魔法戦艦グレートグレティ編 3
ドガーン!!
一頭のガーゴイルがキラキラの突撃によって破壊された。
キラキラはそのまま勢いのままにガーゴイルの大群に突っ込んで行く。進路上のガーゴイルが、ドガ!ドガ!ドガン!!と破壊される。
「なんや!!あのキラキラは!! 」
次から次へとガーゴイルの大群に突っ込んで行くキラキラ達。
「きっと〜、お星様〜 」
おっとりイージグちゃんがアホな事を抜かしちょるけど、それどころでは無いんや。
「違う!! 」
せっかちインペーシ君が叫んだ。彼はたまに正しい事を言うから面倒なんや……
「あれは流れ星だ!! 」
お前も違うといいたいけど、早く正体を掴まへんとガーゴイルが全滅してしまうんや。
「船を落とす。俺について来い!! 」
「ちょ、ちょい待ち!! 」
「ちょい待ちなんて言われても、もう遅い!! 」
せっかちインペーシ君がガーゴイルを迂回して船に向かう。勘弁してや……
「隊長、どうします? 」
「インペーシ君も未熟とは言え暗黒竜や。そう簡単には死にはへん。とは言え放置も出来へん。よし、しっかり者のタイリーはん。あんさんに任せる。危なくなったら助けるんや 」
「承知!! 」 タイリーはんは短く返事して、インペーシはんの後を追った。タイリーはんに任せておけば安心や。
その時、一つのキラキラが輝きながらワイに向かって突進してきおった。
「とうっ 」
華麗なフットワークで躱すワイ。ワイの流し目は、その一瞬でキラキラの正体を見極めたんや。
なんや、キラキラの兜を被った人間が頭を前にして飛んで来ておったんか!!
「みんな!!キラキラの正体は、キラキラの兜を被った人間や!胴体や!胴体を攻撃するんや!! 」
「『「『「おう!! 」』」』」
部下達が声を合わせて返事する。謎さえ解ければ何とでもなるんやで。ガーゴイル相手には通用しても、暗黒竜にワンパターンは通用しないんやで。
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暗黒竜インペーシはガーゴイルとキラキラが飛びかう空域を大きく迂回して敵の船に向かう。船の側面から奇襲をかけるのである。
「見えた!! 」
空に浮かぶ戦艦が無防備な側面を晒している。この距離なら充分な威力が出せる。
暗黒竜インペーシは魔力を口に集めてブレスの準備をする。おそらく艦橋はあの辺りだ。一撃で沈めてやる。そう思っていた時に異変が起きた。
船から手がニョキニョキと生えてきたのだ。
「キモい……」思わずブレスを解除してしまったインペーシ。そこに船から生えた手から魔法が飛んで来る。大量の手から雨あられの様に降り注ぐ魔法の前にインペーシは撤退を決意した。
ドカッ!!
暗黒竜ブラドラの尻尾の一撃が一人のブレインマッスル ウィザードに命中した。弾き飛ばされて意識を失う隊員。
そこに殺到するガーゴイルの大群。仲間が助けに向かうが間に合いそうに無い。
誰もが終わった……と思った時だった。
ちゅどどどどーん!!
広範囲の魔法エネルギー攻撃が、ガーゴイルの大群を一掃して、ブラドラに向かって来る。慌てて躱すブラドラ。
「なんや!なんや! 」
ブラドラはエネルギーの発生点を目で追う。何か白い物が猛スピードで雲の中に消えて行った。
「なんや?あの白いのは。敵の新型なんか?
あの破壊力は半端ないで。当たったらワイ達でもヤバイで 」
真っ白い雲の中を高速で移動する機体があった。グレティ姫の白式である。
「まだよ、まだ終わらないわ 」
フライングポット4号機 通称 白式。ノーミズ博士自らが満を持して製作した、高機動と高い攻撃力を備えたグレティ姫専用の純白のフライングポットである。
騎士王国のプリンセス専用機の製作依頼を受けたノーミズ博士は、そのコンセプトをシンプルに最強の機体と定めた。
最速の機動力と最高の攻撃力をほぼ実現した機体に、博士は博式と名付けようとした。
しかしドーナン君から「なんか、恥ずかしいですな……」と言われて、恥ずかしくなって白式に変更したのである。