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ニーローは異世界でヒーローになりました。 作者:四羽
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第一話 大人がヒーローになりたくて何が悪い

 ヒーロー。それは誰もが夢見た正義の味方。バッタの改造人間や5人で戦う部隊、3分間だけ活動できる巨人など、この世界にはヒーローが沢山いる。

 子供のときに「将来の夢はヒーローになること」や「将来の夢は○○屋さんになること」と言っていても、成長して現実を見据え、大人になれば子供の頃の夢なんて忘れてしまう。子供の頃からの夢を大人になってから実現させることができる人はほんの僅かだ。

 人は誰でも1度は「夢」を持ち、その夢をどこかで諦めてしまう。そして人は、すぐに新しい「目標」を掲げる。「夢」はいつしか「目標」に変わり、自分で叶えられる範囲内でそれを叶えようとする。

 しかし世の中広く、中にはその夢を諦めようとしない人がいる。「夢」を「夢」のまま終わらせない人がいる。そしてその夢は、もしかしたら意外な場所や時代で実現されるものかもしれない。

◇◇◇

「よっしゃあ!完成!」

 この男性は城鉦雅紀(しろがねまさき)。日本に住む成人男性だ。

「夢にまで見た電撃装置・・・・・・これがあれば俺もやっとヒーローっぽくなれる!」

 彼は20代にして「ヒーロー」を目指している。他人(ひと)からすればなんとも馬鹿げた夢だが、彼は真剣だった。何せ、ヒーローを目指すために仕事を辞めたのだから。

「でも・・・・・・もう貯金残高が底をついちゃいそうだな・・・・・・」

 彼は「ヒーロー」という夢を掲げているが、所詮はただの「頭のいいニート」だ。そして彼の友人は彼のことを「ニートなヒーロー」を略して「ニーロー」と呼んだ。
 そして、この世界には「悪の組織」的なものは存在しない。存在したとしてもテロ組織が限界であろう。それなのに彼はヒーローであり続けようとしていた。

◇◇◇

 動物園のすぐ近くにある広場に向かい、自分の発明した装置を実際に使ってみることにした。

「よし!じゃあレッツトライ!」

 説明しよう。彼が完成させた拳銃型のこの装置の名は「電撃装置(エレキデバイス)」。引き金を引くことで対象に直流5000Vの電気を流すことができるのだ。
 しかもこれは充電の必要がない自家発電が可能のため、これのせいで電気代が上がることもないとても優れたものなのだ。

(ターゲットはあの空き缶!)

 引き金を引こうとした瞬間だった。目の前の(まと)を撃ち抜くことに集中していたため、彼には周りの声が聞こえなかった。

 ぐちゅ・・・・・・

「え・・・・・・?」

 突如、背中から腹に向かってなにか太いものが体内に入ってきた。

(なんだよ・・・・・・これ・・・・・・)

 背中に突き刺さり、腹を貫通したものの正体は、すぐ近くにある動物園から逃げ出してきた「バッファロー」の角だった。なんでバッファローが動物園から逃げ出せたのかは不明だが、とにかくバッファローの角は彼の胴体を貫いていた。

(ヤベ・・・・・・死ぬ・・・・・・)

 そう思ってからすぐに彼はその場で死亡。暫くするとバッファローは角を引き抜いて動物園の方に走って行き、残された彼の遺体の腹部からは千切れた臓物がこぼれ落ち、大量の血液を流していた。


◇◇◇


(あ~・・・・・・死ぬ前に本当のヒーローになりたかった・・・・・・あれだな、次に転生するときはヒーローとか悪の組織とかいう概念が存在する世界に生まれたいな・・・・・・)

 ――・・・・・・い!・・・・・・ろ!――

(なんだ?誰の声・・・・・・ってか待てよ、なんで痛みがない?)

 ――おい(あん)ちゃん!起きろ!大丈夫か!――

(まさか!)

 雅紀は壁に寄りかかり座っていた。目を開けるとそこは見知らぬ場所。周りを見渡せば見たことのない人達。そして目の前には筋肉質の男性。

「おい大丈夫か?見ねえ顔だが、あんた何者(なにもん)だ?」

(まさかここって・・・・・・!)

「異世界・・・・・・なのか?」

 バッファローに腹を貫かれたことで異世界転移した雅紀は、バッファローに感謝をしていた。

(異世界転移!万歳!)

◇◇◇

「マサキ?珍しい名前だな、どこの出身なんだ?」

 飲食店「エルファエロ」で料理を貪っている雅紀に質問をした筋肉質の男性。因みにこの料理は筋肉質の男性の奢りだ。

「日本ってとこなんだけど、多分知らないっしょ。あんたの名前は?」

「ふふん・・・・・・よくぞ聞いてくれた、俺の名はアンドリュー。誇り高き聖騎士(セイクリッド)の一員だ!」

 拳で胸を叩いたアンドリューだったが、さすがに痛かったのか一瞬顔がひきつった。

「セイクリッドってなんだ?」

「なんだ、そんなことも知らないのか?だとすればそのニホンってとこは相当田舎なんだな!はっはっは!」

 アンドリューの発言に僅かだが怒りを覚えた雅紀だったが、ここは敢えて抑えることにした。

「悪いけど、俺ここに来たばっかだからこの世界のことよく分かってねぇんだ。詳しく教えてくれないか?」

◇◇◇

 この世界はいくつかの国に分かれていて、それぞれの国に聖騎士(セイクリッド)と呼ばれる騎士達が存在する。聖騎士(セイクリッド)はこの国を守護するという使命を与えられている。それ故聖騎士(セイクリッド)のメンバーは、ある程度の強さを持っていなければならない。
 アンドリューは聖騎士(セイクリッド)の中でも結構強い方で、見た目も相当厳(いか)ついので初対面の人からは敬遠されがち。しかし人や動物に優しく、甘いものが大好きというアンドリューの本性を知ってしまった人は、たちまちアンドリューの好感度が上がる。

 現在雅紀がいるのは「アルシオ王国」という国で、4つの種族が共存している。最も数が多く頭がいい「人間族」。戦闘能力が高く、何かしらの動物の耳が生えた「獣人(じゅうじん)族」。戦闘能力は低いが様々な魔法が使える「妖精族」。少しだが魔法が使え、基本的に寂しがりな「魔族」。アンドリューの場合は獣人族だが、頭にバンダナを巻いているため耳が見えなかった。

「魔法・・・・・・どんなのがあるんだ?」

「よくぞ聞いてくれた、そんじゃあ見せてやる!おーいミーナ!マサキにお前の魔法見せてやれ!」

 会計口の椅子に座った金髪の女性に声をかけるアンドリュー。その声に反応したかのように、女性は椅子から立ち上がってマサキとアンドリューの座っている席まで歩いてきた。

「見せてやれって・・・・・・なに見せればいいの?」

 彼女はこの店の店主のミーナ。妖精族で街の人気者。ミーナは妖精族の中でも魔法に関しては一流で、10年前に起こった「世界対戦」でも惜しみ無く魔法を披露していた。とはいっても、実際に戦場に赴いた訳ではなく国防軍のメンバーとして参加していた。

「そうだな・・・・・・じゃあ"シェリーダ"頼む!」

「了解よ」

 そう言うとミーナは、何も入っていないコップを厨房から持ってきて雅紀の目の前に置いた。ガラス製なのか、何も装飾がされていない透明なコップ。
 ミーナがそのコップに向かってまっすぐ右手を伸ばすと、僅かだがその手が青く光った。

「シェリーダ!」

 ごぽっ
 直後、何も入っていなかったはずのコップに、僅かに波をたてながら水が出現した。

「うおお!すげえ!」

「いいかマサキ、これが魔法だ!」

 ミーナが使用した魔法は、水属性魔法のシェリーダ。何もない場所から水を生み出すというものだ。
 この世界の魔法には「火」「水」「風」「無」「光」「闇」の6属性が存在し、それぞれの属性に100以上の魔法が存在する。中でも無属性魔法はとても強力で、使える者は限られてくる。ミーナは全属性の魔法が使えるため、アルシオ王国からすればミーナは核兵器以上の戦力となる。

「なぁアンドリュー、俺でも魔法ってつかえるのかな?」

「まぁ無理だな。ミーナは妖精族だから魔法が使えるが、見たところマサキは人間族っぽいし」

「まじかー・・・・・・まあいいさ!俺はヒーローだから魔法なんて必要ない!」

 一瞬落ち込んだが、自分はヒーローだという暗示をかけてなんとか立ち直った。そしてそんな雅紀の発言に、アンドリューとミーナはある疑問を抱いていた。

「ヒーローって何?」

「初めて聞くな、なんかの職業か?」

「え?」

◇◇◇

 ヒーローという言葉を初めたアンドリューとミーナは、雅紀から様々なヒーローについて教えてもらった。地球を守る5人前後のカラフルなヒーローから、サナギから進化するヒーローまで、あらゆるヒーローについて叩き込まれた。

「ニホンってのはすげぇんだな!そんな奴等がいるのか!」

「私は聞いたことないな、それ本当の話?」

 日本が生み出した偉大なヒーロー達のことを聞いて興奮するアンドリューと、雅紀の話を信じようとしないミーナ。何せアンドリュー達がいるこの世界は、我々からすれば異世界。当然信じないのも無理はない。

「ああ本当だ、そして俺もヒーローだ!だーはっは!」

 ヒーローのことについて話しているうちに自分もテンションが上がってしまった雅紀は、実際にはヒーローではないのだがヒーローと名乗ってしまった。
 その後も大好きなヒーローについて語っていた雅紀だったが、話始めてからすぐに外がざわついてきていた。

「ん?どうした!」

 軍服のようなものを着た男性がエルファエロの扉を開けてアンドリューのもとへ走ってきた。

「報告します!街の北部に"ナイトメア"が現れ、こちらに近づいております!」

「・・・・・・マサキ、悪いがこの話はまた今度になりそうだ。ミーナ!俺の"甲冑(アーマー)"を持ってきてくれ!」

 アンドリューの言葉に答えたミーナは、エルファエロにある階段を上っていった。そしてほとんど時間をかけずにミーナは2階から紫の甲冑を持ってきた。

「ミーナ!ここら辺一帯に防御魔法張ってくれ!」

「了解よ!」

 ミーナが両手を真上に掲げて防御魔法、所謂「結界」を発動した。

「アニュムエーダ!」

 ふぁあん
 ミーナがアニュムエーダを唱えた直後、街を覆うほどの結界が現れた。
 無属性魔法「アニュムエーダ」。両手を伸ばした状態で、その掌の延長線上の一点を軸に、そこから半球状の結界を張ることができる。

「張れたよ!」

「よし!行ってくる!」

 紫の甲冑を着たアンドリューは店を出て行った。そして雅紀もその後を追うように店を出た。

「ちょっとマサキ!?」

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