魔法戦艦グレートグレティ編5
「なんや!! 」
猛スピードで船に体当たりをかまそうと突っ込んで行くブラドラの前に、大きな蚊が現れた。
「えーい!嫌やけど一緒に潰したるでーっ!! ……ん? 」
ブラドラの首に蚊からぐ〜んと伸びた手が巻きついて、ブラドラの首を思い切り引っ張った。ブラドラは突進の勢いを利用されて船の左側に投げ飛ばされる。
「『「『「ウルフンさん!! 」』」』」
グレティが、黒衣が、ブレインマッスル ウィザーズの面々の声がハモり渡る。
スキュポスの上部からグラサンをしたウルフンが顔を出す。
「ふっ、当たらなければ意味は無いんや。ワイがいる限りグレートグレティは落とさせへんで 」
「やるやないか……蚊トンボ 」
スキュポスの前にブラドラが戻って来る。
「巨体のワイを投げ飛ばすとは……ん? 」
ウルフンの顔をジロジロと見るブラドラ。
「なんや?ワイの顔に何かついておるんか 」と言いながらグラサンを外すウルフン。
「う、ウルリッヒ・フランソワ・インペリアル3世はんやないか!! 」
「なぜ、ワイの偽名を……」
ブラドラは慌ててタオルを頭に巻いた。
「ワイや、ワイ。海の男、ブラッディー・ドラスティック・マジェスティ4世や 」
「な、なんで海の男で一匹ドラゴンのあんさんがこんな所に……」
「ウルリッヒはんこそ、マグロの一本釣り漁師のあんさんが何でここにいるんや……」
「ウルフンさん!!どいてーっ!! 」
グレティが魔法ギガランチャーをギュオーンと充填しながら、ブラドラに突っ込んで来る。
チュドーン!!と魔法ギガランチャーが放たれる。
ブラドラが魔法ギガランチャーの破壊エネルギーに包まれる。
ドンっ!!
ドガーン!!
スキュポスが思いっきりブラドラを押す。スキュポスの右手はドガーンと大破した。そのまま離脱を図るブラドラは飛び去って行く。
「ウルフンさん!何を! 」
「ワ、ワイは……」
ウルフンは飛び去って行くブラドラの様子を見ていた……
ブラドラの離脱に合わせて、ブラドラ編隊やガーゴイル達は去って行った。ブレインマッスル ウィザーズ空挺部隊を回収した魔法戦艦グレートグレティは海に着水した……
「すまへん、ワイは咄嗟にブラッディー・ドラスティック・マジェスティ4世はんを助けてしもうた……」
「ウルフンさん、一体なにがあったのですか 」
無精髭が更に伸びたムサイが声をかける。
「ワイは、ワイは新鮮なマグロを食べる為に年に2〜3回ぐらい海釣りに行くんや。
ある時、嵐に巻き込まれてワイのマグロ船は沈没しそうになったんや……」
皆がウルフンを見つめる。
「その時に、偶然に嵐の波乗りに来ていたブラッディー・ドラスティック・マジェスティ4世はんが通りかかって助けてくれたんや 」
「嵐の波乗りですか? 」
ブーマー隊長代理が聞いてくる。
「ドラゴンはん達は巨体やからスポーツを楽しみにくいんや。4世はんは嵐で大荒れの海の大波の上を腹でサーフィンするのが趣味なんや 」
ウルフンは目を落とす。
「ワイはお礼にマグロの解体ショーをして、お造りを振る舞ったんや。4世はんはえらいマグロを気に行って、それから一緒にマグロ釣りに行くようになったんや。まさか悪名高いブラドラはんとは思わなかったんやで 」
グラサンを取り出して、かけるウルフン。
「ドラゴンの顔の違いなんてわからへんからな、タオルをハチマキにするまで誰かと思ったで 」
サラッと酷い事を言うウルフン。
「また来るわよ……きっと……」
「仕方ないんや、正々堂々と勝負するしかワイには出来ないんやで 」
「そうね、わかったわ、ウルフンさん。ブラドラの件はあるけど……貴方が居なかったらこの船は落ちていたわ。助けてくれて、ありがとう 」
「ワイはテッドorアライブfeatウルフンの一員やし、ブレインマッスル ウィザーズの隊員や。気にしなくていいんやで 」
ウルフンは窓の外を落ちる夕日を見続けていた。