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異能の用途が広すぎる  作者: セトラ
3/49

目的

どうもセトラです。

突然の遅延投稿に自分自身驚いております。なんていうかもう頭の中でストーリーが進んで満足しちゃってる感じ…

みんなの能力名とかいつ出そうかなーって考えたりしてます。あと早くもっと派手な戦闘書きたいですね。それはもうちょい進まないとなさそうだけど…

もうキャラは十数人くらいできてるんで、話に合わせてどんどん出していくつもりです。

とりあえず第3話です。

 メールは彩莉(ひかり)からだった。そこには、簡潔な一文が書かれていた。


「まさやにからまれたっぽいたすけて」


「そ、そんな……助けに行かなきゃ……!!」

 美鑑(みかん)が上擦った声で言った。


「えとっ、たぶん場所は聞いてもわかんないと思う。だから、とにかく彩莉の家の周辺を走ってみよう!」

「オーケーだぜ美鑑たん!行こう!」


 (ひじり)も賛成し、二人は駆け出した。美鑑は、携帯も手に持ったままだった。

「美鑑たん!なんかこう了承のメールとかしなくていいのか?「わかったwすぐ行くはwww」とか「晩飯食ってからでいい?」とか!」

 聖が走りながら、ふいに美鑑に言った。

「ええええっ!?いや、了承のメールはしといたほうがいいかもだけどそれはないよ!?これ以上私の数少ない友達を減らしたくないし!!」

 美鑑が慌てながら言い、走ったまま携帯を再び開いた。


「ええと……わ、かった…じぶんが、どのへんに、いるか、わかる?…あと、(あい)は、いっしょに、いないの?…っと」


 美鑑は内容を呟きながら打ち込み、それから送信した。

「送信したよ!とりあえず、返事が来るまで走って待とう!」

 美鑑が聖に言った。しかしそのとき、美鑑はハッとした顔をした。

「ど、どうした?美鑑たん?」

 聖が不安げに尋ねた。

「あ、いやぁええと……私、能力で飛ぶことできるんだった〜って」

 美鑑は今更思い出したことに自分で苦笑いし、右膝につけたリミッターを調整した。小さな作動音が鳴った。

「さっすが美鑑たん!やっぱ遠隔作用(テレキネシス)は無敵だぜ!」

 聖は、例のごとく美鑑の能力を褒めそやした。


「あ、ありがと。それでえっと…私の能力の性質は知ってるよね?自分以外の生き物にも能力は作用させれるけど、自分以外の生き物は動きが予測不能だから能力の計算が難しくなってくるの。だから──」

「わかってるよ。先に行くってことだろ?」


 聖は申し訳なさそうに説明する美鑑を遮り、そう言った。

「構わないぜ。俺っちは美鑑たんの頼みとあらば、地獄でだって待っててやるよ」

「聖……!!うん、ありがとね」

 美鑑はそう言ってにっこり微笑むと、そのまま無重力になったかのようにふわっと飛翔した。

 そのまま小さくなって見えなくなっていく美鑑を見つめながら、聖は一人「マジもんの天使だ」と呟いた。







「はぁ……はあっ……」


 彩莉は、薄暗い路地裏を走っていた。初めは正矢(まさや)の目をかい潜るために路地裏に入ったのだったが、どうやらそれが裏目に出たらしく、そこから出られなくなってしまったのだった。


「(今んとこの印象だと、あのメガネ(まさや)はホントに幻術しか使えないっぽいな…だとすれば、まず私が戦って負けるような相手じゃないと思うんだけど……今日の学校のときみたいに不意打ちでも食らったら…)」


 彩莉は激しく考えを巡らせていた。彩莉の能力はかなり強いが、その強さ故にこんな街中で使うのは非常に危険だった。建物は壊れるし、近くに人がいれば死なせてしまうかもしれない。今の事件の犯人とはいえ、正矢だって当然殺してはならない。

 そこで彩莉は、とりあえず手近な建物の中に隠れることにした。少し走るとちょうど扉が見えてきたので、彩莉はドアノブに手をかけグイッと引くと、雪崩れ込むように中へ入った。

 急いで扉を閉めて施錠すると、彩莉は息を切らして扉にもたれかかり、そのまましゃがみ込んだ。

 顔を上げるとあたりは暗闇だったが、目が慣れてくるとそこが何かの商品の倉庫であることがわかった。

 しかし倉庫といっても別に大きいわけではなく、どちらかといえば飲食店の食材の在庫置き場のような感じだった。畳まれた段ボールや積まれた段ボール、床に落ちた瓶や錆びた棚などが倉庫を埋め尽くしており、もうずいぶん前に閉店していたことは明らかだった。


「うわぁ……なーんか出てきそうな雰囲気だな…」


 彩莉はそう呟くと立ち上がり、足元に注意しながら歩き始めた。たまに瓶の欠片を踏んでパキパキと音がしたが、それ以外はまったくの無音だった。

 部屋の奥にはもう一つ扉があり、どこかへ続いているようだった。確かに自分の足元をゴキブリが走っていったように感じて全身に鳥肌を立たせながらも、彩莉は扉のドアノブにそーっと手を伸ばした。

 そのとき、彩莉の携帯が鳴った。彩莉はビョンッと飛び上がり、小さな叫び声を上げた。


「な、なんだ…携帯かよ…。お、美鑑からだ」


 まだ心臓の動悸は収まらなかったが、彩莉は少しホッとしたように言った。

「藍は一緒にいないの?って……。やっぱそうなるよなぁ」

 彩莉は苦笑いしながらそう呟いた。

 藍は彩莉の通学路の途中に家があるため、そこで別れてしまったのだった。その際藍が「あ、お勉強を教えるという件についてだけれど、私この後すぐにお風呂に入るつもりだから、もう少し待ってほしいわね」と言っていたので、今は藍と連絡が取れないことがわかっていたのだ。

 そこで彩莉は、今藍とは訳あって連絡が取れないこと、自分は今路地裏にある知らない建物の中にいることをメールに書いて、美鑑に送信した。


「よしっ……さて、どうしたものかな……」


 彩莉は、再び行き詰まってしまった。今ここを探索しても、特別なにかの打開に繋がる訳ではない。もっと言えば、そんなことをしていたら美鑑とも合流できなくなってしまうかもしれないのだ。


「はぁ……仕方ないな。これはこれで気がひけるけど、引きこもることにするか」


 彩莉はそう言うと踵を返して、座るために適当な段ボールに向かって歩き始めた。

 その瞬間、背後で扉の開く音が聞こえた。

 反射的に振り返った彩莉は、一瞬扉を開けたのは美鑑だと思った。しかし、そこに立っていたのは美鑑ではなかった。

 そこには、メガネをかけた暗い雰囲気の少年が立っていた。


「ま、正矢……っ!!」


 彩莉が、警戒した表情で言った。

 すると、正矢の口元がニヤリと笑った。


「へぇ〜…僕の名前はもう知ってるのか。これはまあ確かに、生徒会長が言っていた通りかもしれないね。僕が考えているよりもずーっといろんなことを知っている訳だ」


 正矢はそう言うと、鼻で笑った。


「例えば、僕の名前とか」


 バカにされているのは一目瞭然だった。力では絶対に自分の方が勝っていると知っていながらも、彩莉は先入観から動けずにいた。


「それにしても、今日は本当にびっくりしたなぁ。まさか僕の幻術が見破られるなんて。さすが生徒会長さんだよね」


 正矢はそう言いながらも口調も表情も変えず、相変わらずへつらうような態度だった。

「正直、彼女の能力は僕も未知数だった。詳しいことはあまり知らない」

 正矢はやれやれと首を横に振ると、彩莉の顔を見据えた。

「でも、立華(たちばな)さん。君の能力は知っている」

 それを聞いた途端、彩莉は自分の中に、言い知れない恐怖が浮かんでくるのを感じた。


「は、はあっ!?ハッタリかましてんじゃねえぞ!?私はお前なんかには一度も──!!」

「見るからに頭の弱い人だよねぇ君も。今日生徒会長さんが最後に僕の攻撃から君を守ったとき、君の名前を言ったのを聞いた。それならあとは簡単。学校にあるデータをちょっと調べれば、君の能力は知ることができる訳だ。ちなみにこれは、生徒会長に関しても例外ではない」

 正矢は、勝ち誇った表情で言った。


「未知数だったのは今日の日中までの話だ。興味があったし、後学のために彼女の能力もついでに調べた。まあ、今は無関係だから割愛させてもらうよ」


 正矢はそう言うと、再びニヤリと笑った。

 そして、忽然とそこから姿を消した。瞬きするその一瞬で消えてしまったので、彩莉は呆気にとられた。つい今し方まで正矢の立っていたその場所には、ただの暗闇と開いた扉しかなかった。


「幻術か……!!くそっ、どこに行った!?」


 彩莉は身構えてあたりをキョロキョロし、耳をそばだてた。

 すると突然、背後から首に強烈な一撃を食らった。その反動で、彩莉はそのまま床に崩折れた。

 首を押さえながら上を向くと、驚きと興奮の入り混じった表情の正矢が彩莉を見下ろしていた。


「すごい…まさかこんなに有利に戦えるとは…!」


 正矢は独り言のように呟き、自分の手を見た。

「僕の考えも正しかったみたいだしね。君は町の安否を気にして能力は使えない。つまり、無能力者と変わりないのさ。…いや、本当にこうして考えてみるとどうしてターゲットにしてしまったのか…少し陶酔しすぎているのか…」

 それを聞いて、彩莉は機嫌を損ねたように目を細めた。


「私が能力を使わない?へーえ…年下のひよっこがよく言うぜ」


 彩莉は、鼻で笑ってみせた。


「なあ正矢……大事なメガネが吹っ飛んでも知らないぜ」


 そして、彩莉は正矢に向けて手をかざした。すると途端に、正矢の顔に恐怖の色が浮かんだ。そして、咄嗟に横っ飛びした。

 」すると、つい今の今まで正矢の顔があった場所に、彩莉の手からビームが放たれた。それはまばゆい光を発して一直線に突き進むと、壁に当たった。

 その瞬間、猛烈な衝撃音と共に壁が大爆発した。瓦礫がそこら中に飛び散り、衝撃で瓶や棚は吹き飛び、彩莉自身も衝撃で吹っ飛んだ。

 弧を描いて飛ぶとそのまま背中から地面に落ち、息ができなくなった。

「がっ……げほっ、かふっ……」

 そして顔をしかめると、その場でもぞもぞと寝返りをうった。


「だから、使いたく、なかったんだよ……こんな、障害物だらけの、場所で……」


 彩莉は、背中を打ち付けたことでどうしようもなく震える声で呟いた。動こうにも背中が変に痛み、しばらくは俊敏に動けそうもなかった。

 今やあたりには煙がもうもうと舞い、建物がどうなったのかさえわからない状態だった。しかし、その煙の向こうから足音が聞こえ、彩莉はぞっとした。


「いやぁ危なかった……どうやら、反動をもろに受けた立華さんの方がダメージは大きかったみたいだね」


 正矢は無傷らしかった。咄嗟だったとはいえ一呼吸前に回避していたことで、少し遠くまで逃げることができたのだ。

「ちっくしょうッ……!!」

 彩莉は、眉間にしわを寄せて正矢を見上げて睨みつけると、吐き捨てるように言った。それから両手を地面につけて、ゆっくりと起き上がり始めた。

 しかしその瞬間、正矢が吹っ飛んだ。そしてそのままなす術なく建物の壁に衝突すると、ズルズルと地面に落ちた。

 状況が飲み込めなくて唖然とした表情の彩莉が見つめる先には、息を切らした美鑑が立っていた。

「ごめんね彩莉……待った?」

 美鑑が微笑んだ。

「美鑑……!!めちゃくちゃ待ったぜ……!!」

 彩莉は、ホッとした笑顔で答えた。

 そのとき、うしろで正矢がもぞもぞと動き始めた。美鑑はその音を聞いて、急いで振り返った。


「……さ、咲峰(さきみね)さん…か…。今の爆発に気を取られて、この場所を隠す方に手が回らなかったとは…」


 正矢は独り言のようにそう言いながら、壁に手をついて立ち上がった。

「は、ははははっ……そういえば、まだ交戦はしていなかったか……」

「交戦?」

 美鑑が怪訝な顔をした。


「交戦ってどういうこと?まさか、これ全部が君のバトルごっこか何かだったってこと!?」


 美鑑は、信じられないとばかりに言った。


「バトルごっこ、ねぇ…。むしろ、今の僕には遊んでる時間なんてないよ…」


 正矢は、捨て鉢に笑った。

「じゃあ、どういうことなの?君の目的は一体何!?」

 美鑑は語気を強めて詰問した。

「目的?そうだねぇ……ま、第一の目的は」

 正矢は考えるように上を向いた後、美鑑の顔を正面から見据えた。


「咲峰さん、君を倒すことだ」


 美鑑も彩莉も、表情が固まった。

「わ、私を……倒す?」

 美鑑は、思わず聞き返した。


「そうだ。でも、それも通過地点でしかない…。君たちは見るからに何にでも首を突っ込みそうなタイプに見えるから、これ以上は言わないことにするよ。質問攻めは面倒だ」


 正矢はそう言うと、再び能力を使って姿をくらました。

「み、美鑑気をつけろ!!あいつ今度はお前に──!!」

「心配ないよ。聖、彩莉をよろしくね」

 美鑑は彩莉の警告を遮ると小さく笑い、宙に向かってそう言った。

 すると、建物の陰から聖が出てきた。ニヤニヤと笑っている。


「なんだ〜いるのバレちゃってたんだ〜!いいタイミングで不意打ち喰らわそうとか考えてたのになぁ。これはやっぱ美鑑たんの隠れた愛が俺を発見させちゃったのかな〜?」


 聖は相変わらずのテンションでそう言いながら、彩莉を起き上がらせて担ぐように持ち上げた。


「うわああっ!!ちょ、おい聖!もっと私を丁重に扱えよ!!」


 彩莉はジタバタしながら喚いたが、聖は適当に笑っただけだった。

 美鑑は、聖が彩莉を保護したのを見届けると、能力を使って宙に舞い上がった。

「正矢!隠れてないで出てきて!私たちにはまだ聞きたいことが山ほどあるの!!」

 美鑑が地上に向かって、大声で呼びかけた。


「どれだけ優れた幻術が使えても、君は空には攻撃できない!だからもう諦めて!」


 しかし、しばらく待ってみてもあるのは静寂のみで、まったく何も起きなかった。それでも美鑑は罠だと思い、決して地上には降りなかった。


「な、なあ美鑑…あいつもうどっか行っちまったんじゃないか?」


 彩莉が顔を上げて、美鑑に言った。

「つかもう大丈夫だからいい加減降ろしてくれよ…」

 彩莉がうんざりしたように聖に言うと、聖はそのまま手を離した。

「うおわっ!!?」

 彩莉が短い叫び声と共に地面にドサッと落ちた。

 美鑑はため息をつき、ふわりと地面に降りた。


「そうみたいだね…」


 美鑑があたりをキョロキョロしながらそう言った。

「そういや、よく私のいる場所がわかったな」

 彩莉が、今更ながら感心したように言った。

「え?あ、うん。私、聖と一旦別れて空を飛んで探してたんだけど、路地裏は狭くて飛ぶのは逆効果だったから、結局走って探してたんだよね。そしたら急に近くから爆発音がして…まさかと思って見に来たらここにたどり着いたの」

 美鑑が、簡潔に説明した。


「やっぱりか…あいつ、能力を使ってこの場所一帯を隠してるみたいなこと言ってたからな」


 彩莉が言った。

「でもさぁ…なんか変だよな」

 聖が唐突に言った。美鑑と彩莉が、同時に聖を見た。


「美鑑たんと白髪(かさね)の会話聞いてて、俺もあの植物メガネの話は何回か聞いてんだけど、周囲一帯を幻にできるほどの能力者じゃなかったと思うぞ」


 それを聞いて、美鑑もハッとした。以前に(かさね)が、初めて正矢と会ったときの話をしてくれていたときに、「正矢には、自分やちょっとした物体の見た目を変えるくらいの力しかないんです。だから、なにかあったら私が守ってあげるんです」と言っていたのを思い出したのだ。

「単純に、成長したのかな……?」

 美鑑が、困惑した表情で言った。しかし、どうしてもそうではないように思えたのだった。


「とにかく、明日重ちゃんに聞けば、なにか手がかりが掴めるかもしれない」


 そう言って、美鑑は空を見上げた。もう、すっかり夜になっていた。








 翌日の昼休み、美鑑は一緒に屋上に向かいながら早速藍に昨夕のことを話し始めた。


「それで、正矢は結局逃げて行っちゃって…ごめん」


 美鑑は申し訳なさそうに俯き、語り終えた。


「あっ、ああ、別に謝ることはないわよ。むしろ、みんな無事でよかったわ。私にも非はあるんだし」


 藍は少し笑いながら言った。

「でも、能力の強さのお話…これが興味深いわね」

 藍は考えながら言った。

「単に強くなったのか…それとも、なんらかの方法で強化したのか……。でも、強化には総じてリスクが伴うわ…」

 美鑑は、藍が一人で考えているのだと察して、聖を見た。

「聖はどう思う?正矢の能力のこと」

 美鑑が尋ねた。

「能力ねぇ…。俺から言わせてもらえば、能力なんて案外、みんなが思う「常識」の通用しないところが多いもんだぜ」

 聖は美鑑に、「ね?」といった様子で目配せした。

「あ、そっか……聖はそうだよね」

 美鑑は合点がいった様子だった。


「そういえば、咲峰ちゃん」


 ふいに、藍が声をかけた。

圧白(あつしろ)ちゃんにお話を聞いて手がかりを探す際に、事件のことを秘密にしておくのはとても難しいわ。だから彼女には、事件の存在と、今知る限りの全貌を話すことになるけれど。いいかしら?」

 藍が美鑑の顔を見た。そして、「ショックを受けるかもしれないでしょう?」と付け加えた。


「…うん。私も聖も、そうするつもりだったんだ」


 美鑑は真剣な面持ちで頷いた。

「あの子は、とっても強い子なんだよ。自分の友達が道を誤ってしまったって知ったら、きっと殴ってでも更生させる子だから」

 美鑑はそう言いながら、少し微笑んだ。

「それに、口外も絶対しない。だから、大丈夫だよ」

「そう」藍も、嬉しそうに微笑んだ。

「いい子なのね。安心したわ」


 まもなく、三人は屋上に出た。重は二年生で美鑑たちは三年生なので、重はいつも一人で来ていた。

 今日も屋上の様子はいつもとなんら変わらなかったが、それだけに藍は余計に目立っていた。

 何人かは藍を見つけるなり友達に耳打ちし、何人かはキャーキャー言った。藍は成績が完璧で容姿端麗、能力も柊花(とうか)中学校最強で尚且つ生徒会長ともあり、カリスマ性が非常に高かった。


「普段はこんなにオーバーリアクションじゃないのに……やっぱり、私が滅多に屋上に来ないからかしら?」


 藍は周囲の反応に困ってため息をついた。そのとき、こちらに気づいた重が駆け寄ってきた。


「かっ、会長様!!どうしてここに…!?」


 重は、まるで神とでも対面したかのような様子だった。

「あ、あー……あなたが圧白(あつしろ)ちゃんよね?」

 藍が苦笑いしながら確認した。

「は、はいっ!!私、圧白 重といいます!!」

 重は目が泳いでいた。

「えと、そんなに緊張しなくても、いいわよ……?」

 藍も藍でぎこちなくなってしまい、見兼ねた美鑑が口を開いた。


「あのね重ちゃん。今日はちょっと聞きたいことがあって、藍も連れてきたの」

「えっ?聞きたいこと、ですか…?」


 重はきょとんとして、首をかしげた。

 思い当たる節がないのも無理はない、と美鑑は思った。基本的に事件のことは機密事項だし、正矢の不登校からまさかこんなことになってるとは想像もつかないだろうからだ。


「ええ。あなたの友人…伏御(ふしみ) 正矢君のことよ」


 藍が真剣な面持ちで、単刀直入に尋ねた。すると、重はかなり驚いた顔をした。


「正矢ですか…!?」

「そうよ。彼について、知っていることを話してほしいの。なんでもいいわ。それと、最後に彼に会ったときについても聞きたいわね」藍が言った。

「ただ、悪いけど最初はこちらの事情を詮索しないで話してもらえるかしら?」

「あっ、はい。わかりました」

 重はこくこくと頷いた。


「正矢に最後に会ったのは……一ヶ月ほど前。春休み中です」


 重が話し始めた。

「その日、何か変わったことはなかった?」

 藍が尋ねた。

「あの、はい……そのことなんです。私、もう薄々感づいてたんです」

 重は少し下を向いたまま、そう言った。藍は怪訝な顔をした。

「……薄々、感づいてた?つまり、その日に不登校になる原因になり得る何かが起きたってことかしら?」

 すると、重は唇を噛んで俯き、少し沈黙してから話し出した。


「たぶん……私が、すぐに報告するべきだったんです。でも、本当にくだらない理由で……その日は結局、ふつうでしたし…」


 突然うわ言のように話し始めた重を、三人は唖然として見つめた。

「おい落ち着け白髪……いつにも増してキモいぞ」

 聖が苦笑しながら言った。しかし、重がいつものように暴力を振るってこなかったので、聖はまるでこの世の終わりのような顔をした。


「慌てなくていいわよ?抽象的でもいいから…その日なにがあったのか、簡単に教えて?」


 藍がなだめるように言った。すると、重は口を開いた。


「あの日……正矢は、知らない能力者と戦って、倒れたんです」


なんというかやっぱ幻覚見せれるだけでは強さに限度がありますねwww

ということでいよいよ正矢が謎になってきました。そして主人公は今だに見せ場ゼロというね。そろそろ活躍させたいですね。

そういえば挿絵とかできるって聞いたんですけど、やるなら早めの方がよさそうですねw10何話とかになってから始めてもおそらくみなさんの中でキャラのイメージがぼんやり完成しちゃってる頃だと思いますからむしろ違和感しか生まれないと思うのでww

一応キャラデザとかできてるんですよ。早いうちに挿絵貼りたいですね…まあアナログですけど。

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