魔法戦艦グレートグレティ編 2
「う〜ん、良い景色なんやで 」
ワイはコーヒーの香りを楽しみながら、窓の外の景色を見ていたんや。
「ウルフンさん、どうかしら?魔法戦艦グレートグレティの乗り心地は? 」
姫はんがワイに話かけて来る。
「なかなかやで。雲の上の優雅な旅や 」
「うふふ、満足頂いているようでなによりね 」
姫はんの元に黒衣がやってきて何かカップを渡しおった。あの香りは紅茶やな。
「ところで……最初はあんなに苦労したのに、今は大丈夫なんか? 」
「魔法で気流を解析して気流に乗っているの。だから最低限の人員の魔力で飛んで行けるのよ 」
ワイはコーヒーを飲み干した。
「ところで、あとどれくらいで着くんや? 」
「あと3日ぐらいかしら。このまま何も無ければ良いんだけど……」
「ま、そんなに上手くいくわけはあらへん。敵が来たらワイが出るで 」
「そうね。私も出ます。隊員達も空を飛べる者は大勢いますし、船内から魔法を撃つことも出来ますわ 」
「また、ニョキッと手が出て魔法を撃つんかい。なんか、もう少しデザインにこだわって欲しいんやで 」
姫はんが何か言いたそうな目でワイを見ておる。先程のお返しやで。
ビーッ、ビーッ、ビーッ!!
艦内に警報が鳴り響く。
「前方に多数の敵影発見。距離330フィート(1000m)」
「ウルフンさん 」
「あぁ、ワイも出るで 」
ドガーン!!
「右舷被弾!被害軽微。敵、ブラドラ編隊とガーゴイルの大群です!! 」
「なんやて!! この距離から届くんかい 」
「ブーマー隊長代理、BMW空挺部隊も出して!! 」
「畏まりました、姫様。空挺部隊出るぞ!! 黒衣、前面ハッチを開けてくれ 」
「了解!!前面ハッチを開放します。発進可能な方から発進お願いします 」
頭にキラキラ兜を被りながら前面ハッチに向かう空挺部隊員達。砲撃部隊もそれぞれの配置に向かい、急に慌ただしくなる船内。
「私達もポットに向かいましょう 」
「了解や!! 」
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時を少し戻してブラドラ視点。
暗黒竜ブラドラは配下のブラックドラゴン編隊と、ガーゴイル部隊を引き連れて巡回中であった。
「隊長〜、なんか遠くに船みたいのが飛んでいる様に見えるんですけど〜 」
本隊から少し先行して索敵飛行中の部下から魔法通信が入る。
「何を言っとるんや、船は水の上を浮くもんやで。飛ぶわけあらへんがな 」
「でも〜、隊長達も早く来て下さいよ〜 」
「わかったで、すぐにそちらに着くんやで。ちょっと待っているんやで。
今日の索敵役はおっとりしたイージグちゃんや。もうちょいシャキシャキして欲しいんや で」
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「ほら、船が飛んでるでしょ〜 」
「確かにな、なんやねん、あれは 」
「隊長が休みに友達と行ってるマグロ釣りの船と似ているでしょ〜う 」
「マグロ釣りの船とは桁違いやが船は船やな 」
「隊長!どーせ敵です!!撃ちます!! 」
せっかちドラゴンのインペーシはんが横に出て来た。
「ちょい待ち!! 」
「ちょい待ちなんて言われても、もう遅い!!
ローングドラゴンブレス!! 」
インペーシはんの口から衝撃波が放たれる。ゴゴゴと放たれた衝撃波は船の左の甲板に掠った。
「何をするんや!!敵や無かったら、どうするんや!! 」
「この空域には、我々以外味方はいません。一瞬の迷いが死に繋がるのです 」
「いや、いや、いや。せっかち過ぎや。状況の確認は大事な仕事なんや。慌てて間違えて許されない場合もあるんや。ワイらの肩には暗黒竜族の皆の生活がかかっているんやで 」
「そうよ〜、インペーシちゃ〜ん。せっかちなのは〜罪なのよ〜。今後は〜、私を〜、見習うと良いわ〜 」
いや、イージグちゃんはもっとシャキシャキして欲しいんやで、でもそれを言うと、インペーシはんが調子に乗るし……最近の若いドラゴンは困りものなんやで。
「隊長!船から何かキラキラ光る物が出ています」
副隊長が報告を上げて、ワイは視点を船に戻した。
「な、なんや?あれ? 」
「ガーゴイル部隊前に!! 」
せっかちドラゴンのインペーシはんが勝手な指示を出すが、間違ってはおらん。
副隊長がワイを見る。
「構わへん、ガーゴイル部隊は全速前進。キラキラを向かえ撃つんや!! 」