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マッドマキシマム編4

 ばぁやは面白そうにシュラオンを見る。傲然と見返すシュラオン。室内は異様な緊張感に包まれた。


「ニャア 」


「おならが止まらなくなるシュラオンを、皆が見たいと言っているのですじゃ 」


 皆が、違う違うとブンブン首を振る。


「うぬの攻撃は効かぬ。効かぬわけがあるのだ 」

 周りを一切気にしないシュラオン。


「攻撃ではないのですじゃ。これはチートスキル、最強スキルの一つなのですじゃ 」


「ニャア 」


「最強のおなら使い〜追放された猫とばぁやは、最強スキルで無双する。今更止めてと頼まれても、もう遅い〜にタイトル変更したいのですじゃ 」


「ニャア 」


「テッドが居ないとな……ツッコミ役が居ないので、伸び伸びと出来るのですじゃ 」


 ダメだ……空気を全く読まない二人を止める術が無いと絶望する幹部達。


「シュ……シュラオン様 」

 スキンヘッドにモヒカン風の入墨を入れた男、リッキーが震えながら立ち上がる。


 皆の視線がリッキーに集まる。


「止めて下さい。3日3晩、3日3晩おならが止まらなくなるんです。大変な事になるんです、ばぁやに謝るまで止まらなくなるんです……」

 涙ぐむリッキー。


 そして一人の男が意を決して手を上げる。その男の髪型は、前頭部からV字に後方に伸びた二本のモヒカンが、螺旋状に捻れている非常に珍しい物だった。


「ダメだ、マーコゥル君。君はまだ3席だ。この会議で発言出来るのは副隊長以上の役職者。君には発言権は無い。モヒカンの道に外れる行為だぞ 」

 シルヴァルトが心配そうに注意する。


 黙って手を上げ続けるマーコゥル。


「そうだ。モヒカンの道を外れた男は、モヒカンを剃られて、生え揃うまで謹慎になってしまう。魔族領侵攻作戦に参加出来なくなるんだぞ。一緒に故郷の連中を助けに行くんじゃなかったのかよ!! 」

 月紅(ゲッコウ)が激昂する。


 それでも手を上げ続けるマーコゥル。


「発言を許す 」

 シュラオンはマーコゥルの目を見た。


「わ、私は昔、医学の道を目指していました……」

 マーコゥルは訥々と語り始める。


「私はリッキーさん達の看護をしていたんです。そこで気がついたんです。リッキーさんのおならは臭い。すごく臭いんです……」


「マーコゥル君、き、き、君はそんな事を言う為に……」

 呆れ顔のシルヴァルト。


「違います。リッキーさんは立派な男です。魔族領侵攻作戦に備えて身体を鍛えるだけでは無く、プロテインを多く摂取して効率良くトレーニングしているんです。そしてシュラオン様もリッキーさんとトレーニング仲間なのです……」


 皆の視線がシュラオンに集まる。

 シュラオンは黙って頷いた。


「そして二人とも野菜が嫌いなのです……」


「ま、まさか……」

 愕然とするシルヴァルト。


「はい、そうなんです、シルヴァルト様。過剰に摂取されたプロテインは腸で分解されて臭いおならを作ります。それを抑えるのは野菜に含まれる食物繊維なのですが……」


「シュ、シュ、シュ、シュラオン様、今の話は? 」

 シルヴァルトがシュラオンに問う。


「うむ、事実だ。俺には野菜は必要が無い。獅子が野菜を食うか?虎が果実を食うか?それが答えだ 」


「ニャア 」


「なになに……あなたは人間だ、と言っているのですじゃ 」


……猫が正しいと思う隊員達。


 シュラオンに皆の冷たい視線が突き刺さる。


「むぅ……やるではないか猫。すまぬ、マーコゥル。俺が修羅でありすぎたばかりに迷惑をかける。しかしだ……」


 シュラオンは皆を見渡す。


「俺達はセントラルに舞い戻り、大魔王エタールやミズガルノズの大蛇を始めとした怪物達と向かい合わねばならぬ。これから進むのは戻る事の出来ぬ修羅の道なのだ。おならを恐れて逃げ出す事は出来ぬ 」


 シュラオンは強い目で皆を見る。


 バンッ!!

 会議室の扉が閉まる。閉めたのは覆面マスクをした金色のモヒカンの男。モヒー・カーンと区別する為に黒髪を金色に染めた男。


「3号副長!! 」

 皆の視線が3号に集まる。


「シュラオン、野菜が嫌いなのはお前の間違いだった。しかし逃げ出す事が出来ないというのは正しい。

 地獄を見るなら共に見よう。俺の命運はとっくにお前に預けてある 」


「俺もだ!! 」

「おう!副長のいう通りだ!!」

「一緒に地獄を見ようぜ!! 」

「僕も付き合おう 」


 皆が出入口の扉の前に立ち、ばぁやと猫を逃げられないようにする。シュラオン様のおならが止まらなくなるのであれば、ばぁやと猫も一緒に味わえばいい。


 3号は口を軽く緩ませて、小さく微笑んだ。






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