねーか 」
わかりやすくて嫌なんだと思う隊員達。
「どういう意味だ 」
覆面モヒカンの闘気溢れる男が聞いて来る。
「マッド……泥まみれになって、ボロボロになっても最大限戦うって意味だ 」
「悪くは無いな……」
「僕も覚悟を決めた。最後まで戦い抜く。その覚悟を示した名前だ 」
「なかなか良いでござる。ケンマロ剣舞団が相手でなければ決まっていたかも知れないでござるな、相手が悪かったでござる。他にいなければ決を採るでござるよ 」
ケンマロは期待に満ちた目で皆を見渡す。
「ではケンマロ剣舞団がいい者は手を上げるでござる!! 」
シーン……
「え? と……時が止まったでござるか? 拙者は遂に最強スキルに目覚めたでござるか? 」
モヒーカーンがケンマロを押しのける。
「ちげーよ!!遂に俺のモヒカン進撃隊の良さに気づいたんだよ。モヒカン進撃隊になりたい者は手〜上げろ!! 」
シーン……
「え?……進撃のモヒカンの方が良かったか? 」
シーン……
「では僕が、マッドマキシマムが良い方は手を上げて下さい 」
シーン……
えっ……シュラーズ、カッコ悪いでござるよとケンマロが思った時だった……
「フッ……ケンマロ師範に遠慮も不粋だぜ 」
闘気溢れる覆面モヒカンがゆっくりと手を上げた。
「ごめん、ケンマロ師範 」
「申しわけ無い 」
1人、また1人と手が上がる。
「マッドマキシマム、カッコいいな 」
「俺も戦い抜こう、最後まで 」
更に手が上がる。
「見た目なんて気にしてなかったからな……」
「いつか……この名を誇れる時が来て欲しいな……」
ドンドンと手が上がる。
ブァサ!!シュラオンがマントをたなびかせた。
「フン……俺もマッドマキシマムで構わぬ。シュラーズ支持者よ、マッドマキシマムに手を上げるのだ 」
シーン……
「シュラーズ支持してなかったけど……」
「俺も……遅くなっただけで……」
「順番待ってただけなんだけど……」
再び手が上がる。
「ケッ、良いじゃねーか、マッドマキシマム。俺たちの心の中のモヒカン進撃隊は今日限りで解散だ。支持者は許してくれ 」
モヒー・カーンも手を上げた。
「シュラーズよりはマシでござるな……」
遂に最後の1人、ケンマロも手を上げる。
「フッ……満場一致で決まりだな 」
闘気溢れる覆面モヒカンは、シルヴァルトの肩を叩いた。
「ビバ!!マッドマキシマム!! 」
ケンマロが腕を突き上げて高らかに叫んだ。
シーン……
……が誰も乗ってこなかった。
ケンマロ剣舞団からマッドマキシマムに改名した彼らは、歯止めを失ったエタールの圧政に苦しむ人々の支持を集めて、急速に勢力を伸ばして行った。
そして物語は現在につながる……