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異能の用途が広すぎる  作者: セトラ
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夕刻の記憶

どうもセトラです。

テストやらなにやらで合間縫って書いた結果、突然間が空くという…やっと一息ついたのでまとめて書きました。

第4話ちょっと文字数少なめです。きりのいいところで終わらせたらこうなりました。話引っ張りすぎな気もするしそろそろ新しい話書きたいぜもう…

まだせわしない感じがしますね個人的に。もうちょっと緩やかに話を進められるようがんばりたいと思います。

 その場にいた三人は、驚いた顔をした。

 能力者同士の戦闘ともなると、終わる頃にはどちらかが倒れていて当然だ。しかし、美鑑(みかん)が一番驚いたのはそこではなかった。

 「知らない能力者と」ということは、少なくとも戦闘が始まる前の時点で正矢(まさや)がその能力者と対立関係になったということだ。それとも、ただ単に重が知らないだけで、正矢とはもともと顔見知りだったのだろうか?


「その知らない能力者って、どんな容姿だったか覚えているかしら?」


 (あい)が尋ねた。


「えっと…顔は、見えなかったです。黒いフードをすっぽりかぶってたので…」


 重は、思い出そうと険しい顔をしながら言った。

「でも、背は美鑑様と同じくらいだったと思います。それと、私の見間違えでなければ、おそらく金髪だったかと」

 重は美鑑を少し見ながら言った。

 美鑑は、藍の方を見た。すると、藍の表情が固まっていた。

「あ、藍?どうしたの?」

 美鑑が不安そうに尋ねた。すると、藍はゆっくりと口を開いた。


「……問題の場面を、話してくれないかしら」


 美鑑は、(ひじり)と顔を見合わせた。重が再び話し始めた。

「あ、はい…だいたい、時刻は4時半頃だったと思います。私と正矢はその日、宿題の資料探しに図書館へ行っていて、その帰りでした」

 聖を除いて、美鑑と藍は食い入るように重の話を聞いていた。しかし、周りの生徒たちはいつも通り騒いでいたので、まったく気づいていないようだった。






「思ったより、いいのありませんでしたね」


 重は自分の肩掛け鞄を見下ろしながら、不服そうに言った。鞄には、借りた本が数冊だけ入っていた。


「まあね。でも、これで宿題はなんとかなるさ」


 正矢は少し笑いながら、重にそう言った。

 二人はちょうど、人気のない公園の前を歩いていた。公園は茶色い錆びた柵に周囲を囲まれており、その中にベンチが二つと滑り台、砂場、ブランコなどが設置されていた。

 空には燃えるような夕日が出ており、あたりは信号機も建物の壁も遊具も、オレンジ色に輝いていた。


「それより!!次またこういう機会があったときに、今日みたいに脱線して漫画を読んだりしやがったら許さないですからね!」


 重が正矢の顔を見ながら、不機嫌そうに言った。


「うっ…い、いいだろう息抜きくらい…」


 正矢は顔を背けて、言い訳がましく言った。


「とか言いながら、私が注意してなかったら帰るまで漫画ルート入ってましたよね絶対!」


 重がここぞとばかりに畳み掛けた。

「はぁ!?ま、漫画だってためになるんだぞ!」

 正矢が必死に言い返した。すると、重はニンマリと笑った。

「ふ〜ん、そうですか?それじゃあ、今までためになったものを具体的に挙げていただきましょうかね」

 重がそう言い「ほら、どうぞ?」といった様子で間を空けると、正矢はしばらく口をパクパクさせた後、黙り込んでしまった。重はその様子を見て、初めは堪えていたが笑ってしまった。

「…ふっ、ふふふふっ!」

 すると、正矢はほのかに赤くなりながらパッと重を見た。


「な、なんだよ!?」

「いえ別に……こんな質問、私ですら答えられるのに〜って思ってですね」


 重はそう言いながら、なおもクスクスと笑っていた。すると、正矢はえらく驚いた顔をした。

「なっ!?か、重ちゃんは……まさか漫画の有用性を……!?」

「えっ?いや……なんでそうなるんですか」

 重は呆れたように言うと、少し微笑みながらため息をついた。


「まあ確かに、漫画はおもしろいですよ?でも図書館に行ってまで読むって──」


 重は、そこで言葉を切った。隣を見ると、正矢は話を聞いていないようだった。視線が一点にとらわれている。


「正矢?」


 重がその視線を追うと、その先には背の低い木が生えていた。そしてその木陰に、人がこちらに背を向けて屈んでいた。

 ふつうなら重は「ゴミ拾いか何かだろう」と納得していたかもしれない。しかし、この人はどこか様子が違い異様だった。それは、長いマントについた黒いフードをかぶっているせいかもしれない。

 そして次の瞬間、正矢がその人目掛けて駆け出した。正矢の持っていた本が、バラバラと地面に落ちた。


「やめろ!!」


 正矢が叫んだ。すると、フードをかぶった人はビョンっと飛び上がり、慌ててこちらを振り向いた。夕日に照らされて、わずかにフードの隙間から金の髪と驚きに歪んだ口元がちらりと見えた。

 一瞬、重は正矢を止めようとした。しかしその時、木の方に目をやった重は気がついた。

 フードの人の足元に何かがいる。

 目を凝らしてよく見てみると、それはネコだった。真っ白いネコだが、両目両耳の周り、そして四肢の先だけが黒い。

 そのネコは、ぐったりと地面に倒れていた。間違えようの無いその容姿に、重は目を見開いて叫んだ。


白黒丸(びゃっこくまる)ッ!!」


 白黒丸とは、このネコの名前だった。白黒丸は重の飼い猫で、出先で呼ぶのが少々恥ずかしい名前なのが特徴である。

 倒れる白黒丸と謎のフード人間。しかし、重はハッとした。

 このフードの人はもしかしたら、何らかの要因で倒れてしまった白黒丸を助けようとしていたのかもしれない。そしてそれがたまたま、白黒丸を襲っていたように見えただけだとしたら…?

 そうだ、と重は心の中で呟いた。こちらの方が辻褄が合う。そもそも、その辺をうろついていたネコを襲う必要なんてないはずだ。第一、勘違いして攻撃してしまったら問題になるし、失礼極まりない。

 結論が出た重は、再び正矢とフードの人に目をやった。

 しかし、もう手遅れだった。

正矢は片手を地面につき、もう片方の手で自分の口と鼻を押さえてむせていた。一方フードの人は、もう姿を眩ませてしまっていた。


「ま、正矢っ」


 重は、あわてて正矢に駆け寄った。

しかし、正矢は顔を歪ませて重を見ると、絞り出すように叫んだ。


「来るな!!」

「えっ!?」


 重は驚いて、足を止めてしまった。すると正矢はしばらくその場でじっとし、やがて手を離して倒れこんだ。

「わっ!だ、大丈夫ですか!?」

 重は、正矢の傍に両手両膝をついて顔を覗き込んだ。

「ああ……少しすれば…なんとか、なるさ…」

 正矢が、荒い呼吸をしながら言った。


「あいつは、おそらく有毒ガスの霧を出していた……」


 それを聞いて、重は衝撃を受けた顔をした。


「そ、それって、大丈夫なんですか!?もし──」

「心配いらないよ。致死性は極めて低い……たぶん、気絶させるくらいが限界のガスだよ」


 正矢は、重を安心させるようにそう言った。

「それより、白黒丸はいいのか?」

「あっ」

 重はハッとして立ち上がり、慌てて白黒丸のもとへ駆け寄った。

 体の下に手を入れてゆっくりと抱きかかえると、白黒丸は温かかった。息もちゃんとしているし、命に別状はないらしい。


「よ、よかった!無事ですよ!」


 重はホッとして、うれしそうに正矢に言った。正矢は落ち着いてきたらしく、立ち上がって白黒丸を見に来た。


「それにしても、なんだったんですかね…っていうか、その…少し、急ぎすぎじゃなかったですか?」


 重が、正矢の顔を見て言った。


「私考えたんですけど、あの人ただ白黒丸を助けようとして──」

「違うよ」


 正矢は、すぐに重を遮った。重は驚いた顔をした。


「僕は見たんだ……あいつは、僕が見ている目の前で、白黒丸をその状態にしたんだ」


 正矢は険しい顔で、白黒丸を見た。

「えっ……そ、そうだったんですか……!?」

 重は、困惑してしまった。おそらくそのとき、重からは死角だったのだろう。

 そうなると、話はまた変わってくる。フードの人には白黒丸もしくはネコを襲う必要があった。でも、見られてはいけなかった?それに、殺してはいけなかった?

 でも、逃げていったところを見れば、白黒丸でなくてもほかで代用できるということになる。正矢には勝てただろうから、危険を感じて逃げたのではないはず……。

 重の頭の中で、様々な推論が組み立てられた。


「…でも、いたずらの可能性が一番高いですよね。本気だったんなら、逃げる必要はなかったと思いますし」


 重は、フードの人が逃げていった方向を見ながら、ゆっくりと言った。そのとき、目を覚ました白黒丸が腕の中でみゃあと鳴いた。

「あ、気がついたみたいですよ!」

 重がうれしそうに言った。

「……あ、えっと…とりあえず、今日はもう帰りませんか?」

 すると正矢は、まだ腑に落ちないといった表情で、「…うん」と返事をした。








「それで、そのまま帰ったんですけど…」

 重が言った。

「ネコの名前が濃すぎて内容まったく入ってこなかったわ」

 聖が、正直な感想を述べた。

「そ、そうですか?私はいい名前だと思うんですけど…」

 重は、ちょっと自信を無くしたようだった。


「そ、それじゃあ、そのフードをかぶった人が、正矢の不登校に関係してるかもしれないってこと?」


 美鑑が重に尋ねた。


「はい……あくまで推量ですけれど、あの日以来正矢とは連絡がとれてないんです」


 重は少し俯いて、そう答えた。

「何度か家を訪ねてみたりもしたんですけれど、まったく音沙汰がなくて……」

 すると、それまでじっと聞いていた藍が口を開いた。


「こんな話は知っているかしら」


 その一言で、美鑑と重と聖は一斉に藍を見た。


「もちろん表には滅多に出ない話なんだけれど……ネコ科の動物の内臓から作られる薬が、通常ではまず修復不可能と言われる肉体の損傷を高確率で治すという……」


 藍は、真剣な面持ちで言った。

「当然副作用もあるみたいだし……何より戦時中、その薬が流行りすぎて世界中で猫なんかが乱獲されて、一度絶滅寸前まで追いやられたこともあったのよ。そういう時代背景もあって、今では違法になっているわ」

 美鑑は、こんな話はまったく聞いたことがなかった。おそらくネットで見つけていたなら「あぁはいはい。またこういうのね」程度にしか捉えていなかっただろう。


「で、でも、まだそれの材料集めだったって決めるのは早いんじゃない?」


 美鑑が焦ったように言った。

「いや、違うのよ…」

 藍は首を横に振り、はぁ、とため息をついた。

「違う…?」

 美鑑が首を傾げた。


「そうよ。……私は、そのフードの人を知っている」


 藍がはっきりと言った。

 三人は、これにはまた驚かされた。美鑑は藍の知識量に素直に感心してしまった。


「し、知ってるって──!?」

「生徒会をずっとやっていると、環境全体に目を向けなければならないから、陰の部分だって見えちゃうのよ」


 藍が言った。

「でも、今は話さないでおくわ」

「えっ?ど、どうして?」

 美鑑は困惑した。


「あなたたちの最優先事項、そして望みは、伏御(ふしみ)君の救出だと思うわ。だから、余計に教えたりして、目的を増やさせたくないの」


 藍は美鑑の顔を見て、しっかりと言った。

「彼を全力で救ってあげて」

「「救う」って表現であってるのかね」

 聖が言った。

「ええ。今の彼はもちろん、救出は望んでないわ」

 藍が即座に答えた。


「でも今のままにしておくと、彼はいつか必ず自分を滅ぼす……そうなる前に間違えを正してあげるのが、友達というものじゃないかしら」


 藍は重の顔を見てそう言うと、少し微笑んだ。すると重は、驚いた顔をした。

「ああ、そうだった…まだ説明してなかったわね」

 藍が思い出したように言い、あたりをひっそりと見回した。ちょうど、昼食を食べ終えた生徒が少しずつ戻っていく時間だった。

「案外早いのね……うーん……まあ、伏御君が不登校の理由を探っているのよ」

 藍は、聞かれても困らない言い方で簡潔に説明した。それから、重に顔を少し近づけて声のトーンを落として続けた。


「もっと詳しく知りたかったら、放課後に私のところに来るといいわ。あなたはきっと必要になる」

「……わかりました」


 重は、真剣な表情で頷いた。

 そのとき、屋上の扉がバーンと開いて四人は飛び上がった。見ると、息を切らせた彩莉(ひかり)が立っていた。右手にレジ袋を提げている。


「はあ……はぁ……よかった、まだいたかぁ〜……!」


 彩莉はホッとしたように笑うと、ゆっくりとこちらに歩いてきた。

「彩莉!ずいぶん遅かったね」

 美鑑が驚いて言った。

「あぁ〜……従来のクリームパンにしようと思ったんだけど、新発売のコーヒークリームパンがどうしてもうまそうで…気がつけばこんな時間になってたってわけ」

 彩莉はレジ袋を振ってみせると、美鑑の隣にドサッと座った。そして、レジ袋からクリームパンを取り出した。

「しかも結局クリームパンにしたのね……」

 藍が苦笑いしながら言った。


「そんなことより、ちょっとまずいかもしれないぞ」


 彩莉が唐突に言った。

「学校の奴らの間に、正矢の話が流れ始めてる…さっき購買で聞いたんだ。まだ噂話のレベルみたいだけど」

「たぶん、申告無しの被害者からの経路ね……こういう事態は予想していたけれど」

 藍が頷いた。


「いくら生徒会といえど、誰が襲われたかなんていちいち把握するのは不可能だわ。事実、通報がない限りわからないのだから。口止めは困難ね」

「じゃあ、なるべく急いで行動しなきゃ」


 美鑑が言った。

「そうだな」

 彩莉がクリームパンを頬張りながら言った。それから、美鑑を見た。

「それはそうと、重っちからは何か聞けたか?」

「あっ、それはあとで私から話すから大丈夫だよ」

 重があわてて口を開こうとしたので、美鑑は微笑みながら言った。

 そのとき、昼休み終了の鐘が鳴った。彩莉を除いた四人の手には、未開封の弁当箱の包みが握られていた。







 放課後の鐘と同時に、美鑑のお腹が鳴った。美鑑は口惜しそうに弁当箱を見た。


「げ、元気出せよ美鑑…そんなに我慢できないなら、帰りにどっか適当な場所で食べてから帰ればいいだろ?付き合ってやるからさ」


 彩莉が苦笑いしながら、美鑑を元気付けた。すると、美鑑の表情がパァっと輝いた。


「ほ、ほんとに!?あああぁぁ彩莉〜!!!」


 美鑑が神でも崇めるかのような調子で、彩莉に抱きついた。聖が、手に持っていたイチゴミルクを握り潰した。

「わ、わかったわかった……わかったから離れろ美鑑……!!どっかから殺気が飛んで来てるから……!!」

 彩莉が、もがくように美鑑を振り解いた。聖がイチゴミルクのパックをぶん殴った。

「とりあえず外出ようぜ……!?な!?」

 彩莉が聖の様子を横目でチラチラと確認しながら説得するように言った。美鑑は一つ返事で承諾した。


 まもなく外に出た二人は、お互いまったく別のことを考えていた。彩莉はギリギリで地雷を避けたみたいな表情で学校をチラチラと振り返っていたし、美鑑は座れそうな場所を探すために挙動不審になっていた。


「いやぁ〜危なかったな……あいつが掃除当番でほんと助かった…」


 彩莉がホッとして笑いながら言った。すると、美鑑も笑いながら反応した。


「ほんとだよ〜!あのままだったら、私一人でお弁当を食べるか野垂れ死ぬかの二択だったよ〜」

「あ、あぁー……はっはっ……うん」


 彩莉は、もう突っ込むのをやめた。美鑑は不思議そうに首をかしげた。

 二人は並んで校門を出て、校外に出た。美鑑はまだキョロキョロをやめず、もはや不審者のようだった。


「な、なあ美鑑?そんなにキョロキョロしても、公園までベンチは現れないぞ?」


 彩莉は、人の目を気にして言った。

「いや、もしかしたら……もしかしたら、私たちが見落としてただけでホントはあるかもしれないから……!」

 美鑑は、必死だった。

「そうかぁ?それにしてもよぉ……今のお前、小学生を見つけたときのそれに酷似してるぞ」

 彩莉が呆れたように指摘した。

「しょ、小学生は別!!あの純粋無垢な──」

「あ、あーはいはい。小学生の良さなんて今は聞きたくないぜ」

 彩莉が遮った。


「子供が可愛いとは思うけどよ……言ってしまえば私たちだってまだ子供だぞ?」

「ち、違うよ!私が定義付けてる「子供」には当てはまらない!」


 美鑑は言い張った。

「あーもうわかったよ。さっさと歩くぞー」

 彩莉は適当に受け流して、さっさと歩き始めた。後ろから、美鑑があわててついてきた。


「だいたい、幼児趣味の談義をする前に飯食いたいんじゃなかったのかよ」

「あ、あはは…ごめん」


 美鑑は苦笑いした。

 間も無く、二人は公園にたどり着いた。ちょうど重の話に出てきていた公園だ。

 時間も時間なだけに人は小学生が数人しかおらず、貸切気分の小学生たちは心なしかテンションが高いように見えた。

 彩莉は、パッと美鑑を見た。


「先に飯だぞ」

「うっ!?」


 美鑑はギクリとして、それからトボトボとベンチに向かった。彩莉も後に続き、美鑑の隣に腰掛けた。

「さっきまではあんなに死にそうな顔してたのになぁ……小学生が絡むとこうだもんな」

 彩莉が呆れて呟いた。

「そ、それはっ……別腹だよ」

 美鑑が弁当箱を開けながら言った。彩莉は「なんておぞましい」といった顔をした。

 それからは、少しの間無言の時間が続いた。美鑑がひたすら弁当を頬張り、彩莉はベンチの背もたれに深くもたれかかって子供たちが遊ぶ様子を眺めていた。


「小さいなぁ……私とかあんなに小さかったか?」


 彩莉が不思議そうに言った。美鑑は彩莉を見たが、食べる手は止めなかった。


「そういうものだよ。私たちだって、あの子達よりうーんと小さい姿で生まれてきたんだから」


 美鑑が笑いながら言った。

「それにほら……その証があるでしょ?」

「は?証って……?」彩莉は驚いた様子だった。

「どことは言わないよ〜?でもほら、どこかだけは時間が経ってないみたいに──」

「おい美鑑」

 ニヤニヤと話す美鑑を、彩莉は凄みのある低い声で静止した。美鑑の顔が固まった。


「今の流れで突然他人のコンプレックスを攻撃するたぁ……」

「じょ、冗談!!冗談だから!!」


 美鑑はあわてて言うと、弁当を食べることに徹し始めた。彩莉はため息をついた。

「はぁ……結構気にしてんだぞ〜。藍とか見てると羨ましい限りだぜ」

「藍はもう中学生に見えないよね、いろいろ」

 美鑑もうんうんと頷いた。

 間も無く美鑑は弁当を食べ終え、鞄に弁当箱をしまった。小学生たちは、もう帰ってしまっていた。


「あああぁぁぁもっと速く食べてればああぁぁ……!!」


 美鑑が絶句した。


「いや間に合ったとしてもお前が突然仲間に入りに行くのはおかしいだろ……」


 彩莉はそう言い苦笑いすると、鞄を背負い直して出口へ向かって歩き始めた。美鑑も、あとに続いた。

「はぁ〜生き返った〜!とってもおいしかった!」

 美鑑は満足そうだった。その様子を見て、彩莉も思わず頬が緩んだ。


「次からは食べ損ねたらダメだからな。私が何回も付き合ってやると思ったら大間違いだぞ」

「うん。気をつけるね」


 美鑑はニッコリ笑った。

 それから二人は他愛もない話で盛り上がっていたが、公園の通りを曲がったとき、二人とも足を止めた。

二人が曲がった先には、また公園の通りが続いていた。後ろを振り返ると、そこは公園に向かうために美鑑たちが歩いてきた道になっていた。

「これ…」

 美鑑がつぶやいた。


「おいおい……二日連続かよ……」


 彩莉はあからさまに嫌そうな顔をした。


「美鑑……あいつはなんでもアリだ。どこからでも来るぞ」


 遭遇こそしたものの、まだまともに交戦はしたことのなかった美鑑に、彩莉が言った。美鑑は頷いた。

最近よく、能力のアイディア考えてます。なんというか、極力二番煎じにならないやつはないかと…

でも正直、能力ものの時点でちょっとwww能力系の作品は多すぎるので、かぶらない方が難しいですよね。

まだどんな能力か明確に書かれていないキャラがほとんどですが、おいおい説明シーンを無理にでも作っていくつもりです。

とりあえずありがとうございました。第5話はもうちょいハイペースで書きます(フラグ)

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