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双子の鬼姫  作者: yamainu
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茨の彫刻

 島は外輪山に囲まれていて、内側にある鬼の村から海は見えなかった。島の外を目にするには、どの方角であっても険しい山を一度越える必要があった。

 外輪山の周囲はほとんどが崖になっていて、たとえ小さな舟でも接岸できる場所はごくわずかに限られていた。そのうちの一カ所、海彦が舟をつけた場所に向かって、三人は歩いた。


 途中で、茨姫の彫刻場を通った。

 それは山の途中にあって、この島にはよくある火山性の蒸気がところどころ吹き出している場所の近くで、岩肌が広く露出していた。

 そこには六年前からずっと茨姫が続けている創作活動の結果が様々並んでいた。大小様々、出来映えも様々の彫刻が、岩場にたくさん並んでいた。

 初期に作られた物は、彫刻に興味もなく審美眼を誇るつもりもない蔦姫の目から見ても言い訳のしようもなく拙かった。鬼の子供が力に任せて岩を削って、それがたまたま、空の雲が何かに似る程度に何かの形を取ったかのよう。

 だがここ数年内の物は、まるで本職の彫刻家の作のようだ。

 あの妹が、よくここまで進歩したものだと思う。

 この精巧な出来映えの彫刻が、ほとんどまともな道具も使わずに作られたと知ったら、おそらく人間の彫刻家は驚くだろう。茨姫は、おおよその形は鬼の膂力で割って作るし、細かい部分は鉄よりも硬い鬼の爪で削る。途中の行程では簡単な道具を使うこともあるが、茨姫いわく、それは「爪がすり減りすぎると嫌じゃし」という理由だそうだ。「じゃが、最後の仕上げは自分で直に削りたいんじゃ。だから、最後は爪でやる」

 そうして作られた彫刻の題材の多くはこの島に住んでいる鬼や動植物を実寸大でかたどったものだが、中にいくつか、人間の少年の姿のものがあった。顔立ちを見ると、同じ人間を題材にしていることが見て取れた。

「何度見ても、美化されすぎていると思うね」

 海彦は、その彫刻の前に足を止めて言った。

「俺は、もっと生意気なガキだったと思う」

「ウチにはこう見えてたんじゃ。彫刻についての文句は聞かん」

 蔦姫も足を止めてその彫刻を眺めたが、いつも目に留まるのは、左腕だった。

 彫刻の少年の左腕。

 海彦にはもうない左腕。

「海彦、あなたは本当に鬼の娘を嫁にもらうつもりなのです?

 私たちは、軽い気分であなたの腕をもぎ取れる。

 ……。

 私が、あなたの左腕をそうしたように」

 びくっと、怯えたように、茨姫が表情をこわばらせた。

 蔦姫は続けた。

「それでもあなたは、イバラを怖がらずにずっと愛してくれるのですか?」

「……。

 昔のことだ。子供の癇癪であって、悪気はなかった。そうだろ?」

 海彦は、隻腕で茨姫を抱き寄せた。

 茨姫は、なされるがまま。「うぅ」恥ずかしそうに、だが、無抵抗。

 海彦は、蔦姫に笑顔を見せた。

「正直、いろいろ思うことはあったがね。

 長く恨みもしたし、恐れもした。

 けど、今はそんなことはない」

「そう」

 蔦姫は、どうでもいい話をしたというような冷たい顔でそっぽを向いた。

 内心では、思っていた。

 ああ、苛々する。


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