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6・歌姫ジーナ

大変お待たせして申し訳ありません。そして、後一話で終わりませんでした。本日更新一話目です。

 私は素晴らしい存在なのだと信じていた。


 生まれこそ平民であったが、幼い頃から整った容姿を褒められることが多く、又、歌声は天使のようだと絶賛されていた。

 美しい姿と優れた才能。その両方を持つ私は、きっと貴族令嬢にだって負けやしないと、自惚れていたのだ。

 きっと貴族になれば、多くの男が私に傅き、多くの女性たちの羨望を向けられると、ずっとそう思っていた。


 成長した私に多くの男たちが求愛したが、私の望む男はその中にはいない。

 私が求めているのは、私の才能を後押ししてくれる、そんな力を持った素敵な男性。

 その人に出逢う為に私は努力を怠らなかった。

 周りからはお高く止まっていると笑われ蔑まれたとしても、私は運命を―――そして、何より自分を信じていた。


 そんな私と『あの人』との出逢いはよくありがちなもの。


 しつこく言い寄っていた男が、断り続ける私に遂に痺れを切らして襲い掛かって来たのだ。

 歌の練習帰りに暗がりへ引き摺り込まれ、恐ろしさに動けなくなった私を救ってくれたのが『あの人』。

 私たちは物語の様に一目で恋に落ちた。

 彼は美しく聡明な男で、伯爵家のたった一人の跡取りだった。

 彼は『歌姫になりたい』という私の夢を応援してくれ、私は彼に支えられ歌劇団に入団し、徐々に人気を得る。

 いつしか、歌劇団の看板女優と言われるまでになり、当代一の歌姫だと謳われ、私は有頂天だった。

 輝かしい実績と成功。美しく魅力的な恋人。


 あの時、私は確かに世界で一番幸せな女だった。


 その幸せに陰りが見え始めたのはいつの頃だったか。

 ある日、突然それが起きたわけじゃない。

 それは緩やかに、けれど、確実に私を絶頂から引き摺り降ろしていった。


 例えば、それは私よりも若くて美しい女の子が歌劇団に入団した時。

 その美しい歌声が私よりも称賛され、新しい歌姫誕生だと騒がれた時。

 私のファンだと熱烈に応援してくれていた男達からの贈り物が目に見えて減っていき、純粋な気持ちの表れであった筈のそれに相手が見返りを求め始めた時。


 美しい青年貴族の恋人に、同じ貴族令嬢の婚約者が出来た時。


 私は努力した。歌姫としても、彼の恋人としても。

 けれど、人気は見る見る落ちていき、彼の心は少しずつ離れていく。


 歌姫になれれば、成功できるんだと思っていた。

 素晴らしい恋人がいれば、幸せになれるのだと思っていた。


 でも、違った。現実は物語の様に簡単にハッピーエンドでは終われない。

 栄光と没落は紙一重。高みにいれば、いつか転落するのが世の中の常。それが嫌ならば、誰でもない己の足で踏み留まるしかないのだ。



 誰も頼れない。王子様を待つ時間はもう過ぎた。―――ならば私は、自分で自分の道を切り開かねばならないのだろう。



 ★★★★★



「御機嫌よう、ティアナさん。ホワイトハート男爵。初めまして、グリーンウッド伯爵」


 突然、ホワイトハート男爵家へと現れた美しい男は、貴族よりも貴族らしい完璧な礼を取って見せた。


「誰だ、貴様は?」

「私はマルコ・ブラックベール。ブラックベール商会の会長をしております。お見知りおきを」

「あの有名なブラックベール商会の?」


 グリーンウッド伯爵が目を見開く。

 それはこの国のものならば、誰でも一度は聞いた事のある名前だ。

 誰も口には出さないが、ブラックベール商会と言えば世界有数の大商会であり、その会長は王族や貴族を差し置いて、世界一とも言われている資産家であった。

 それがこんな若い男だとは知らなかったが、こんな場所で会うとは思いもしなかったというのが本音だ。


「…どうして、そんな奴がここにいるんだ?」


 まるで狙いすましたかのようなタイミングの良さに伯爵の眉が寄る。マルコは笑みを浮かべたまま、それを受け流した。


「ホワイトハート男爵家とは懇意にさせて頂いております。何やら揉めていらっしゃるようでしたので、様子を窺わせて頂きました。しかし、どうやらお困りのご様子。それならば、お役に立てないかと、出しゃばって参った次第です」


 慇懃にそう言う男に、伯爵は鼻を鳴らす。

 胡散臭い事この上なく、ハイエナの様にやってきた男を忌々しく思った。

 だが、渡りに船とも言える。

 グリーンウッド伯爵には息子の作った多額の借金をどうにかしなければならないという急務があるのだ。


「呼ばれてもいないのに出しゃばって来たんだ。当然、何か策があるのだろうな?」

「勿論ございますよ」


 ニッコリと優美に微笑むマルコに、物陰からコッソリ様子を窺っていた彼の実弟は思わず顔を引き攣らせ震えた。

 あの微笑みが悪魔のそれだと気付くものは少ない。

 男性も女性も虜にならずにはいられない彼の美貌に酔っている間に、気が付けば何もかもを失っているのだから。

 そんな彼の表面に惑わされず、訝しげな視線を向けるグリーンウッド伯爵はとても珍しい例だと言えるだろう。


「そのご子息が作られたという借金、宜しければ私がご用意いたしますよ」

「何?」


 さも善意であると言わんばかりの微笑みでそう言ったマルコに、伯爵は目を眇めた。

 確かに世界一とも言われる資産を持つブラックベール商会ならば、テオボルトが意図せず作ってしまった借金など簡単に立て替えられるだろう。

 伯爵は警戒しながらもマルコを見た。


「成程、正に渡りに船だな。だが、見返りは何だ? 商人が無償で動かないことぐらい知っている」

「流石は伯爵様。話が早い」


 胡散臭げな視線を隠さない伯爵にニコニコと笑いながら、マルコは何でもない事の様に言う。


「私からの条件は一つだけ。これを飲んでくだされば、無利息無期限でお貸しすることも吝かではありません」

「条件は何だ?」

「ご子息テオボルト様と、ホワイトハート男爵令嬢ティアナ嬢の婚約を解消して頂きたい」

「は!?」

「何だと!?」


 目を見開いたテオボルトと伯爵を、マルコは全く悪びれずに見つめる。


「実は私、ティアナさんに求愛中なのです。けれど、ご子息との事があり、ティアナさんには良い返事が頂けません。ですから、ご子息とティアナさんの婚約を白紙に戻していただきたいのです」

「何を馬鹿な事を…! テオボルトの借金の形にティアナ嬢を売れというのか!」


 激昂した伯爵の言葉に、テオボルトの顔が真っ青になった。

 婚約者がいる身でありながら、美しい恋人を捨てられず、かといって心優しい婚約者を切ることも出来ない。テオボルトは自分の優柔不断さを心の中でずっと恥じていた。

 その結果がこの惨状であり、その責を自分が負うのは当たり前の事だが、全く何の非もないティアナにまで責が及ぶなど考えもしなかったからだ。


「そうは言っておりません。ただ婚約を解消して頂きたいとお願いしているのです。その後、ティアナさんが誰を選ぶかはティアナさんの自由ですよ。例えば、ティアナさんが再びテオボルト様を選んでも良いという事です」


 淡々とそう言うマルコに伯爵は奥歯を噛みしめた。

 一見、悪くない提案に見える。

 テオボルトとティアナの婚約解消を認めれば、テオボルトが作ってしまった借金は返せるし、ティアナが自由に相手を選べるというのならば、借金を返した後でティアナに再びテオボルトを選んで貰えれば問題ない。

 だが、物事はそんな都合いいようには動かないだろう。

 ティアナとテオボルトがお互いに想い合っていたのならともかく、いくら心優しいティアナであっても、浮気相手の尻拭いに婚約を解消されて再び縁を持とうとは思わない筈だ。ましてや、ティアナは元々身を引こうとしていたのだから。

 そもそも婚約者の自分を差し置いて他に恋人を作る事も、普通ならば不快に思って当然のことであるし、ましてや浮気相手の為に自分との婚約が解消されるというのに、再び婚約を結ぶなどあり得ない。

 テオボルトとて、自分のせいで巻き込まれたティアナと再び婚約するなど、そんな厚顔無恥な事が出来る筈がないし、どんなに秘密裏に事を運ぼうとしても、どこからか噂は漏れ、素知らぬ顔で再び婚約しようとも、とんだ恥知らずだとグリーンウッド伯爵家は貴族社会で爪弾きにされてしまうだろう。

 例えティアナが全てを許し、再びテオボルトと婚約関係になっても、力関係は完全に逆転してしまい、負い目のあるグリーンウッド伯爵家はホワイトハート男爵家に頭が上がらなくなる。

 しかも、例えティアナがテオボルトを再び選んだとしても、多額の負債の代わりにティアナの婚約解消を望むこの男が、大人しくティアナを諦めるとは到底思えない。

 この男は婚約を解消すれば『無利息無期限で貸す』とは言っておらず、婚約解消すれば『無利息無期限で貸すことも考える』と言っていたのだ。ティアナが再びテオボルトを選べば、平然と条件を覆し、グリーンウッド伯爵家へ圧力を掛けてくる可能性が高い。

 いや、どちらに転んでも、後々条件を覆す可能性は高いだろう。借りてしまえば、こちらには負い目がある事になる。

 ただの商家であれば貴族の威光で何とでも出来るかもしれないが、ブラックベールは世界に名高い大商会。王族でも迂闊に手は出せない。伯爵家の威光など歯牙にもかけないだろう。


 つまり、一見こちらに都合のいい条件に見えて、実質この男の手を取ればグリーンウッド伯爵家はこの先もずっとこの男の掌で踊らされるしかないのだ。


(この悪魔が…っ!)


 奇しくも、伯爵はかつて彼を前に幾人もが吐き捨てた言葉を内心で吐き捨てた。

 ティアナを手放しても手放さなくても、結末は変わらない。

 そうなれば、答えは一つしかなかった。


「魅力的な提案だが、乗る訳にはいかない。お前のような男に弱みを握られては堪らないからな。折角出しゃばって来たようだが、お引き取り願おう」

「成程、そうきましたか」

「父上!? ですが…!」


 キッパリとそう言った伯爵にマルコが少しだけ眉を上げ、テオボルトが慌てる。

 借金の総額が伯爵家だけで用意できるものではないとテオボルトも気付いていた。


「何とかする。お前は黙っていろ」

「…っ、マルコ殿、頼む! グリーンウッド伯爵家ではなく、オレ個人に金を用立てて貰えないか? 借りた金は何年かかっても必ず返すから…!」

「いいですよ。ただし、条件は変わりません。ティアナさんとの婚約を解消すること。この条件は譲れませんね」

「………わ、分かった。その条件を飲めば貸してくれるんだな?」

「ええ、勿論」

「駄目だ! テオボルト、それは許さない!」

「しかし、父上! オレはティアナを裏切った! 更にはこのような事態を起こして…これ以上、恥知らずな事は出来ません! それに、オレは伯爵家の名に泥を塗ってしまった…婚約を解消し、どうかオレを廃嫡して下さい!」

「廃嫡はしない! 解消も認めない!」

「父上!」

「結局、どうなさるんですか?」


「旦那様、大変です!」


 言い合う二人にマルコが呆れた視線を向けていると、グリーンウッド伯爵家の家令が飛び込んでくる。


「何だ、この忙しい時に!」

「それが…ぐっ!」


「邪魔するぜ」


 真っ青な顔をした家令を押しのけて、柄の悪い男たちが中へと入ってきた。

 大柄な男たちに囲まれた細身の小狡そうな男の横に、美しい女性が拘束された状態で立っている。

 その美しい顔には殴られたような跡があった。


「ジーナ!」


 テオボルトが叫び、成り行きを見守っていたティアナはこの人が、と改めて女性を見つめる。ジーナと呼ばれた女性はテオボルトの呼び掛けに肩を震わせ、苦々しい表情で俯いていた。


「当然お邪魔して申し訳ありませんねぇ」

「貴様…っ! ジーナに何をした!?」

「いえいえ、大したことはしておりません。ただ、うちの者は気性が荒くてねぇ。中々素直に坊ちゃんの所へ行くと言わないもので、ちょっと荒っぽい方法を取る事になりました」

「何だ、お前らは。ここがグリーンウッド伯爵家だと知っての狼藉か?」

「伯爵様ですか? どうも、私共はこういうものです」


 差し出された名刺を見て、伯爵が眉を寄せる。


「『ダークグレイ商会』? 聞いた事がない名だな」

「最近出来たもので、ご存じないのも無理はありません」

「それで三流商会風情が何の用だ?」

「これは手厳しい」


 厭らしい笑みを浮かべながら、男は手を擦り合わせた。


「私共はこちらのお坊ちゃんにお金をお貸ししておりましてね。しかし、返済期限が過ぎてしまったのに中々返して頂けず、こうして伺った次第です」

「………この借金のか?」


 伯爵が借用書を見せれば、男はヘラリと笑う。


「はい。そちらでございます」

「これなら少し待て。直ぐに用立てる」

「これはこれはありがとうございます。では、ご一緒にこちらもよろしくお願いしますね」

「何?」


 ヘラヘラと笑う男は、懐から紙を取り出し、伯爵へと渡した。

 受け取り視線を落とした伯爵は目を見開く。


「これはどういうことだ!? テオボルトが借りた金は全て請求されていたのではないのか!?」

「え!」


 その言葉にテオボルトが父親から紙を奪い取り、その内容に凍り付いた。


「っ、こんな馬鹿な! 何故、こんなものが存在するんだ! オレは借りた覚えがないぞ!?」


 震えるテオボルトの手から落ちた紙を拾ったティアナは目を丸くする。

 そこには今問題になっていた借用書の金額よりもさらに高額の数字が書かれていたからだ。

 厭らしい笑みを浮かべた男は、ヘラヘラしながら口角を上げる。


「それはこちらのお嬢さんにお貸しした分でして」

「ジーナに!? ジーナ、本当なのか!?」


 テオボルトが尋ねるが、ジーナは俯いたままだった。だが、何も答えない事こそ、肯定していることになる。


「こちらのお嬢さんが払えないと言われるのでね。代わりに保証人であるお坊ちゃんの所へ来たんですよ」

「保証人だと…? そんなものになった覚えは…」

「いえいえ。ほら、貴方様のサインが入っておりますので」

「この書類は…!」


 テオボルトは見覚えのある紙に顔を引き攣らせた。


「ジーナ、これはどういうことだ!? これは貴族向けのレッスンを受ける為のものだって言っていただろう!? 身元の保証人になってくれと…オレを騙したのか!?」

「まぁまぁ、落ち着いて。彼女も気の毒な方なんですよ。所属していた劇団の経営が傾いておりましてね。彼女は必死に立て直そうと借金まで作ったというのに、つい先日同志であった筈の劇団のオーナーが若い歌姫と運営費用を持ち出して逃げてしまったんですよ」


 俯く彼女の顔を無理やり上げさせ、男は気の毒そうな声色で笑う。


「それから、あっという間に残りの団員たちはいなくなり、可哀想な事に劇団は潰れてしまいました。残されたのは彼女と借金だけ」


 まるで悲劇の舞台にでも立っているように男は朗々と語った。


「彼女に残されたのは己の身一つ。このままでは身を売るしかない」


 男は厭らしい視線をジーナへと向ける。


「ジーナを放せ! 彼女は子を宿しているんだ!」

「ええ、勿論ですとも。坊ちゃんが借金を払ってくださるのならばすぐにでも!」

「騙して作られた借用書など無効だ。その女は好きにすればいい。我が家は関係ない」

「父上! 彼女の腹の子はオレの子です!」

「あの女の自業自得だ」

「何てことを…!」

「聞き分けろ、テオボルト。お前を騙して借金を作らせた女だ。腹の子もお前の子か分からない」

「父上、オレは…!」

「既に事態はお前の手に余る所まで来ている。諦めろ」


 テオボルトが泣きそうな顔で伯爵を睨み付けた。

 父の言う事が正しい事は分かっている。

 自分が作った借金すら自分で返す事が出来ず、家や婚約者まで巻き込んでしまった。

 恋人である彼女に騙され借金の保証人となり、その金額は跳ね上がり、返す当てなどない。

 嘘をついた彼女の腹の子が自分の子であるという保証もなく、自分ではもうどうすることも出来ない事は分かっていた。

 彼女の秘密を知り、彼女への気持ちが本当に恋であったのか、彼女を本当に愛しているのか揺らいでいる。


 美しい彼女を愛していた筈だった。

 けれど、心優しいティアナに惹かれていた事も事実だった。

 自分でも矛盾していると分かっていながら、どちらを選ぶことも出来ず、中途半端なままここまで来てしまったツケが回ってきたのだ。

 自分で何とかできる範囲はとっくに越えている。


 それでも、彼女を助けたいと、そう思った。


 ティアナともっと早く出逢っていたなら、彼女と関わる事はなかったかもしれない。

 けれど、自分が苦しくて苦しくて仕方がなかった時、出逢ったのは彼女だった。孤独の震える自分に手を差し伸べてくれたのは彼女だけだった。

 これはもう愛ではないのかもしれない。ただの自己満足かもしれない。

 ――――だが、彼女を見捨てる事はどうしても出来ない。


 テオボルトは覚悟を決めた。


「―――マルコ殿」

「覚悟は決まりましたか?」

「駄目だ、テオボルト!」

「父上、オレはジーナを見捨てられない…騙されたのかもしれないけれど、彼女は確かにオレの救いだったから…だから…っ」



「マルコ様」



 テオボルトの慟哭を遮るように、穏やかな声を響いた。

 名を呼ばれたマルコは、怒涛の展開に息を呑んでいた弟がドン引きする程素早く振り返り、満面の笑みを浮かべる。


「何でしょう、ティアナさん」

「お願いがあるのですけれど…」

「はい。何なりと」


 別人のように微笑むマルコに、ティアナは何でもない事の様にニコリと微笑んで言った。



「私にお金を貸してくださいませ」



 その言葉に、マルコは少しだけ表情を凍らせる。

 だが、すぐに気を取り直して、ニコリと笑いかけた。


「貸すなどと遠慮しなくとも、欲しい物ならば何でもプレゼントしますよ」

「いいえ、貸してくださいませ。担保は『私』」

「ティアナ!?」


 ギョッとして振り返ったホワイトハート男爵に微笑み、ティアナは真っ直ぐな目をマルコに向ける。


「『私』を担保に、お金を貸してくださいませ」

「ティアナさん…それは…」

「お願いします、マルコ様」


 ティアナはただ穏やかに笑う。




「テオボルト様とジーナ様がお借りになったお金と同じだけ、どうか私にお貸しくださいませ」



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