マッドマキシマム編1
セントラル大陸北西部。
シュラオン率いるマッドマキシマムは北部総督 獅子王の率いる軍と激突、苦戦の末に撃破した。その後、大魔王軍傘下の都市や村を解放していた。
「ヒャッハー!! 」
「ウッヒー!! 」
小さな村にワラワラと現れる武装モヒカン集団。
「逃げろ〜!! 」
「こ、殺される〜!! 」
逃げまどう人々。
村の北門から逃げようとする人々の前に、真紅の巨大なモヒカンの男が現れた。3メートルを超える身長の半分近くはモヒカンだ。
「この地域は我々、マッドマキシマムが頂いた。それが気に要らぬ者は出ていけ!! 」
1人の村人が真紅のモヒカンの横を走り抜けて出て行こうとすると、真紅のモヒカン男は村人をむんずと捕まえた。
「ダメだ、おっさん。北の門を通すわけにはいかねえんだ。この門はマッドマキシマム4番隊隊長 月紅様の持ち場だ。逃げるなら南門から出てくれや 」
月紅は村人を村内に放り投げる。
「さぁ、とっとと南に逃げるんだ !! 」
月紅が村人を見渡してガンを飛ばす。
「ヒィッ!! 」一斉に逃げ出す村人達。その後には数人の老人達が残っていた。
「なんだ。爺さん、ばぁさん。逃げねーのか? 」
月光が睨みつける。
「わ、儂達はもう年で足腰も弱っておる。遠出など出来ぬ。この村に残るわい……支配者が誰であれ黙って従うだけじゃ……」
暗い顔で肩を落とす老人達。
「そうか……だがダメだ。俺たちマッドマキシマムの支配地域に弱者はいらねーんだ。弱者に食わす飯は無い 」
「月紅様……」
螺旋状の2本の立派なモヒカンを持つ男が前に出た。モヒカンは前頭部からV字状に後方に向けて生えている。モヒカンから目を離して顔を見ると、濃いサングラスで表情が隠されていた。
「どうした、マーコゥル副隊長 」
「モヒーカーン様が言っていた、あの刑罰を試してみませんか 」
「さすがだな、マーコゥル。俺もそう思っていたところだ。よし、お前ら。この爺さん、ばぁさんをロープで縛って馬車に繋げろ!! 」
「はいっ!! 」
隊員達は老人達をロープで縛っていく。そして巨大なトゲトゲのついたゴツい馬車にロープを繋いだ。
マーコゥルが馬車の扉を開くと、室内は真っ赤に染められていた。
「さぁ、乗るんだ。地獄への乗り合い馬車だ。悪いな。終点までは降りられない片道切符だ。どこに着くかはお楽しみだ 」
バタン!!
老人達が乗り込んで、マーコゥルが馬車の扉を閉める。ショートモヒカンの御者が馬車を発進させる。
「元気でな……」
マーコゥルは小さく呟いた。
・
・
・
・
ガタンガタンと馬車は街道を走り続ける。周りには南に向かう人々が大勢いる。お爺さんは窓の外を見てため息をついた。
「ばぁさんや。儂らはどこに連れていかれるのかのう? 儂達はあの村に残りたかったんじゃがのう 」
「爺さんや。月紅とやらの腕を見たかの? 」
「腕とな? 」
「わたしゃ、見たんじゃ。月紅の腕にWの傷があったのを 」
「なんじゃと。その傷は……まさか隣の家のケイン坊と言うのかの 」
「そうじゃ。ケインは幼い頃に猫にひっかかれて左腕にWの傷がある 」
「偶然じゃろう。ケインは大魔王軍に対する抵抗軍に入って、取り締まりに捕まって死刑になったはずじゃ……」
「Wの傷の上にホクロが2点あったんじゃ……」
「ま、まさか……」
お爺さんはケインの傷を思い出した。
・・
. w
「そうじゃ、人面腕じゃ。Wの傷の人間は他にも居るかも知れぬ。じゃが人の顔に見えるのはケインだけじゃ。死んだはずのケインが生きておったという事は、儂らの孫も……亡くなった一人娘の残してくれた、たった一人の儂らの孫も生きておるのかも知れぬ 」
「ま、まさか? 」
「そうじゃ、ケインと親友で抵抗軍に入って処刑されたはずのパッサンも生きておるのかも知れんのじゃ 」
『元気でな……』 マーコゥルの言葉の意味がわかり、お爺さんの目から涙が溢れ出す。
「生きて……生きておったのか 」
「お爺さん、気が早いんですじゃ。これから探す必要がありますぞい 」
「大丈夫じゃ。さっきの副隊長のマーコゥル。あやつが儂らの孫のパッサンじゃ。馬車が出る時に、「元気でな……」と呟いたんじゃ。ばぁさんの言葉で意味がわかったんじゃ 」
「え……? 」
絶句するおばあさん。
「パッサンは昔から『オンリーワンに俺はなる 』って言っておった。あの二本の螺旋のモヒカンこそが、オンリーワンの証じゃ 」
「えーっ!! 」
おばあさんの叫びが街道沿いに響き渡った。
ストックが少し出来たので、また週2回更新に戻したいと思います。今週はもう1回更新致します。