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対ドラゴン戦

別の勇者パーティのお話です。

「喰らえい!!光魔法ライトニングアロー!!」

 魔法使いの腕の先から複数の光の矢がドラゴンに向かって放たれる。


 ドンドンドンと命中する中で、


 ドラゴンの背後に回った剣士が、ドラゴンの首筋に向けて大剣の刃を振り下ろす。


 ガチーン!!!


 大きな音と衝撃が発生するが、ドラゴンは微動だにしない。剣士は地上に落下するも無事に着地。


 それを見たドラゴンは、視線を剣士に向け、炎のブレスの発動体制に入った。


 それをさせじと、ドラゴンの足元に紛れこんだ戦士が、ドラゴンの足の小指に大鎚の渾身の一撃をかます。


「せいやーっ!!!」


 ドゴーーーン!!!


「グギャアアアア」


 流石にバランスを崩したドラゴンは、ブレスを大きく外してしまう。


「チャンスね!!天極補助魔法 攻撃力10倍!!」


 聖女は剣士と戦士に短時間ながら攻撃力が著しく上昇する魔法を掛ける。


 同時に魔法使いも

「今だ!絡み付け!! サンダーボルトチェーン!!」


 雷光がドラゴンの身体に纏わりついて動きを止めた。


 アタッカーの2人がドラゴンに駆け寄って、首元に飛び込んで必殺技を決めに入る。


「行くぞ!!10倍 旋風剣(せんぷうけん)

「トドメだ!!10倍 圧殺大鎚(あっさつおおづち)!!」


 勝った!4人がそう確信したのは一瞬だった。


「見事だ。人の子らよ……」


 ドラゴンは静かな声で語り出して、光り輝くオーラを放出した。


 オーラは時と共に膨れ上がり、サンダーボルトチェーンを弾き飛ばした。


 そして、ドラゴンのオーラと弾けたサンダーボルトチェーンが、猛烈な勢いで剣士と戦士をふき飛ばす。


「ば、馬鹿な儂のサンダーボルトチェーンが弾けるなど……」


「褒美だ。竜の王たる力の一片を見せてくれよう 」


 竜王は首を天に向けて顎を開き真っ赤なブレスを吐きだし続けた。


 膨大な熱量に紅く染まる世界。


「駄目よ。あれを食らったら皆んな消し飛んでしまう……」


 竜王の首が少しずつ降ろされて、勇者パーティが消し炭になるギリギリで奇跡は起きた。




「ちょっと待った〜!!」


 竜王は口を閉じてブレスを抑える。

「どうしたのだ。メガネ君 」


 メガネを掛けた若い男が現れた。


「どうしたじゃないですよ。竜王様。あれほど本気を出しちゃ駄目だって言われていたじゃないですか。女王様に叱られちゃいますよ 」


「いやー、すまん。すまん。この者らが中々やるものでな。つい本気で向かい合いたくなったのじゃ 」


「グワァーとか言ってましたしね 」


「それを言うな。いくらメガネ君が我が妃の一族の者とは言え、たたでは済まさんぞ 」


「そう、それですよ。竜王様 」


「ん?」


「竜族も全て戦いで決めるのでは無くて、人間のように金やルールで解決出来る問題は、金やルールで解決しようと決めたじゃないですか 」


「そう言えばそうじゃったな。毎度、毎度、戦いで破壊して、最初から作り直すのは大変じゃからな 」


「と言う事で竜王様。この場は僕に任せてもらってよろしいですか?」


「うむ。任せたぞ。メガネ君。儂は先に帰る 」


「ハッ。畏まりました。竜王様 」


 竜王は(おもむろ)に翼を広げると空に舞い上がり、天高く飛び立って行った。


 残された勇者パーティとメガネの男が向き合う。


 魔法使いの老人が震えながら口を開く。

「儂たちを殺す気か?」


「そんな事はしないよ。僕達竜族は野蛮じゃないからね。ちょっと君達のパーティの身分証明書を見せてくれるかな?」


 リーダーの剣士が黙って証明書を差し出す。


「ふーん。パーティレベル47。名称はマカデミアナッツか……好きなのかい?」


「俺たちはダンジョンで遭難した時に、一袋のマカデミアナッツに命を救われたからな。」戦士が答える。


「そうか。じゃあ君達は今日からドラゴンラブに改名だ 」


「えーっ?」

「えーっ?」

「えーっ?」

「えーっ?」


 マカデミアナッツ4人のハモった声が山中に響き渡った。




「ふっふっふ」メガネ君は嬉しそうに笑う。


「かつてマカデミアナッツに救われた命が、今ここでドラゴンの愛によって救われた。 正にドラゴンラブじゃないか 」


「いや、そんなに簡単に変えれる物じゃないだろう。大変な手間と手続きがかかるんだぞ。」剣士がウンザリした表情で答える。


「そうじゃ。それに儂らはこの名前に愛着もある。今更変えたくもないのう 」


「そうよ。この名前は王様連盟によって正式に承認されたもの。変更なんて出来るのかしら?」


「そうだ。俺は……」


「シャーラップ (黙りなさい)!!」


 戦士の発言をメガネ君が遮る。


「君達は何もわかっていない。きちんと勇者株式の契約書類を読んだのかい?」


 メガネ君は畳み掛ける。


「契約書の223条の第2項にはこうあるはずだ。 "ドラゴンと戦闘して負けた場合は、パーティの名称は変更される事がある、と」


 剣士は魔法紙で出来た契約書を召喚し、必死にページを捲るが、メガネ君は追撃をかます。


「275条の第3項にはこうあるはずだ。

 "ドラゴンと戦闘して負けた場合は、持ち株の半分を譲渡する場合がある、と 」


「どうじゃった?」魔法使いの問いに、


 青ざめた顔で剣士は答える。


「奴の言う通りだ 」


「メ、メガネさん。なんで貴方がそんな事を知っているのよ?」


「フッフッフ。僕は竜王様の代理の外交官として、王様連盟の勇者株式システム結成に参加しているからね 」


「なんじゃと!!」


「だいたい何で王様連盟なんだい。普通は王国連盟とかになるはずじゃないのかい?」


「そういえば、そうじゃな 」


「王国連盟だと、国境の曖昧な竜王様とか、領土の無い一部の者達が参加出来ないからさ 」


「一部の者達?」剣士が怪訝な表情で呟く。


「僕に言えるのは、ここまでさ。ま、とにかく株式を半分譲渡(じょうと)して頂いて、名前を変えさせて頂くよ 」


「場合があると書いてあったな。では断る場合はどうなるんじゃ?」


「本気の僕と戦って頂いて……全てを失う事になる 」


 ・

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 ・

 ドラゴン退治に向かったAランクパーティのマカデミアナッツは冒険者ギルドに失敗を報告。


 同時に、ギルド経由でパーティ名称の変更を申請する。


 マカデミアナッツからドラゴンラブへの変更申請に、世界は騒然とするも承認される。


 そして株価は暴落した……




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