ブレインマッスル ウィザーズ編3
「試合開始!! 」
審判役の隊員が合図を出した。
ブーマー隊長代理は両手を大きく広げる。身体を大きく広げて威嚇する獣のようだ。
「ふぅううう〜」
ブーマー隊長代理の口から深い呼吸が漏れる。
警戒したのか動かないウルフン。
その時だった。
ダダダッ
黒ずくめの何者かがブーマー隊長代理の後ろに駆け寄る。その手にはキラキラと輝く何かがあった。
ダダダッ!!
「とうっ!! 」
黒衣に駆け寄ったウルフンはキラキラ輝く兜を奪い取って走りさる。
「なんだと!! 」
「装着!!」
兜を被るウルフン。すかさず、手を後方に伸ばしながらブーマー隊長代理に向けて走りだす。
「ブレインマッスル〜 」
加速しながら叫ぶウルフン。
「……」
唖然として声の出ないブレインマッスル ウィザーズ。
「ウィザーズ!! 」
飛び出して胴体に頭突きをかますウルフン。
ドガッ!!
「ぐえっ!! 」
ブーマー隊長代理はくの字に胴体を曲げて、悲鳴を上げて倒れこんだ。
胸を張りブレインマッスル ウィザーズを見渡すウルフン。
「これが百戦錬磨の戦士の力や。単純な攻撃を繰り返したら、相手に逆手に取られてしまうんや 」
「くっ……なんて事だ。我々の努力は無駄だったのか…… 」
フラフラしながら立ち上がろうとするブーマー隊長代理に手を差し出すウルフン。
「そんな事は無いんや。Cランク魔法使いがAランクのモンスターを倒すまで成長したのは大したもんやで。しかしワンパターンはダメなんや。ワンパターンは思考停止と同じなんや 」
ウルフンは立ち上がったブーマー代理を見つめる。
「ブーマーはん。あんさんはワイの予想外の行動に思考が停止してしまったんや。姫さん、ワイにブレインマッスル ウィザーズを3日間預けてくれへんか。ワイがブレインマッスル ウィザーズを真の戦う集団に変えて見せるんやで 」
グレティ姫はウルフンを見て、そしてブレインマッスル ウィザーズを見渡した。
頷くブレインマッスル ウィザーズの面々。
「わかったわ、ウルフンさん。貴方をブレインマッスル ウィザーズの臨時コーチに任命するわ。南部都市サウザー救援の出発は3日後。それまでの時間、彼らを鍛えて上げて下さい 」
「あんがとな、姫はん。大船に乗ったつもりで待って
いるんやで 」
「うふふ、お願いしますね、ウルフンさん。黒衣さん。ウルフンさんのお手伝いをお願いしますね 」
黒衣は姫様の前で片膝をついて頷いた。
「よっしゃ!!それじゃあ、行くで!!
ブレインマッスル〜!! 」
「『「『「ウィザーズ!! 」』」』」
皆の声と心が重なりあった。
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3日後、グレティ姫は調練場に赴いた。出発前にウルフンによる特訓の成果を見る為である。
「え〜っと、何なのかしら?これは……」
言葉に詰まるグレティ姫。
グレティ姫の前に勢ぞろいするブレインマッスル ウィザーズ。
ウルフンが黙って左手を上げる。
ブァサッ!!
『 頭戦士 』
『身体軍師』
の旗が左方で上がる。
「ブレインマッスル〜 」
隊長代理の大声が響き渡る。
『「『「『ウィザーズ!! 』」』」』
総勢100名を超える隊員のハモリが調練場に響き渡った。
「知っているわ……私が聞きたいのは、何で全員がキラキラ光る兜を被っているかって事よ 」
ブーマー隊長代理が前に出た。
「我々は、あの日、姫様が帰られた後に反省会を実施しました。ウルフン殿は『何でワイに負けたのか、自分達で答えを見つけるんや 』と言いました 」
俯くブーマー隊長代理。
「私達は皆で考えて悩み抜きました。それでも答えが出ませんでした。そんな時にウルフンコーチがヒントをくれたのです。
準備不足や ……
私達は気がつきました。何で最初から兜を被っていなかったのかと……」
「まぁ、確かに途中から被る理由は無いわね。いや、何で被ってなかったのかしら……」
「そういう事や。仕事の成果は事前準備で決まるんや。最初から兜を被っていれば手間を一つ省けるんや。それにチームプレイで戦う事も出来る。まさに新生ブレインマッスル ウィザーズなんや」
「まぁ、いいわ。それでは南部都市サウザーの救援に向かいましょう 」
グレティ姫とウルフン、そしてブレインマッスル ウィザーズは南部都市サウザーの救援に向かった。