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俺とグルメと妖怪と  作者: 夜桜満月
1/10

出会い1

「あ~美味い! 最高!!」


 手に持っている遠野バーガーに齧り付く。

 ジューシーな肉汁とサルサソースが口の中で絶妙に絡み合う。


 俺、神谷尊(かみやたける)が今食べているのはここ、岩手県遠野市のご当地バーガーだ。

 このハンバーガはその名の通り、全国でも有数のラム肉消費量を誇る遠野市のラム肉を使っている。

 黒ゴマ入りの天然酵母バンズにジューシーなラム肉のパテ、それにトマトのサルサソースが合わさってのこの美味さだ。


 わざわざ遠野市まで来たかいがあるってもんだ。

 まあ俺が住んでいる市からは電車で三十分ほどだから、遠出とは言わないが。

 とにかく、あの煩わしい学園生活を五日も我慢しての休日だ。

 このプチ旅行と食べ歩きライフを思う存分楽しもうじゃないか。


 もう一つ遠野バーガーを取り出す。

 確かこの近くに河童淵があったよな。

 そこに移動して遠野バーガーを味わいつつ、時間をつぶしてお昼はジンギスカンの焼肉なんかもいいな。

 うん。そうだ。そうしよう!

 などと道端で思案しながら立ち止まっていると――――


「ちょっと~そこのアンタ、どいてどいて~」


 という叫び声と共に体に衝撃が走る。

 って、あ!

 手に持っていた遠野バーガーが空中に舞い上がり、数回転したあとグチャリと地面に落ちる。



「あのヤロウ!!」


 俺はすぐさま遠野バーガーを拾い、叫び声の主を追いかける。

 結構距離が離れているし、走りも得意なわけではないがそんなの関係ねえ。

 今、俺が持てる全ての力を持って絶対に追いついてやる。

 どこの誰だか知らんが絶対に許さん!



「おい、そこのお前、止まれ!」


 数分後、なんとか追いつき並走しながら話しかける。

「はあ!? 誰よアンタ」


 相手は女だった。

 年は俺と同じくらい、多分高校生だろう。

 髪は紅髪のショート、きれいな顔立ち、上は白のブラウスに下はピンクのミニスカートで肩に大きなバックをかけている。

 誰もが美人と言わざるを得ない風貌だが、俺は惑わされんぞ。


「俺の事はどうでもいい。それよりこれを見ろ」


 俺は砂まみれでぐちゃぐちゃになった遠野バーガーを相手に見せる。


「何それ? ゴミ?」


「ゴミじゃねえ。遠野バーガーだ!」


「とおのばーがあ?」


 女は何言ってんだコイツ?みたいな表情で俺を見つめてくる。

 顔全体にクエスチョンマークが浮かんでいる感じだ。


「お前岩手県で遠野バーガーって言ったら有名だぞ。知らんのか!」


「な、何よそれ! 生まれてこのかた一度も聞いたことないわよ。知ってるアンタのほうがおかしいんじゃないの?」


 女は顔を真っ赤にさせて反論してくる。

 てか怒りたいのは俺のほうなんだが……


「とにかくお前がさっき俺にぶつかったせいで遠野バーガーが台無しになった。ってことで弁償してもらおうか」


「ああ、さっきぶつかったのはアンタだったのね。まあぶつかったのは悪かったし、謝るわよ。でも今は弁償とかしてる場合じゃないの。後ろを見てみなさい」


「後ろ?」


 走りながら首だけを後ろに向ける。

 すると俺たち目掛けて、一人の子供が猛スピードで駆けて来ているのが見えた。


 年は小学生高学年に見える。割と体格のいい男の子だ。

 だが問題なのはあのスピードと必死な形相だな。

 一体何があったらあの表情になるんだよ。

 まるで鬼のようじゃないか。


「おい、お前あの子に一体何をした? あの子の表情っていうか、纏ってる気迫が尋常じゃねーぞ。それにあの右手も何だか変だ」


「アンタあれが見えるの!?」


 女が急に大声で叫ぶ。

 ってことはどうやら俺の目がおかしくなったわけじゃないってことだ。


「ああ。あの子の右手がまるで水掻きみたいに変化してるように見える。それに皮膚も所々赤く変色しているし、あの子は、一体何なんだ?」


「…………あれは、河童よ」


「は!?」


 







 

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