#面倒臭い
「……で、雛菊さん。 ファイヤアンド……なんちゃらマジシャンって何なんですか?」
聞くと、雛菊は本のページを捲ってオレに見せてくれた。
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<基本魔術>
火魔術(fire magic)
火を操れる魔術。
また、〈火魔術〉を扱える術師を〈火魔術師(fire magician)〉という。
水魔術(water magic)
水を操れる魔術。
また、〈水魔術〉を扱える術師を〈水魔術師(water magician)〉という。
風魔術(wind magic)
風を操れる魔術。
また、〈風魔術〉を扱える術師を〈風魔術師(wind magician)〉という。
土魔術(soil magic)
土を操れる魔術。
また、〈土魔術〉を扱える術師を〈土魔術師(soil magician)〉という。
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「……で?」
「……全部、です。」
彼女はページの下の方を指し示す。
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この内、一番高い属性を示す物を名乗る。また複数種類が同列ならば、各々の名称の間に『アンド』を使う。
例:〈火魔術〉と〈水魔術〉の2つ適性が同等に高い場合 〈ファイヤアンドウォーターマジシャン〉 となる。
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つまりオレはこの4つ、全部の基本属性が使えるって事か?ラッキー!
「……で、適性魔術?とやらを聞き終えたし、オレらはこれからどうすりゃいいんだ?」
「フィーナのところへ行ってくれないかのぅ?」
オレが聞くと、老木が答えた。
「わかった。じゃあ、さっさと行くか。あんたら面倒臭ぇし。」
オレがボヤくと、リーフは嬉しそうに老木の方に飛んで行く。
「えへへ。言われちゃったね。キュ・ラ・ウ・さ・ま♪ キュラウ様、面倒臭いんだって。プクク。」
「ユウマは“あんたら”と言っておったがのぅ 。 そもそも、そちが面倒臭い存在じゃからわしも一緒に面倒臭いと言われてしまうんじゃわぃ。」
「ねぇ、ユーマ。私、面倒臭い?」
「ん?……知らね。」
あからさまに目を逸らす。
正直に言ったって面倒だし、オレ嘘つくの苦手だし??
「わ!目、逸らした! え?私、そんなに面倒臭いの!? ……ぅぅ。そんな事無いよね?マミカー><」
リーフが雛菊に抱きつく。
「うぇーん。」
「わぁ。触れた!すごーい!!」
雛菊は泣いているらしいリーフそっちのけで、撫で撫でしながら喜んでいる。
――うん。早くここから抜け出したい。
「……で、どっちに行けばいいんだ?」
周りはもちろん、木、木、木……。道なんて何処にも無い。一つ、面倒くさい方の妖精が投げた岩によって薙ぎ倒された木々が道を作っているが、アレは進むべき道ではない。
「ほれリーフよ。こやつらをフィーナのところへ案内してやってくれんかのぅ。」
「オイ。リーフをオレらに押し付けんな。」
「ホッホッホ。バレてしまったようじゃのぅ。 しかしわしは見ての通り、ここから動けないのじゃ。道案内など出来ぬわぃ。」
「ハァ。」
面倒な奴から逃げられ無いことを察し、溜め息を吐く。
「そうじゃ。荷物は全部持っていくんじゃぞ。ここにあっては邪魔じゃからのぅ。」
「はぁ?机も?」
「もちろんじゃ。では、健闘を祈るぞ。 あ、リーフよ。帰って来たとき、間違ってもわしを起こすでないぞ。zzz……」
「もう寝てるし。」
言われた通り仕方なく、椅子を机の上に上げて、ガチャガチャ音を立てて運ぶ。
「チッ。」
地味に重い。
机の引き出しには教科書やらノートやらファイルやら、授業で使うやつがすべて詰め込んである。授業の合間にいちいちロッカーに取りに行くのが面倒臭かったからな。
対して、前を行く雛菊さんは楽そう。引き出しの中、スカスカだしな。
――くそっ。
こんな事なら、ちゃんとロッカー使ってれば良かった。
もう後の祭りだが。
キュラウ:「ふむ。そういえば4人だと聞いていたんじゃがのぅ。……まぁ良いか。しかし、最近はどうもすぐ疲れるわぃ。――zzz。」