魔法戦艦グレートグレティ編 1
南部都市サウザー救援に向かうブレインマッスル ウィザーズ(グレティ姫とウルフンを含む)は、黒衣の用意した飛行船に乗り込んだ。飛行船は湖に繋留してあった。
「ほうほう、なかなか立派なもんやないか。でも普通の帆船に見えるで。本当に飛ぶんかいな? 」
「うふふ、最初の離陸は大変だけど、浮いた後は早いわよ 」
「ところで、みんなは何処に行ったんや。姫さんと黒衣達数人に、ワイしか居らへんで 」
「皆は離陸の準備に船底に向かったわ。黒衣さん、運転は任せるわ。ウルフンさん、私達も離陸の準備に向かいましょう 」
「なんや、ワイらはここで「出発進行」とか「面舵一杯」とか言うんとちゃうんか?」
「私達は、私達の専用機で出るのよ。私は専用機の白式で、ウルフンさんも専用機のスキュポスで 」
「なんや、敵を迎え撃つんか? 」
「押すのよ 」
「押忍なんか? 」
「そんなワイルドな挨拶じゃないわ。魔法戦艦グレートグレティの動力は魔法使いの魔法なの。一度浮いてしまえば滑空飛行するので楽になるんだけど、出発時には全員で全力で魔法を撃つ必要があるのよ 」
「なんか大変な飛行船やな 」
「最初だけよ。最初だけ頑張れば大丈夫な計算になっているわ 」
「まぁ、ええで。それで何処に行けばいいんや? 」
「甲板に向かいましょう。我々の専用機が待っていますわ 」
二人は甲板に向かった。甲板上にはウルフンのスキュポスとグレティ姫の白式があった。
「姫さんの白式はホンマに真っ白なんやな……」
「高機動重攻撃フライングポット白式。魔法ギガランチャーを武装しながら、通常のフライングポットの1.3倍のスピード。しかも雲の中に入ると迷彩になるわ 」
「う〜ん。なかなかの高性能やないか。だが、ワイのスキュポスも負けへんで 。
この取っ手は実は手なんや。フライングポットでありながら手があって武器を持ち替えたり、食料を運んだり出来るんやで。万能格闘型輸送艦スキュポス、接近戦なら負けへんで 」
グレティ姫はスキュポスの周りをグルリと一周した。
「ところで……裏側のその大きな虫の絵は何。何でリアルな虫の絵を描いているのかしら。触角やら何やら気持ち悪いんですけど 」
顔が青ざめるウルフン。
「ワ、ワイのスキュポスの製作者がマッドなサイエンティストで……」
「仕方ないわね。なんか怖いので離れて飛んでもらえるかしら 」
「くぅ〜っ、アイツの所為で、ワイがなんでこんな目に……」
「ま、良いわ。それより乗って出発しましょう 」
二人はそれぞれの専用機に乗って発進した。少し離れた場所に浮いて魔法戦艦グレートグレティの様子を伺う。グレティ姫の指示で艦内放送を艦外にも聞こえるようにしてあるのだ。そして黒衣の声が聞こえてきた。
「総員配置完了、離陸魔法準備……」
「黒衣はん、喋れたんやな……かなり若い声やないか……」
「魔法発射口オープン!! 」
魔法戦艦グレートグレティの船体のあちこちに穴が空いて行く。
「なんや、なんや。水が入って沈んでしまうで 」
「大丈夫よ、その前に飛ぶから 」
「セット!! 」
船体のたくさんの穴から、たくさんの手が出て来る。
「魔法戦艦グレートグレティ、発進します!! 」
穴から出て来た大量の手から爆炎魔法や風魔法が発せられて、ゆっくりと浮かび上がって行く魔法戦艦グレートグレティ。
「それじゃあ押すわよ。魔法発射口の無い場所が、押すための場所があるわ。私はあそこが押す場所なので、ウルフンさんはあちらを押してもらえるかしら 」
「わかったで 」
ギュイ〜んと指定場所に飛んで行った二人は、専用機の出力を上げて上へと押して行く。
しかし……
「くっ……なんちゅう重さなんや。ワ、ワイのスキュポスが押されている? 」
「しゅ、出力低下、ふ、船が落下して……」
黒衣の呟きが船外に漏れる。
更に高度を落とす魔法戦艦。
「諦めちゃダメよ、黒衣さん、ウルフンさん、みんな!! 」
グレティ姫の声が響き渡る。
「そんな時こそ……ブレインマッスル〜 」
「『「『「ウィザーズ」』」』」
全員が心を一つにして雄叫びを上げた。
「ウォオオオオ!!! 」
「ウォオオオオ!!! 」
「ウォオオオオ!!! 」
「ウォオオオオ!!! 」
「ウォオオオオ!!! 」
「ワイも頑張るで〜!!! 」
グングンと高度を上げる魔法戦艦グレートグレティ。雲を突き抜け更に更に上昇する。
「高度33000ft (10000m)到達。滑空飛行に移ります。エンジン班A以外は船底から出て所定の配置について下さい 」
「もう大丈夫だわ。ウルフンさん。船内にもどりましょう 」
「了解やで 」
ウルフンとグレティ姫は船内に戻って行った。