サラリーマンと女子高生の恋人~女子高生の彼女は小悪魔じゃなくて悪魔です~
「俺の今日の運勢は? おっ、一位じゃん」
俺は占いを見て家を出た。
これが俺の毎日の日課だ。
俺は普通のサラリーマン。
どこにでもいる、朝に出勤して夕方に帰宅するサラリーマン。
通勤ラッシュ中の電車に乗る。
俺の目の前には女子高生が俺の胸に顔を埋める形になっている。
抱き締めたくなってしまう。
心臓がバクバクしている。
女子高生に聞こえているのではないかと心配になった。
少しすると女子高生は俺の胸から顔を離し、俺を見上げた。
なんと可愛い顔の女の子なんだ。
自然に上目遣いでたまらない。
俺はまだ若いがおじさんの気持ちが分かった気がした。
女子高生ってこんなに可愛いかったかなあ?
「おじさん。心臓の音がうるさい」
「おじさん?」
女子高生は俺をおじさんと言った。
「俺、まだ二十代前半なんだけど?」
「私からしたらおじさんだよ?」
この女子高生は可愛い顔をしてひどいことを言う。
しかしその後、おじさんなんて呼ばれたことを忘れるほど嬉しいことを言った。
「私はおじさんのこと好きよ」
「えっ」
「おじさん格好いいもん」
「えっと、俺を騙そうとしてる?」
「何でそんなこと私がするの?」
「だって女子高生だし」
「ひどい。私が勇気を出して言ったのに」
彼女は目に涙を溜めて言った。
この涙も嘘なのか?
「ごめん」
俺は彼女の頭をポンポンと撫でた。
「そのごめんは何に対してのごめんなの?」
「君が勇気を出してくれたのにそれに対しての俺の対応が悪かったよ。ごめん」
「じゃあ。付き合ってくれる?」
「それは、君は可愛いけど女子高生だよ? 俺は大人だし」
「年齢って関係あるの?」
「関係ないけど、俺には立場と周りの目があるからね」
「大人になるとそんなことも考えながらお付き合いするの?」
「俺はそうだね。他の人は知らないけどね」
女子高生はダメでしょう。
彼女は大人の男が珍しいから勘違いして好きだと思ったんだ。
「それなら私が制服じゃなければいい?」
「そんな問題じゃないよ」
「何で? それならどうすればおじさんと付き合えるの?」
「俺が君を本当に好きになればかなあ?」
「分かったよ。それならおじさんが私を好きになってくれるように頑張る」
彼女はそう言って笑った。
彼女の気持ちは嬉しいが俺には彼女と付き合うということはないと思う。
女子高生は面倒だと思う。
ワガママ言って俺を困らせたり、毎日の連絡がないと泣かれたりするのはごめんだ。
彼女は可愛いけど好きにはならない。
「おじさん。仕事はいつ終わるの?」
「五時頃かな?」
「それなら一緒に帰ろうよ」
「一緒に帰るって、どうやって?」
「連絡してよ。同じ電車に乗れば一緒に帰れるでしょう?」
「それの何が楽しいの?」
「好きな人と一緒にいれば何でも楽しいの」
彼女は本当に俺のことを好きみたいだ。
彼女には早く諦めてもらわないと。
そう思いながらも彼女と連絡先を交換した。
彼女はまた後でと言って先に電車を降りた。
俺は彼女の降りた次の駅で降り、会社へ向かった。
「女子高生ってあんなに可愛いのか?」
「何だよいきなり」
俺は同期の同僚に言った。
「女子高生が俺を好きだって」
「お前それは騙されてるって」
「だよな? 女子高生が俺みたいな普通のサラリーマンを好きになる訳ないよな?」
「当たり前だ。相手にするなよな」
「分かった」
俺は女子高生の彼女に連絡をせずに帰りの電車に乗った。
どうせ彼女も帰っているだろう。
次の駅で電車は止まる。
人の出入りがあった後、ドアが閉まる。
一応、確かめる為に駅のホームを見る。
俺は見つけてしまった。
彼女が駅のホームの椅子に座っている。
俺の連絡を待っているのか、携帯を握りしめている。
俺は彼女から目を離せなくなっていた。
俺を待っているのか?
あんな可愛い女子高生が?
すると彼女が顔を上げて俺と目が合った。
彼女は目を見開いて驚いている。
俺の元にかけよってくる。
しかし、電車は進み出す。
彼女は目に涙を溜めながら電車を追いかけている。
俺はすぐに携帯を出し、彼女にメールを出した。
『次の駅で待ってるから泣かないで。ごめん。だから俺の所においで』
彼女は俺のメールを見てうなずいた。
俺は次の駅で彼女を待った。
彼女は駅に着くと俺の所に走って来た。
そして俺に抱きついてきた。
俺はサラリーマンで彼女は女子高生。
周りの目が気になる。
「分かったから。離れようか?」
俺はそう言って彼女から離れる。
彼女は悲しそうな顔をする。
そんな彼女が可愛いくて俺は彼女の頭をポンポンと撫でた。
「おじさん。私を子供扱いしてるでしょう?」
「おじさんなんて言う女子高生は子供扱いしていいんだよ」
「おじさんって言われて怒ってるの? おじさんの方が子供じゃん」
「二十代前半におじさんはみんな怒るよ」
「そうなの? それならなんて呼べばいい? お兄さんとか?」
「恋人を呼ぶように呼んで」
「えっ」
「恋人は嫌だった?」
「嬉しい」
彼女はそう言って笑った。
「ところで、何で俺のこと好きになったの?」
「それはね、あなたがいつもお年寄りの方に席を譲っているのを見て、優しいなあって思ったの」
「誰でも譲るだろう?」
「あなたは絶対に譲ってたの。年寄り扱いするなって怒るおばあさんにも絶対に席を譲ってたの」
「やっぱりお年寄りには座ってほしいからね」
「そんな優しくて格好いいあなたを好きになったの。だからあの日、あなたの胸に顔を埋めちゃった」
「えっ、あれってわざとだったの?」
「当たり前じゃん。あんなこと好きな人以外にする訳ないよ」
「女子高生ってやっぱり怖いな」
「え?」
「君ってそんなに大胆だったんだね」
「それはあなたにだけだよ」
彼女は顔を赤くして言った。
俺は普通のサラリーマン。
彼女は可愛い女子高生。
そんな俺と彼女は恋人になったばかり。
少し、早く二人のキュンキュンストーリーが終わったので番外編を書こうと思います。
もう少しお付き合い下さい。
俺は普通のサラリーマン。
彼女は可愛い女子高生。
俺達は恋人だ。
なので、彼女が俺の家へ泊まりに来た。
彼女は嬉しそうに俺の家へ入って来たが俺は心配で仕方ない。
彼女に手を出さないと決めているが、彼女は可愛い。
だから大丈夫なのか心配だ。
「ねえ、映画見ようよ」
「そうだね。何がいい?」
「恋愛映画」
恋愛映画だと?
そんなムードたっぷりなものを見て俺は大丈夫なのか?
彼女は恋愛映画をプレイヤーにセットしている。
まあ、近づかないようにすれば……。
近すぎる。
彼女は俺の肩に頭を乗せて映画を見ている。
彼女は映画に夢中だろうが俺はもう、映画の内容なんて頭には入ってこない。
彼女は小悪魔なのか?
違うな悪魔だ。
俺の決心を揺るがす悪魔だ。
そんなことを考えている間に映画は終わった。
「楽しかったね。感動しちゃった」
「そうだね」
何も頭に入ってきていないから、内容なんて分からない。
適当に相づちをした。
「お風呂、入ろうかなあ」
「そうだね。先に入ってきな」
「一緒に入ろうよ」
「えっ」
「嘘だよ」
「大人をからかうなよな」
「からかってないよ? 本当は一緒に入りたいよ」
「ダメ。君は未成年の女子高生だから」
「あなたって真面目な人ね。私はいいのに」
「女の子が簡単にそんなこと言わないの」
「だって」
「ほら。キスしてあげるからお風呂に入ってきな」
そして俺は彼女のおでこにキスを落とした。
彼女は照れながらお風呂場へ向かった。
彼女がお風呂に入っていると思うだけで決心が揺るぎそうだ。
覗きたくなる。
また俺はおじさん化してしまった。
いや。
男なら誰でも思うことだよな?
今夜はまだまだ長いな。
頑張れ俺。
「上がったよ」
湯上がりの彼女は少し頬を赤く染めて色っぽく見える。
いかん。
ダメだ。
俺も入ろう。
「それなら俺も入ろうかな」
「私の入ったお風呂にゆっくり入って疲れをとってね」
私の入ったお風呂?
彼女は何故そんなことをわざわざ言った?
彼女のその言葉で俺は湯船に入るのにドキドキしてしまった。
やっぱり彼女は悪魔だ。
天使の皮を被った悪魔だと思う。
俺は風呂から上がり、脱衣所で着替えていた。
「ねえ、上がった?」
「うん」
「化粧水を忘れてるの。取ってもいい?」
「うん」
俺はズボンだけ履いて彼女を脱衣所に入れた。
彼女は顔を赤くして俺を見ている。
何?
「男の人の裸って格好いいね」
「えっ」
「程よく筋肉がついてて私、好きだなあ」
「何? 触りたい?」
「そっ、そんなこと言ってないよ」
「いいよ? 触るくらい」
「いいの?」
「うん」
彼女は遠慮気味に俺の腹筋を触る。
ん?
何だこの雰囲気は?
ヤバい。
これは俺の決心が揺れている。
彼女の顔は少し赤く、色っぽい。
彼女の耳にかかっている髪が落ちた。
俺は無意識に髪を耳にかけてあげる。
彼女の顔を見たくて。
「えっ」
彼女は驚いている。
そうだよな。
俺が彼女に触れることなんてほとんどないからな。
落ち着け俺。
「もういいか?」
「あっ、うん」
そして彼女は化粧水を取って出ていく。
ヤバい。
今のはヤバかった。
触らせるのは今日はやめた方がいいな。
そして二人でテレビを見た。
お笑い番組や、テレビドラマなど見ているとあっという間に今日が終わろうとしていた。
すると彼女が眠そうに目を擦っていた。
「眠い?」
「ううん」
彼女は眠くないと言うが、うとうとしていた。
俺は彼女を横抱きにしてベッドへ連れてった。
「眠くないのに」
彼女はまだそんなことを言っている。
もう、目を閉じているのに。
「ねえ、どうして私に手を出さないの?」
「えっ」
「私はちゃんといいよってサイン出してたのに」
「何それ?」
「私はちゃんとあなたの恋人として隣にいたいの」
「君はちゃんと俺の恋人だよ」
「だって私を子供扱いしかしないじゃない」
「それなら俺が君に手を出したら恋人なの?」
「えっ」
「違うでしょう? 好きだから恋人なんだよ」
「でも、あなたは言ってくれないもん。私が好きだって」
「そういうことか」
「えっ」
「君は言葉が欲しいの? 俺がどれだけ好きかっていう言葉が欲しいの?」
「うん」
「俺は君が好きだよ。今だって君に触れたくて仕方ないよ」
「触れていいのに」
「大切だから大事にしたいんだ。君を」
「私が大切?」
「うん。好き過ぎて俺の心臓は壊れそうだ」
「そうだね。最初の時も、映画を見てた時も。あなたの心臓はドキドキしてたよね?」
「知ってたのか?」
「うん。私にちゃんとドキドキしてくれてるのよね?」
「そうだよ。君はすごく魅力的で可愛いくて大切な恋人なんだ」
「大好きよ」
「俺も大好きだよ」
そして俺達は見つめ合う。
キスをしたくてたまらない。
でも、彼女を大切にしたいんだ。
「キスは大丈夫じゃないの?」
「えっ」
「今時、子供でもしてるよ」
「それはないだろう?」
「いいからして」
彼女は色気たっぷりの顔で俺に言った。
そんな大人ぶる彼女には本当の大人のキスをプレゼントしよう。
キス後、彼女は顔を真っ赤にして、
「変態」
と言った。
俺は普通のサラリーマン。
彼女はそれは可愛い可愛い女子高生。
そんな俺と彼女は今はまだ恋人。
読んで頂きありがとうございます。
キュンキュンするお話でしたか?
女子高生は小悪魔を通り越して悪魔でしたね。
楽しんで読んで頂けたら幸いです。