介入
どうもセトラです。第2話です。
とりあえず今回もひたすら好きなように書かせていただきましたw暇つぶしにどうぞw
だいたい一話8000文字くらいを目安に書いてるんですけど、なんか短い気がしてきました今日この頃w10000文字くらいにしようかな…
そういうわけで、とりあえず第2話です。よろしくお願いします。
彩莉は、まだ状況が飲み込めていなかった。
藍に辞典運びを手伝わされたと思ったら、今度は唐突に校内での能力使用。おまけに周囲の廊下は見た目がガラッと変わったし、なによりどこからともなく人が現れたのだ。
いまやあたりは薄暗く、夜の廃病院を少しだけ明るくした感じだった。天井に付けられた照明は儚げに点滅を繰り返し、目を悪くしそうだった。
「お、おい!なにがどうなってんだよ!?意味分かんないんだけど!?」
彩莉は、藍の背中に向かって尋ねた。
「今にわかるわよ。……ほら、その目でじ〜っくり見ておくといいわ」
藍は薄気味悪い笑顔で振り向き、彩莉に言った。
「い、今にって……はっ!?藍!あぶな──!!」
その瞬間だった。藍が「振り向く」という一瞬の隙を見せたその瞬間、煙の中の「誰か」が藍に向かって飛びかかった。
しかし、藍は笑ったままだった。
「ふふふっ……私はこんな子供騙しじゃ動じないわよ」
なおも薄ら笑いを続ける藍は、挑発するような口調で言った。するとなんと、飛びかかってきた者は残像のようになって消えてしまった。
「は?えっ……ど、どうなってるんだよ……」
彩莉は、ただただ見ていることしかできなかった。
今度は、藍が左手を宙に伸ばした。すると、左手はなにかを掴んだようだった。
一瞬、彩莉には藍が自分の体向きにナイフを掴んだように見えた。しかしそれは、藍が掴んだ手が掴んでいるものだということがすぐにわかった。
驚くあまり目を見開いた彩莉は、その掴まれた手からスクロールするように視線だけを動かした。
「……やっと姿を現したわね。まさかと思って手加減していたけれど……まあ正解だったというか、甘かったというか」
藍は、呆れたようにため息をついて言った。
彩莉も、藍がなにを言っているのかをすぐに理解した。
ナイフを握った手の主は、比較的小柄な少年だった。
丸いメガネをかけ、だらりと顔にかかるような長めの髪をしている。全体的に、暗いイメージだった。
この学校の生徒だ。
「我が校の生徒を守るためにいざ交戦してみたら、その根源が我が校の生徒さんだった、なんてね。ふふ、ほんとに皮肉。お笑い種だわ」
藍は、さもつまらなそうに笑った。そして、腕にスピンをかけて少年の腹に思い切りパンチを食らわせた。
「んぐうぅッ!!?ぐっ……ッ!!」
少年は苦痛に顔を歪ませて、その場に倒れてうずくまった。
「さぁてと。とりあえず私の推理は正しかったみたいねぇ。残念ながら、こっちにはあなたが思ってるよりもずーっといろんな情報があるの。でもまあ、あなたが見境無くこんなことをしているとは思えないから、私個人としてはあなたのプライバシーを尊重したいのだけれど……」
藍は、一旦そこで言葉を切った。そしてうずくまる少年の目線の高さに合わせてしゃがむと、再び口を開いた。
「あまりおおっぴらにはしてほしくないわよねぇ?……今なら。今捕まっちゃえば、個人的に裁くだけで済ませてあげるわよ?どうせいずれ捕まっちゃうんだし──あ」
藍の顔が、初めて警戒した表情に変わった。
また、少年の姿が消えていた。しゃがんだ藍の目の前には冷たいコンクリートの床しかなく、まさにもぬけの殻だった。しかし、彩莉を怯えさせたのは藍の様子だった。
「立華ちゃん危ない!!」
藍が珍しく大きな声を出し、彩莉に飛びかかった。
「うわあっ!ちょっあ、藍っ──!!」
彩莉は唐突すぎてなす術がなく、そのまま藍に押し倒される形で床に伏した。
「……はぁ。行ったわね」
藍は失望の色を顔に浮かべてそう呟くと、すくっと立ち上がった。その様子を見た彩莉は、思わず声を上げた。
藍の右腕に、制服越しに大きな切り傷ができていたのだ。そこからどんどん血が溢れ出ている。しかしそれでも動じない藍に、彩莉は関心した。
「それ……大丈夫か?その、ご、ごめん」
彩莉は、藍が相手に遅れをとったのは自分のせいだと考えたので、一応謝った。
「ううん、構わないわ。そもそも、幻術に関しては見破れる人の方が少ないし……私はエコーロケーションで物理的に見破ることができるんだけれど……」
藍は、廊下の奥の曲がり角のあたりをじっと見つめながらそう答えた。
「な、なあ。これいったいどういうことなんだよ?なにが起きてるんだ?」
彩莉は、やっと疑問に思っていたことを質問した。
すると藍は、彩莉を吟味するように見つめだした。
これは藍の癖だ。だが、そうだと知っていても大層落ち着かなかった。
「……」
「…………」
「(ほんっとにきれいな顔立ちしてるよなぁ……私が男だったら目つけてるかも……ちょっとSなところがあるように見えなくもないかもしれないけど……)」
「……いいわ。話してあげる」
「うえあっ!?」
藍の顔の方に気を取られていた彩莉は、その藍が突然自分に向かってしゃべったので、思わず声を上げてしまった。
「ど、どうしたの?別にそんなに驚かなくてもいいでしょう?」
藍は困惑した表情で彩莉に尋ねた。
「あ、あーいや、なんでもない。ごめん」
彩莉はあわてて謝った。
「それで、あの、説明してくれないか?」
すると藍は、首を横に振った。
「いいえ。まずこれは機密事項だから、あなたから誰かに他言することは全面禁止にさせてもらうということを理解しておいてもらわないといけないんだけれど。いいわよね?」
「あ、あぁ。言うなって言うんなら私は守る」
彩莉は、真剣な面持ちで頷いた。
「そう。それなら、今度は咲峰ちゃんにもお話しないといけないわね。彼女なら約束も守れるだろうし、何よりよく一緒にいるあなただけが知っているとなると、なんとなくぎこちなくなっちゃうでしょう?いずれにしても、彼女は今日……いや、これはいいか」
藍は、さらに言葉を続けた。
「そういうわけだから、この話はあなたと咲峰ちゃんの二人が揃った時にするとするわ。今は早く辞典も運ばなきゃいけないし、私もちょっと保健室に行かなきゃね」
藍はそう言うと、自分の右腕を小さく振ってみせて微笑んだ。
「だから悪いけれど、あとはお願いね」
彩莉は、当然すぐに頷いた。すると藍は「ありがとう」と言い、小走りで医務室に向かっていった。
彩莉も辞典を取りに行こうと歩き始めると、うしろから藍が呼び掛けた。
「立華ちゃん!!」
先ほどのこともあってか、彩莉はかなり驚いた様子で振り返ってしまった。
「今日の放課後、時間はあるかしら?咲峰ちゃんも」
藍が彩莉に尋ねた。
すると彩莉は少し考えた後、しっかりと頷いた。
「大丈夫だ!美鑑なんか毎日暇だしな」
時刻は四時前だった。空は青とオレンジに輝いており、今朝と同じく爽やかだった。
「……で、なんであなたが付いて来るのかしらね」
藍が、聖をジトーっとした目つきで見ながらぼやいた。
「あー?俺の自由だろ。美鑑たんが放課後どこか行くっていうんなら俺は婚約者として──」
「はいはいわかった。わかったわよ。脳内妄想はそれくらいにしておかないと、咲峰ちゃんが困るわよ」
藍はそう言いながら美鑑を見た。美鑑は、案の定オロオロとした様子だった。
「こっ、こんやくしゃ……!?私いつ……!?」
「してないわよ。まったく、変なこと言うのほんとやめなさい」
藍は、呆れてため息をついた。
「そうだぜ美鑑。お前がこんな奴選ぶわけないだろ?」
彩莉がニヤリと笑って、美鑑の背中をぽんぽんと叩いた。
「ほーうお前が俺を『こんな奴』扱いとはなぁ……いいか、俺は美鑑たんに深い愛情を──」
「もううるさいわよ……勝手についてきたんだから、ちょっと口閉じてて」
藍はもう、聖を見るのも面倒くさいようだった。
「えっと、どこに行くとかは決まってるの?」
美鑑が藍に尋ねた。
「う〜ん……特に決めてないわね。どこか見つけて適当に入るつもりだったけれど」
藍が考えながら言った。
「少なくとも、人の多いところがいいわね」
「人の多いところ?でもいいのかよ。機密事項なんだろ?」
彩莉は驚いたように言った。
「本当は誰かの家の中が一番理想的だけれど……まあ喧騒くらいあれば漏れ聞こえもしないはずだから。家の場所にもばらつきがあるし」
藍は簡潔に説明した。
「というより、外ではあまり話したくない話題ね」
藍のその一言で、みんなは一旦話題を変えることにした。
「そうだ聖!あとで宿題教えてくれよ!携帯でいいからさ」
彩莉が思い出したように、聖に声をかけた。
「立華ちゃん。いくら武倉君の頭がいいからって、そうやって答えを教えてもらうのはよくないと思うわよ?」
藍がすかさず遮った。
「この前の授業のときも、あなたにやり方を教えようとしたら巧みに答えだけを聞き出そうとしてきてたわよね」
意地悪く問い詰める藍に彩莉はぐうの音も出ず、「あ、あはは〜……」と虚しい苦笑いをしただけだった。
「あ!でも、私もちょっと教えてもらいたい場所が」
美鑑が手をパッと合わせ、聖と藍の顔を見た。
「おーいいぞ美鑑たん!この俺が心ゆくまで教えてやるぜ」
聖が途端に食いついた。
「そ、そっか!ありがとう」
美鑑が若干困り気味に笑うと、聖は素早く携帯を取り出した。
そして、美鑑の笑顔を連写で撮り始める。
「ちぇー……なんだよ、私だけソロでがんばれっていうのかよ……」
彩莉はふて腐れた顔をして呟いた。
「私が教えてあげるわ。あなたがイカサマしないようにね」
藍がニッコリ笑ってそう言うと、彩莉は救われたような顔をした。
四人は今、交通量の多い大きな道路の歩道を歩いていた。
すぐ左手には大型店がいくつも立ち並び、話すのにちょうど良さそうな店がたくさんある。
「あ、こことかでいいんじゃないか?」
彩莉が立ち止まり、店の並びの中の一箇所を指差した。
そこは、デパートの中に入っているファストフードだった。道路側が全面ガラス張りになっていたので、外からでも店内の様子が見える。同じく学校帰りの生徒で混み合っており、まさに理想という感じだった。
「良さげね。騒いでる人達も、見たところ別の学校の生徒みたいだし」
藍が、店内の学生の制服を見ながらそう言った。
「それじゃあ決まりだね」
美鑑がそう言い、みんなが頷いた。
そこで自動ドアから店内に入ると、思った通りに店内は騒がしかった。
「そういえば、どうしてそんなに秘密なの?」
美鑑が、藍に不思議そうに尋ねた。
「うん?そうねぇ……確かに現時点では悪だけれど、相手が未来ある学生ともなれば、そんなに世間に噂させて社会的立場を貶めるなんてことはできないから、かしらね」
藍はカウンターの列に並びながら説明した。
「へぇ〜……ちゃんと尊重してやるんだなぁやっぱ」
彩莉はそう言いながら、今日見た犯人の様子を思い出していた。
ただ追い詰められていただけなのかもしれないが、あの必死さはかなり訳ありにも見えた。
そうなると、こういう慎重なやり方が一番いいのだろう。
「おっ、順番来たぞ」
そのとき、彩莉がみんなに知らせた。
数分後、四人は適当な席についていた。
「それじゃあ話すわね。どこからにしようかしら……」
藍は少し考えてから話し始めた。
「まず、秘密にしている理由はさっき話した通りだから、それを踏まえて適切に扱ってほしいわ」
藍は三人を順番に見て言った。
「それで、今からする話はここ最近で起きている一連の事件のことなんだけれど……」
藍はそう言うと、改めてまわりを見回した。
「まず、今日の6時間目の前、私と立華ちゃんが校内の地下で犯人に遭遇したわ」
それを聞いて、美鑑は驚いた顔をした。彩莉はうんうんと頷いた。
「そし、て……どこにいったかしら……あった」
藍は、今度は自分の鞄を探り始め、間も無く一枚の写真を取り出した。
「これは、柊花中学校現二年生の集合写真よ。一年の頃の宿泊研修先で撮られたものだわ」
藍はそう言って、三人が見えるようにテーブルの上に置いた。
三人は、身を乗り出して写真を見た。
立派な神社を背景に、かつての一年生たちが三列に分かれ、横向きに並んでこちらを見ていた。
美鑑も一年生の頃に行った神社だ。しかし美鑑のときとは違い、男女で左右に分けられていた。
初めに美鑑は、重を見つけた。友達数人に囲まれて、またそのうちの一人のオレンジのツインテールの子にしっかりと肩を組まれて、驚いた顔をそちらに向けながら崩れたピースをこちらに向けている。
「可愛いなぁ……」
美鑑は思わず声に出した。
「ふふふ、そうね。でも今はそっちじゃなくて……って、立華ちゃんはやっぱりもう気づいたみたいね」
彩莉に目を向けた藍は、少し満足そうに言った。
美鑑と聖が彩莉を見ると、確かにちょっと驚いた顔をしていた。
「そ、そうだよ……こいつじゃないか」
彩莉は、写真のある一点に人差し指を置いてそう言った。
彩莉が示したのは、メガネをかけた地味めの男子生徒だった。一番端にひっそりと立っており、みんなを観察するように横を向いている。ピースはしていなかった。
「その通り。この男子生徒こそが、今日私と立華ちゃんが遭遇した人。そして、事件の犯人よ」
藍は三人に向かって、真剣な面持ちで言った。
「名前は伏御 正矢。最近不登校になっている、柊花中の二年生よ」
それを聞いた途端、美鑑は思い出した。雫雨先生が今朝言っていたことだ。
『「でもま、ここだけの話、二年生にも不登校の子がいるみたいだしね……」』
「この人のことだったんだ……」
美鑑が呟いた。
美鑑が思い出していたのは、先生の話だけではなかった。
伏御 正矢という人間は、たまに重の話の中に出てきていたのだ。美鑑は、重が「正矢は友達だ」と言っていたのも聞いたことがある。
「うん?咲峰ちゃん、何か知ってるの?」
藍が美鑑に尋ねた。
「えっ?あ、う、うん。二年生に重ちゃんっていう友達がいるんだけど、その子が正矢を友達って言ってたのを思い出して……」
美鑑が答えた。
「重ちゃん?って、えーと……圧白 重ちゃん?」
藍が、少し驚いた様子で再び尋ねた。
「髪の白い子だったかしら」
「そうそう!その子だよ」
美鑑は「さすが会長だなぁ」と半ば感心しながらそう答えた。
「そう、ありがとう……近いうちに接触を図ってみるわね」
藍は、美鑑にちょっとだけ微笑んだ。
「あ、重ちゃんだったら毎日私と屋上でお昼を食べてるから、お昼休みに屋上に来てくれれば会えると思うよ」
美鑑が思いついたように言うと、藍は「それは好都合ねぇ。ありがとう」と言った。
そのとき、店員が各々の注文した飲み物を持ってきたので、会話は一旦中断された。
「さて、それで話の続きだけれど」
藍は写真をテーブルの上からとって鞄にしまい、飲み物片手に三人を見た。
「咲峰ちゃん、今日遅刻したわよね?」
唐突に、藍は美鑑にそう問い詰めた。
「ひえっ!?ご、ごごごめんっ!!ごめんなさい!それについてはほんとに──!!」
「あっ、ああいや、別に今から蒸し返して叱ろうなんていうわけではないから安心して」
怯えたように慌てて謝る美鑑に、藍も慌てて補足説明した。
「ただ、私の推理が正しければ、この遅刻はひょっとすると咲峰ちゃんが悪くないかもしれないのよ」
藍は落ち着かせるようにそう言った。
「えっ?わ、私が、悪くない……?」
美鑑は、なぜ急にこの話が持ち出されたのかも、なぜ美鑑が悪くないのかもまったく見当がつかなかった。
「ええ。それじゃあ咲峰ちゃん、今朝の登校の様子をちょっと話してくれる?」
藍が言った。
「えっ、えええっとぉ……い、言い訳っぽくなるかもしれないけど……いい、かな?」
美鑑は、途端に自信を無くしたようだった。しかし、それを聞いた藍はむしろ嬉しそうに「ええ。構わないわよ」と言って微笑んだ。
「そ、それじゃあ……今日は別に、寝坊をしたっていうわけじゃなかったんだけどね。いつも通りの時間に家を出て、そこからいつも通りのルートで学校に向かってたんだけど……ふと曲がり角を曲がったら、また家の前に出ちゃってて……それで私、きっと道を間違えちゃってたんだって──」
美鑑がそこまで説明すると、藍は満足そうに手を挙げて制した。
「さて立華ちゃん。ここでなにか引っかかることがなぁい?」
藍は、今度は唐突に彩莉に話題を振った。すると、彩莉は目を見開いて藍の顔を凝視した。
「おいおいおい……うそだろ?まさか……」
彩莉は、衝撃を受けた顔で言った。
「そのまさかなのよ。咲峰ちゃんは道を間違えたわけではない。その現象は、実は私と立華ちゃんも今日体験しているわ。それに、名前は伏せておくけれど、ほかにもその体験をしたっていう生徒が数人いるわ」
藍は、三人にそう言った。
「彼は幻術を操れるのよ……まあとりあえず、今のところわかっている被害者の共通点は柊花中学校の生徒であること、そして強力な能力者であることだけよ」
「ふーん。強力な能力者ねぇ」
聖が、頬杖をついてジュースを飲みながら呟いた。
「能力者狩りか何かか?そうなると、戦うこと自体が目的って感じにも聞こえてくるな……ずいぶん馬鹿な話だけどよ」
「まあ、みんなのお話と私の持つ情報、推理を合わせても、わかってくるのはこんなところかしらねぇ」
藍が腕を組み、イスの背もたれにしっかりともたれてそう言った。
「物理的な動きはなんとなくわかってきたけれど、まだ動機に不明瞭なところが多いわね。明日圧白ちゃんにもお話を聞けば、少しは進展するかも」
そう言うと、藍は自分の飲み物を一気に飲んでイスから立ち上がった。
「ということで、そういうことだわ。伏御君が二人を同時に襲ってきたのは今日が初めてだし、もしかしたらこれからもっと事件の規模が大きくなるかもしれないわ。だから三人とも気をつけてね。なにか進展があれば、またあなたたちにお話しようと思うわ」
藍は自分の空になった紙製コップを持つと、ゴミ箱に向かった。
「あぁっ!!ちょ、ちょっと待てよ勉強の約束がぁ!!」
彩莉はそう言うと慌ててジュースを飲み干し、走って藍を追いかけた。
「あ、ふ、二人ともまた明日!!」
美鑑もイスから立ち上がり、二人に手を振った。しかし、二人には聞こえていないようだった。
「……どうする、まだどっか寄るか?」
聖が、ゆっくりと立ち上がった。
「え?あ、うーん……」
美鑑は、心配そうに外を見た。
せっかくだから、もう少しゆっくりしたいという気持ちもある。
だが、今の話を聞いたばかりだと……。
「これから暗くなってきちゃうし……聖だって、もしかしたら狙われちゃうかもしれないよね。正矢って人に」
「……」
聖も、窓の外に目をやった。
そして、ため息をつくと自分と美鑑のジュースのゴミを手に取った。
「じゃ、送ってくのも兼ねて、美鑑たんの家で宿題教えてやるよ。行くか」
美鑑と聖は、ちらほらと街灯が点き始めた住宅地を歩いていた。
空は暗い青に染まっていて、だいたいの家が夕飯の時間らしく、たまにいい匂いが漂ってきた。
「重ちゃんは知ってるのかなぁ……正矢のこと」
ふいに美鑑が言った。聖は、少し驚いた顔をして美鑑を見た。
「今日さ、重ちゃんが言ってたでしょ?『友達がいたように見えたけど、その人今日休んでる』って」
美鑑は前を向いたまま言った。
「あれって、今日『も』休んでるってことだったんだよね……それに、幻術を操る能力者みたいだから、ほんとはそこにいたっておかしくなかったんだよ。だから驚いちゃったんだと思う」
「ま、不登校になってる友達が来てる可能性があるってなりゃ当然か」
聖は欠伸をしながら言った。
「でも、闇堕ちした奴を正すのに一番効く方法って、やっぱそいつの友達連れてくることじゃないか?」
聖が他人事のように言った。
「重ちゃんにも、真実を話すってこと?」
美鑑は驚いた顔をして考え込むように俯き、それから口を開いた。
「……うん。それがいいかも」
そのとき、美鑑の携帯が鳴った。
「あっ、ごめん──メールみたい」
鞄から携帯を取り出して開きながら、美鑑が言った。
すると、携帯の画面を見ている美鑑の目がだんだん丸くなっていった。
「ん?どうかしたか?」
聖がそう尋ねながら、美鑑の携帯の画面を横から覗き込んだ。
すると、聖も衝撃を受けた顔に変わった。
「はぁ……!?マジかよ……!?」
状況は進展したけど物理的には全然進展しない回になりましたねw
こ、これからだ…これからきっとアクションシーンももっと書けるはずだ…そしたらきっとおもしろくなる…(?)
各々が注文した飲み物とかがなんだったかを書こうとか考えたんですけど、どのくらい商品名とか出して大丈夫かが不安だったのでやめましたw(オリジナルの商品名とかセンスなくてやめた)実は炭酸が苦手な藍とか書きたかったんですけどね…それはまあまた今度に(殴
それでは次回もよろしくお願いしますw