天の絆編1
調練場にて
ココとエイマは、天 の絆の実践練習を続けていた。
「地にある全ての想いを繋ぎ、我らを、我らの大切なものを守り給え。結界魔法 天 の絆!! 」
光り輝く透明の壁が地面から勢いよくせり出して……バキッとヒビが入る。ヒビはバキバキと広がって結界は砕け散った。
「そろそろ休みませんか?ココさん 」
「いえ、早く私が使えるようにならないと……」
疲弊した顔を向けるココ。
「ブービー先生がよくおっしゃってました。『プロフェッショナルは適切に休むのも仕事ですよ ……』と、休んで問題点を整理しませんか? 」
「わかりました……お願いします 」
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食堂にて
「この食堂のシチューは絶品ですね 」
「そうでしょう。私もこのシチューがお気に入りですよ。でも、良かった。ココさんの顔色が戻りました 」
「心配をかけてしまって、ごめんなさい。どうしても同じ所で失敗してしまって……」
「そうですね。あと、一歩の所まで来ていると思うのですが……」
「エイマ様に魔法図を解析して頂いたので、魔方陣に問題は無いと思います。魔法は発動するようになりましたし……」
「そうですね。魔法は発動する。しかし、最後まで完成せずに崩れてしまう……途中で何か問題が発生していますね。とは言え、私では発動すらしなかったですから……」
「魔法の質、量、強さ、流れなどを一つずつ微妙に変えながら試してはいるのですが……」
「時間はかかりますが……他に手は無いですね。一つずつ確実に確かめて行きましょう 」
「しかし……早くマスターしないと……」
うつむくココ。
「おぉーっ!! 」
食堂の隅の集団から歓声が上がった。
「また、ばあゃの勝ちだぜ 」
「すげーぜ、ばあゃ 」
「ニャア 」
「さぁ、ばあゃ、こいつの運命を占ってくれよ 」
「むむむ……むむむむむ……」とカードを見つめるばあゃ。
「ココさん、ばあゃと猫さんが来ているみたいですよ。挨拶して来ましょう 」
「はい……」
ばあゃは顔を上げた。
「この勝負の決め手は、ばあゃの『迅雷剣 雅 』のフォーカードに対して、お主は『尻から屁が出て大回転』のワンペアで挑んだ事ですじゃ……」
ばあゃは対戦相手を優しく見つめる。
「芋の食べすぎに注意ですじゃ…… 」
「おぉーっ、また役に立ちそうな予言じゃねーか。ポッテ。お前、明日はデートじゃねーか。屁が出たら大変な事になるぜ 」
「ありがとう、ばぁや。僕、今日は芋を1個で我慢します 」
「おぉーっ!! 」と騒めく人々。
エイマとココは観衆の一人に何をやっているのかを聞いてみた。するとばあゃが勇者カードを使って占いをしている事がわかった。
「もう相手はいないですじゃか? 」
ばあゃは周りを見渡す。
「ココさん、やって見ましょう。何か役に立つアドバイスを頂けるかも知れません 」
「しかし……」
「どうせ今は行き詰まりです。私も占いは信じていませんが、第3者の視点も大事ですから 」
「え……」
エイマはココを引っ張って、ばあゃのテーブルに座った。
「ばあゃ様、次は私達と勝負して頂けませんか? 」
「エイマかい……このばあゃに占って欲しい事があるのじゃな……」
「はい 」
「わかったのですじゃ、ルールはわかっておるんじゃな」
「はい。ジョーカーはウルフンさんの1枚だけ。3回交換ルールで宜しいですか 」
「大丈夫ですじゃ。ではディーラーさんや。配って欲しいんですじゃ 」
ディーラー役の男性がばあゃとエイマに5枚ずつ裏にしてカードを配った。
エイマは配られたカードを確認する。1枚目はナイトのモビー。2枚目はクイーンアライブ。これは上手く行けばテッドorアライブ ロイヤルストレートフラッシュを狙えるかも知れない。
3枚目はスペードのノーミズ博士、珍しくスーツ姿である。4枚目はハートのノーミズ博士、笑顔だ。5枚目は「モヒカンをずらす」モヒーカーンのカード。
1回目の交換が迫る。最強ランクの手札のテッドorアライブのロイヤルストレートフラッシュを狙うべきかしら。
ノーミズ博士は2枚ある。フォーカードからフルハウスや2ペアと戦略の幅は広く、成功確率も高い。ジョーカーさえ来ればロイヤルストレートフラッシュを超えたファイブカードも可能だ ……
悩んだ末、エイマはモヒーカーンを捨てて1枚交換する。次に来たカードで方針を決める作戦である。
「一枚交換で 」
ディーラーから1枚のカードが来る。確認して見るとブービーのキング。来た。ロイヤルストレートフラッシュコースだ。
「1枚交換ですじゃ 」
ばあゃも1枚交換。表情に変化は無い。
エイマは覚悟を決める。ばあゃと猫の底知れぬ力は計り知れない。ならば最強役で勝負するのみ。さよなら、ノーミズ博士……