マッドマキシマム編3
「た、隊長……まさか……」
リッキーの息が止まる。
「そのまさかだ。覚悟を決めろよ、おまえら 」 ニヤリと笑うその手には、モヒーカッターが握りしめられていた。
「くらえ!!モヒーカッター!! 」
大きく振りかぶってモヒーカッターを投げつける。グルグルと回りながらドラゴンゾンビに向かうモヒーカッター。ドラゴンゾンビの大きさと比べると、あまりに小さい。
クルクルクルクル……カン!!
一頭のドラゴンゾンビの背中に当たったモヒーカッターは乾いた音を立てて落ちていった。
「あぁ〜 」
「あぁ〜 」
「あぁ〜 」
隊員達から漏れる溜息。
「だめだ……モヒーカッターの威力では傷一つつけられない。つけられるはずが無い……」
「けっ……何もわかっちゃいねー 」
モヒーカーンは右手を前に突き出して、親指を立てて手を握った。右手からうっすらと光の線がモヒーカーカッターに向けて伸びて行く。
そして、モヒーカッターにつながった。
「モヒー……ダイナマイト!! 」
モヒーカーンは見えないスイッチを押すように、親指を下ろした。
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2ヵ月前のマッドマキシマム本部
「なんだ!ばばぁ!!ここがどこだか、わかってんのか!! 」
バキッ!!
「ここから先は誰も通さんぞ!! 」
ドカッ!!
「何だ!貴様ら!! 」
ボコッ!!
「ニャア」
グェッ!!
「侵入者は2人だ!!やっちまえ!! 」
「いくぜ!! 」
「死ねや!! 」
ドカッ!バキッ!グキッ!ドカッ!
コツコツコツ……
「我が名はアーガイ!! 」
「我が名はウーガイ!! 」
ドゴッ!バキッ!!
コツコツコツ……
「この扉の先ではシュラオン様達が会議中だ。通さんぞ!! 」
グェッ!!
ギィッ……扉がゆっくりと開く。
中ではシュラオンと幹部達が魔族領侵攻作戦の最終チェックをしていた。
コツコツコツ……
「何だ!!ばばぁ!!幹部会の最中にカチコミとはいい度胸だ!! 」
赤い巨大なモヒカンの男が怒鳴りつける。
シュラオンは座ったまま、ばぁやを見据えて動かない。ばぁやは涼しげな目で幹部を見ている。
「ニャア 」
「はっ!!死にてえのか!!ばばぁ!! 」
「ダメだ!月紅君。君はばぁやの罰を知らないのか? 」
シルヴァルトが立ち上がって止めに入る。
「何だと……」
「先月、このばぁやが来た時に攻撃した者には恐ろしい罰が当たったんだ。
ある者はゲップが止まらなくなり、ある者はオナラが止まらなくなり、ある者はう……」
「そんなバカな!! そこで倒された奴らは別に……」扉の外を見る月紅。
「直ぐじゃない……直ぐじゃないんだ……」
「ジャスト3時間後ですじゃ 」
月紅は青ざめて後ろに下がった。
「ニャア 」
「そうですじゃ 、そうですのじゃ 」ばぁやは懐から一冊の本を取り出した。
「餞別ですじゃ 」ばぁやはそう言うと、本をモヒーカーンに向けて放りなげる。放物線を描いた本は、モヒーカーンの手の中に入った。
「呪いの覆面マスク〜取り扱い説明書だと……」モヒー・カーンは表紙を見て小さく呟いた。
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ドガガガガガガガガーン!!
モヒーカッターの大爆発が1頭のドラゴンゾンビに直撃して、一瞬で崩壊させた。残りの2頭も燃え上がる爆風に巻き込まれる。
燃え上がるドラゴンゾンビ達から目を離さない部下達から離れて座りこんだモヒー・カーン。元々少ない魔力を今の技でほとんど奪われてしまったのだ。
「眠いな……」
座りこんだモヒー・カーンは目を閉じると、直ぐに眠ってしまう。そしてばぁやが来た時の続きを夢で見ていた。
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「帰るのですじゃ 」
「ニャア 」
帰ろうとするばぁやと猫。
動けないマッドマキシマムの幹部達。
「待て……」
シュラオンがゆっくりと立ち上がった。
睨み合うばぁやとシュラオン。
「うぬの攻撃は効かぬ 」
シュラオンが口を開いた。




