マッドマキシマム結成編2
「はぁ、はぁ 」
シルヴァルトは一族を引き連れて逃亡していた。一刻も早く、少しでも遠く、街から離れなければならない。
馬車は前回の襲撃で壊れてしまった。護衛部隊は壊滅状態だ。無事な者はほぼいない。最初は100名以上いたが、もう10名ちょっとだ。
「シ、シルヴァン様、て、敵が……」
先頭の剣士が立ち止まる。
正面の森から敵がワラワラと現れる。
その中に立派なスーツを着た4つ目の悪魔がいた。
「魔界秩序管理官のブーリングです。元財務卿フィナンの一族ですね。フィナンは叛逆、横領、南部への破壊工作の罪で死刑となりました。貴方達も同罪ですので死んで頂けますか 」
敵はこちらを円状に囲い込んだ。100……200人はいそうだ。
ここまでか……完全に囲まれてしまった。父さんに家族を託されたのに、弟とは逸れてしまった。残るのは母さんと小さな妹のみだ……
我々が我慢すれば平和に過ごせると、信じてはいけない者を信じてしまった罰なのだろうか……かつて友は言った。正義とは人にも時代にも左右されないはず、だから俺達は戦うのだと……
君達が正しかったみたいだ。気づくのが遅かったが、僕も最後の瞬間まで戦おう。
「ふふふ、殲滅です。かかりなさい!! 」
魔族達が一斉に襲いかかって来る瞬間。奇跡は起きた。
「ちょっと待つでござ〜る!! 」
クルクルクルクルと森の方から、高く飛んで回転しながら落ちてくる人影。大きなワータイガーの上に着地した。
「目測を誤ったでござる……」
「なんだ!!貴様は!! 」
激怒したワータイガーは頭上を腕で払うが、人影はぴょ〜んと別の魔族の上に着地した。
ぴょ〜ん、ぴょ〜んと魔族の頭の上をジャンプで移動する人影に半ばパニックになる魔族達。
そこに森から武装した人族の集団が突撃して来る。姿は薄汚れて、装備はボロボロだが強い目の光があった。格上の魔族達と互角以上に渡り合う。
「なんですか、この泥まみれの集団は……しかし私達、上級魔族の相手ではありません。ローブンさん、スティルンさん、我々3人で殲滅しますよ 」
3メートルはあろう3つ目で4本腕の魔族2人がブーリングの後ろから前に出た。
「はっ!! 」
「我々にお任せを……」
そこにガタイの良い鋭い顔付きの男が現れる。
「うぬらは先には行かせぬ ……」
「何だ。貴様は? 」
「我々2人を同時に相手にするつもりか? 」
「俺も混ぜてくれないか……」
覆面マスクのモヒカンが現れる。その身体には闘気が満ち溢れていた。
「ローブンさん、スティルンさん、遊び過ぎないようにして下さいね。では私が殲滅に向かいまし……」
「お主の相手は拙者でござるよ 」
ブーリングの頭にいつの間にかに乗っている骸骨。その顔には長く白いあごひげがあった。
「キーッ!!何なんですか、貴方は!! 」
頭上を払うブーリング。
ぴょ〜んとジャンプして躱す骸骨。
「拙者は……」
再び頭の上に着地する。
「キーッ!! 」
頭上を払うブーリング。
ぴょ〜んとジャンプして躱す骸骨。
「抵抗軍 ケンマロ剣舞団 団長 」
頭の上に着地する骸骨。
「ムキーッ!! いいかげんにしなさい!! 」
頭上を払うブーリング。
「いいかげんにするのはお主でござる!! 」
ぴょ〜んとジャンプする骸骨。クルクルと回転してブーリングの前に立った。
「……ケンマロでござるよ 」
「き、貴様が元魔王軍四天王のケンマロだと? 」
「そうでござるよ。こんなイケメンのスケルトンはこの世にただ1人でござる 」
「……どこがですか? 」
「このヒゲでござるよ。ダンディな紳士にイメチェン成功でごさる。師範と呼ばれるにふさわしいヒゲでごさるな 」
「ククク……まぁ良いでしょう。貴方を倒せば、私の価値は更に上がるでしょう 」
「もう遅いでござるよ……すでに暴落中でござる 」
「何を馬鹿な……ぐっ……」
「無限流 奥義 剣身一閃。すでに魔族のコアは一閃しておったでござるよ…… 」
「あ、あ、あ……」
バタン……ブーリングは力尽きて倒れた。