#妖精
「おぃ。じじぃ、聞いてんのか?」
「まぁまぁ、落ち着くのじゃリーフ。そんなに怖い顔をしておったら、そちの顔にまたシワが増えてしまうわぃ。」
「あ゛ぁ?てめぇ、それ、もうあたしにシワがあるような言い方じゃねぇか?」
「おや。気づいておらんかったか?もうすでに、眉間と頬にシワがあるんじゃがのぅ。
リーフもシワのできる歳になったみたいじゃ。時が過ぎるのは早いわぃ。」
「キュ・ラ・ウ・さ・まぁ-。あなたは相当、切り倒してほしいみたいですね……。フフフ……、アハハ。」
「おぉ、怖い怖い。わ、わしを切り倒しても良い事なんて何も無いぞぃ。わしがいなくなったら、只でさえ少ない妖精が生まれなくなってしまうわぃ。そんな事になって一番困るのは、そちたちじゃろう?」
「てめぇの代わりなんで、そこらじゅうにいるんじゃボケぃ!周りの木も見えない程、あんたの目は衰えたんか?あん?」
「……ほ、ほれ、リーフ。……こ、言葉が乱れておるぞぃ?わしに向かって、そんな口を利いてはいかんぞぃ……。」
さっきまでとは打って変わって、老木はどこか怯えたような声。
「あん?ようやくあたしに怖じ気づいたのk……いでッ!」
「あんたたち!いい加減にしなさい!」
ガツン。 バコッ。
2つの音は綺麗なハーモニーを奏で、森に響き渡る。
「全く、もぅー。」
いつの間にかもう一人、新たに妖精がいた。
彼女は腰に手を当て、お怒りポーズ。
「……相変わらず、リーリュのパンチは痛いのぅ。」
「痛いよ~。リーリュぅ~。拳骨は酷いよぅ~。怪力暴力女ぁ~。」
「はぃ?」
「ひぃぃ。ごめんなさいぃぃーー!!」
リーリュ――と呼ばれた後から来た妖精――に睨み付けられ、リーフ――と呼ばれた初めにいた妖精――は自分の失言に気づき、怯えて謝る。
「リーフ。あなたはもっと妖精らしくしなさい。それと、キュラウ様には敬語!」
「…………はい。」
リーフは、シュンと俯く。
「キュラウ様。あなたは怠けすぎです。仕事はきちんとしてください。」
「……すまんのぅ。」
キュラウ様と呼ばれた老木も、シュンとした声を出す。
そんな二人(一本と一匹?)に、満足げに頷いたリーリュ。
「お見苦しい所をお見せ致しました。では私はこれで失礼します。」
オレらに向き直り軽く頭を下げると、リーリュは二人をキッと睨み付けてから森の中へと飛んでいった。
リーリュがいなくなると、シュンとしていたはずのリーフは普通にケロッとした顔を上げる。
「もぅー。キュラウ様のせいですからねー?」
丁寧な口調に戻っている、が……。
「これこれ。人のせいにしていいのかのぅ?シワシワリーフよ。」
「へぇー。自分の立場が上だからって、そんなこと言っても良いと思っているんですかー?本当に切り倒したくなってしまいますー。」
……また始まった。
二人とも、本当に反省していたのか疑問になってくる。
「あ、あのぅ……。」
面倒くさいなーと思っていたら、雛菊が話に割り込む。――だが。
「シワのある奴の言う事など、信用せんわぃ。」
「あ゛ぁ?あたしにシワは無いっつってんでしょうが!!」
「ほれほれ、ようやく認めたようじゃのぅ。今、わしはそちにシワがあるなどと言っとらんわぃ。ほっほっほっ。」
――雛菊は無視されていた。
「ぅぅー……。」
よっぽどの勇気を出して、声を発したんだろう。顔は真っ赤で、恥ずかしさ(?)に小さく踞っている。
俺は辺りを見渡し、ポツーンと一つだけ落ちている小石を見つける。
それを大木目掛けてポーンと投げた。
幹が大きすぎて狙いが外れる訳がない。
コツーン。
何故か綺麗な音が、辺りに響く。
「全く。人が話している時に横から石を投げてくるとは、礼儀のない奴らじゃのぅ。」
「ホントだよなー。あんたら、あたしらの邪魔すんじゃねぇ!」
うげ。矛先がこっち来た。
ま、いいや。全部こいつに向けちゃえば。
「いやぁ~。なんかこいつが聞きたいことあるっぽくて。」
苦笑いを作り、雛菊を差し出す。
「なぁに~?」
「何か用かのぅ?」
二人はハモり、雛菊に注目する。
「あの……えっと……その……。」
急に注目された雛菊は、パニック気味。
――ちょっと無茶ぶり過ぎたか?
「えっと……あの……。」
真っ赤になって俯いた雛菊は、それでも必死に言葉を発した。
「私達の“魔術適性”、教えてください!!」