柊花中学校
初めまして!最近この「小説家になろう」を始めさせていただきましたセトラでございます。
いろんな作品を見ているうちに「能力学園モノって柔軟にいろんな話書けるし書いてて楽しそうだな」って思ったので今書かせていただくことにしました!よろしくお願いいたしますね!
まだシステムとかもよくわかってないので、なにかミスなどありましたら是非お知らせいただけると幸いです!誤字のご指摘なども是非お願いします!あ、ご要望などもありましたらぜh(ry
気分次第で日常回とか戦闘回とか書いていくつもりです。
それでは、よろしくお願いします!
「はああ…もういいよ遅刻で……今はもう歩けないよ…」
美鑑は、路地裏を形成する建物の一つに背中をもたれて、地面に座り込んでいた。
時刻は午前8時13分。
ここまで登校が遅れていることには一応理由があったのだが、それに関しては美鑑自身も半信半疑のままであった。
朝いつも通りの時間に起きて、いつも通りに朝食を食べて、いつも通りに家を出た。天気も良く気持ちのいい朝で、美鑑はいつにも増して爽やかな気分でのんびりと登校していた。
しかし、そのときだった。
道を間違えてしまったのだ。
というのも、何気なく道の曲がり角を曲がると、また自分の家の前に出ていたのだ。
いくらのんびりしていたとはいえ、これには美鑑も驚きだった。通学路は、別にそんなに入り組んだ道ではない。むしろほとんど一方通行といっても過言ではないのだ。それなのに美鑑は、間違いなく自宅の前に出てしまった。
初めは「え?どうして…?」なんて考えていたものだったが、そのうち「ぼーっとしすぎて間違えたのだろう」「いや、でもどう考えても物理的にこの間違え方はおかしい」などとバカみたいに悶々としながら歩き始め、気づけばまた道を間違えていた。
そんなことが二度も三度も続き、とうとう時間が押してきてしまった美鑑は、近道である路地裏を通ることにしたのだった。
しかし、それがいけなかった。
普段使わない路地裏は道がよくわからなく、結局また迷ってしまい何度も同じ場所を通る羽目になった。
そして走りに走って今に至る。額から流れ落ちる汗を腕で拭いながら時計を見ると、時刻は午前8時16分だった。もう1分過ぎている。
はあ、とため息をついて、ゆっくりと立ち上がった。まだ春だというのに、体感温度は真夏のようだった。
「少しだけなら、使っていいかな……今ならもう学校に向かってる人もいないだろうし、きっと誰にも見られない、よね……?」
美鑑は、やや自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
サッと右膝に手を伸ばすと、そこに付けられたリング状の機械をいじる。
小さくキイイィンと作動音がして、近くの石ころが小さく跳ねた。
「うわっ……お、落ち着こう落ち着こう……」
跳ねた石ころを見ながら自制の意味で呟いて、美鑑は指定鞄を背負い直した。
ふわりと服が浮いた。それが風に吹かれたように見えたのは一瞬のことで、それと一緒に美鑑も浮いた。そして、そのまま町がおおよそ見える高さまで浮遊すると、学校を見つけた。
「よし…なるべく急がなきゃ」
一言そう言い、美鑑は学校に向かって一直線に飛んだ。
風が体全体を撫で、耳元でゴォゴォと音を立てた。
髪がこれでもかとばかりになびき、指定鞄が背中に重くのしかかる。
極めつきには、一気に酔ってしまった。
そんな状態を心地悪く感じているうちに、学校の近くまで来た。
もうこれ以上は目立つと考えた美鑑は、ここで地上に降りてそこからは歩くことにした。
正面玄関は、すでに施錠されていた。
生まれてこの方遅刻などしたことのない美鑑は、どうしていいかわからずかなり焦っていた。
ガチャガチャと順番に扉を調べていくも、すべて閉まっている。そして調べ終わるとなすすべもなく、ただ静まり返った中で風の音を聞くだけになった。
いよいよ本格的に困り始めた美鑑は、半べそをかきながらキョロキョロし、校門のところに設置されている「柊花中学校」と刻まれた大きな石板を無意味に見つめたりした。
「(ど、どうすればいいの……!?い、インターホン押す……?でも押したら究極に目立っちゃうし……いや、でもここで立ち往生してたらそれこそ──)」
もう投げやりに扉に目を向けたそのとき、扉のガラスごしに見える廊下を先生が歩いているのが見えた。
ここまで先生を見て嬉しかったことはない。
満面の笑みで扉をガチャガチャさせると、先生は少し驚いたように扉を見た。そして扉の向こうの美鑑を見つけるとさらに驚いた顔をし、扉の鍵を開けに来た。
間もなく扉が開き、先生は美鑑を中へ入れた。
「お前どうしたんだよ……遅刻してきたかと思えばすっげえいい笑顔でアピールしてきてよ……」
先生は、呆れたような様子で尋ねてきた。
「あ、あはは……えっと、その、いろいろあって混乱してたんです……」
美鑑は完結に、自分でも把握しきれていない事態を説明した。
すると、先生はため息をついた。
「……朝のホームルーム終わったら3階空き教室に来い。ちょっと話があるから」
美鑑はギクリとしながらも、とりあえず「はい」と答えた。
その場を離れた美鑑は、遅刻だけでここまでの処置を取られたことに驚いていた。
それとも、遅刻するとみんなこうなるのだろうか?しかし気が滅入るので、ひとまず考えるのをやめて美鑑は急いで教室へ向かった。
教室の前に着くと、異様な入りづらさに襲われた。
教室の中からは担任の日程説明をするくぐもった声が聞こえてきており、ほかの話し声などは一切聞こえない。
「(どうしよう……!?今入ったら絶対みんなこっち見るよね……!?)」
美鑑は一人で悶々と悩みながら、扉の前でまたも立ち往生してしまった。
が、そのとき目の前でガラッと音がして勢いよく扉が開いた。
美鑑はびっくりしてビョンッと飛び上がった。
「ああーやっぱりでしたよ先生……ほらほら、美鑑たんならここにいますよ。さっすが俺のレーダーだなぁ」
目の前に立っていたのは、同じクラスの友人である武倉聖だった。
美鑑から見ると若干変態気質なところはあるが、れっきとした友達だ。
「ひ、聖!え、えーと……おはよう!」
美鑑は、曖昧に微笑んで見せた。
「げっへへへ…今日もキレのある可愛さだなぁまったく!食べちゃいたいぜ!」
聖はさも満足そうにそう言うと、美鑑が教室に入れるように一歩退いた。
すると、美鑑が教室に入るか入らないかのうちに先生から声がかかった。
「はいはい、そういう馴れ合いはいいから。二人ともさっさと座ってね」
先生のわりに若いうちの担任、雫雨先生が、いつもの調子を崩さずに毒を吐いた。
美鑑は少しほっとしながら「はいっ」と返事をすると、小走りで自分の席に着いた。教室内のもう一つの空いた席には、聖が収まった。
「はい。それで──なに言ってたっけ。うーん……ま、いっか」
先生は自問自答して、適当に一人で納得してしまったようだった。クラスメイトの何人かが苦笑いした。
「最近暑い日も少しずつでてきたから、急いで学校来て倒れたりしないようにね〜。もっと余裕持ってお家出ましょうね〜。咲峰さん」
先生は笑顔のまま、美鑑に威圧をかけた。美鑑はなにやら「違うのに」みたいなことを呟いたが、尻すぼみになった。
「極め付きは「暑いのやだから学校行かない」とか言って不登校になった子とかいるからね。まあこれは私の学生時代の話だけど」
先生はそう言うと、ふふっと小さく笑った。
「でもま、ここだけの話、二年生にも不登校の子がいるみたいだしね──」
美鑑はもう、ぼんやりとしか聞いていなかった。一度落ち着いてしまうと、今度は空き教室に行く話の方が気になりだしたのだ。
「──それじゃ連絡は終わり。ちょっと時間も押してるから、各自休憩入っていいよ〜」
先生はさらっとそう言うと、次の授業のある教室へ向かうために出て行った。
一瞬、礼をさせてほしいと思った。
わずか数秒だが、空き教室に行くまでの時間を少しだけ伸ばせるからだ。
だが美鑑は席から立ち上がり、教室を横切って廊下に出た。
知人で溢れかえっている教室から出て空き教室に行くのは少し気が引ける。
それでも今の美鑑にできることは、こっぴどく叱られないことを祈ることだけなのだ。
まもなく空き教室に入ると、すでにそこには先生がいた。
「おう咲峰。ちょっと遅かったな。また遅刻ギリギリだ」
先生が笑いながら適当な机を指差して、私に座るよう促した。
「あっ、あの、はいっ……すみません、ホームルームがちょっと長引いてしまって……」
美鑑は指定された席に座り、あたふたしながらそう言った。
すると先生は、美鑑の前の席の椅子を反対向きにしてそこに座り、美鑑と向かい合う形になった。
「いや構わん。んでえーと、まずだ。登校に能力を使ったな?」
先生が、単刀直入に尋ねた。
「はっ、はい……えっ!?」
美鑑は素直に頷いた後、遅れて反応した。
「あの、なんでわかるんですか……!?」
すると先生はおかしそうに笑い、「自分の膝を見ろ」と言った。
「膝……?あっ!」
言われて自分の膝を見た美鑑は、そのとき初めて気がついた。
膝につけた機械のスイッチがつきっぱなしだったのだ。その証に、小さく丸い緑のランプが点いていた。
「あのなぁ咲峰。遅刻は今回が初めてなんだろうが、それでも能力使用は極力禁止だ。学校ってのは、登校するときからもう始まってんだ。反対に、下校して帰宅して、鞄を下ろして初めて能力使用は自由になる。これは規則だ」
そこまで言うと、先生は一息置いて続けた。
「特にお前は、そんな足のつきそうなもんまでご丁寧につけてるからな」
先生はリミッターを顎で指した。
「まあだから、なんだ……もっと賢く立ち回れ。結局見つかんなけりゃ一緒だろ?」
先生は意味ありげにそう言うと、椅子から立ち上がった。
しかしまだ困惑した様子の美鑑を一瞥すると、先生は一言「宿題はバレるからな。自力でやれよ」とだけ言って空き教室を出て行った。
「……見逃してくれた……!?」
美鑑は、出て行く先生の後ろ姿を信じられない気持ちで見つめながら、うれしそうにつぶやいた。
「なんでバカにするんですか!!」
白髪の女の子が大声をあげた。
「あ?いやいや事実だろ。なあ白髪?」
聖が両手をポケットに入れたまま、小馬鹿にしたような調子で言った。
「今日はそれ自分で作ったんだろ?卵焼きの面影だけある黒い塊とか入ってるし。つかなにより、自分で作んならもうちょい好物だらけの偏ったものとかにすんだろ」
聖は、自分がバカにした点を一つ一つ指摘した。
「わ、私は栄養価も考えてるんです!!それに、りょ、料理なんて普段しませんから!!」
白髪の女の子は、ほんのり赤くなりながら言い返した。
昼休みだった。屋上での二人の喧嘩はほとんどBGMみたいなもので、その場にいる人はいつも気にしていないのである。
「あ、二人とも!また喧嘩してる」
美鑑が、入り口のドアを開けてやってきた。弁当の入った袋を右手に提げている。
「あああああ……美鑑たん……待ってたよ美鑑たん……!」
聖は途端に、手のひらを返したように様子が変わった。まるで、先ほどの喧嘩など忘れてしまったかのようだった。そしてそのまま美鑑にダイブしたが、美鑑が慌てて飛び退いたので地面に衝突し、その場にうずくまった。
「うっぐ……」
「美鑑様!お待ちしてました!こっち!こっちです!」
白髪の女の子は目を輝かせて、しきりに手を振った。
「あ、あ〜うん!ごめんね、ちょっと待ってて重ちゃん」
美鑑は困惑した顔をして白髪の女の子、重にそう告げ、聖の傍にしゃがみ込んだ。
「ご、ごめんびっくりしちゃって……大丈夫?」
美鑑は、不安そうに声をかけた。
「……心配いらない。見える……見えるぞ……」
聖は、しゃがみ込んだ美鑑のスカートを憑かれたように見上げながらそう言った。
「えっ?……えっ?な、何が──?」
美鑑は聖の突然の行動の意味が理解できず、オロオロしてしまった。
するとその瞬間、重が強い衝撃音と共に一直線に飛んできて、聖の頭に強烈な拳骨を食らわせた。
聖の顔はゴッという鈍い音と共に屋上の地面にめり込んだ。
そして、煙が出てコンクリートの欠片が飛び散る。
「能力は極力使いたくなかったんですけどね……聖さんが公衆の面前で猥褻行為をしやがるからこうなるんですよ」
重はすくっと立ち上がり、蔑むような目つきで聖を見下ろした。
「なのでまだ──ぅあっ」
重が再び追い打ちをかけようとしたそのとき、重の体が宙に浮いた。
「は、はいはい!そこまでにしてね」
美鑑が呆れ顔で言い、再び重の身体をゆっくり地面に戻した。それから、リミッターを閉じた。
「えーっとね二人とも。私のため?なのは嬉しいんだけど……毎日毎日こんな喧嘩をしてたら、キリがないんだよ。聖は冗談抜きでヤバそうだし……って重ちゃん、聞いてる?」
美鑑は途中で言葉を切って、重に声をかけた。
重は聞いていないようだった。今いる屋上の入り口の陰のあたりを凝視して、そのまま動かない。
「重ちゃん?どうしたの?」
美鑑は心配になって尋ねた。
「……えっ?あっ、いえ、その、なんでもないです!」
重は慌てた様子で作り笑いをした。しかし、ゆっくりと起き上がってきた聖はそれを見逃さなかった。
「……白髪。隠し事か?」
聖は、鋭い目つきで重を見た。
「は、はあっ!?わ、私が一体何を隠すって言うんですか!!」
重はなおも否定したが、その慌てっぷりはむしろ肯定に見えて仕方がなかった。
「重ちゃん、わかり易すぎるよ……」
美鑑が苦笑いしながら言った。
「あぅぅ……も、もう、わかりました。言いますから」
重は小さく溜息をついた。
「別にそんなに重大なことでもないんですけど……今ふとそっちを見たら、私のクラスの友達がいたように見えて……でもその人、今日休んでますから。いるわけないんですよね。……ってだけです、けど」
重は簡潔に、一気に説明した。そして、顔色を伺うように美鑑と聖を見上げた。
二人とも、あっけにとられた顔をしていた。
「あ、あああああもおおおおっ!!だから言いたくなかったんです!!どうせ聖さんに「気が狂ったか」とか言われるのがオチだってわかってたんですから!!」
重は真っ赤になりながら必死に訴えた。
「あ、あ〜……いや、でも、まあ似てる人とか……もしくは見間違えとか!ねっ、聖?」
美鑑が人差し指をヒョイヒョイさせながら、困った表情で聖に振った。
「ん!?んん、そうだな……美鑑たんの言う通りだ……言う通りだな」
聖も美鑑に合わせたが、重のフォローのためじゃなくて美鑑のためだということが丸分かりだった。
「んぐぐぐ……許しませんよ聖さん!!」
重は真っ赤になってそう言うと、聖に飛びかかった。
「待ってなんで俺だけ!?いや俺だけでよかったけど──待て!クソ白髪!!」
聖は咄嗟に攻撃を避けると、自分も応戦するために身構えた。
「わ、私お弁当食べてこよ……」
美鑑は、一人でそーっと逃げた。
何かの勘が働いていたのかもしれない。美鑑が逃げて間も無く、屋上に先生が現れた。
チャイムが鳴り、5時間目の終了を知らせた。教室が一斉に騒がしくなり始め、美鑑は次の授業の準備を始めた。
美鑑が国語の教科書を机に入れていると、誰かが机に手をバン!とついてきた。続いて、頭上から声が降りかかった。
「なあ美鑑!!聞いてくれ……!!」
顔を上げると、それは美鑑の親友である立華 彩莉だった。
彩莉とは、小学校からの付き合いである。お互いゲーオタであったことが功を奏して、二人は初めて話したそのときからすぐに仲良くなったのだ。
「ひ、彩莉!どうしたの一体」
美鑑は目を丸くした。
「昨日ついに全員カンストしたんだよ!!っくぁ〜見せてやりたかったなぁ……何やっても1ターンで終わるんだ!!」
彩莉は興奮に頬を紅潮させ、急ぎすぎて軽く呂律が回っていなかった。
「うっ、うそ!?すごい!!私なんてまだ──」
「へぇ〜?それで宿題が疎かになっちゃったのかしら?た ち ば な ち ゃ ん 」
そのとき、彩莉の背後からの声が美鑑を遮った。
美鑑と彩莉が同時にそちらを見ると、そこには生徒会長の比奈瀬 藍が立っていた。
藍は、柊花中学校で一、二を争う容姿端麗、頭脳明晰の、まさに才色兼備の存在だ。
綺麗な長い黒髪も、切り揃えられた前髪も、そこにつけている赤いヘアピンも、赤い瞳も、全てが学校中の生徒の人気である。
だが、今はその笑顔に言い知れぬ黒さが浮かんでいた。
「げっ、あ、藍……聞いてたのかよ」
彩莉も、すぐに事態を察したようだった。顔から血の気が引き、目が泳いでいる。
彩莉は今日、比較的大事な宿題をやってきていなかった。
というのも、昨日家に帰ってからぶっ通しでゲームをやっていたのが原因である。
「立華ちゃん。次の国語で使う辞典を取りに行くように先生に頼まれてるから、罰として手伝わされてね」
藍は屈託の無い笑みを浮かべ、彩莉にすらすらと言った。
「えっ、それだけでいいの?」
彩莉は予想外の罰の軽さに、思わず聞き返した。
普段の藍なら、新品のノートの中のマスを「宿題」の文字で埋め尽くしてね、なんていうのも日常茶飯事だからだ。
本人が楽しんでいるように見えなくもないが、来年教師陣が全クラスの委員長と生徒会長にお願いしている罰なんだとか。
「ええ。それともなにかしら、もっとハードなのがお好みだった?」
藍はニヤリと笑うとイタズラっぽくそう尋ね、教室のドアに手をかけた。
「ただ、辞典はずっと使われてない地下倉庫の中にあるみたいだから。これは結構重労働だったりしてねぇ」
脅すようにそう言うと、藍はクスクスと笑いながら教室を出ていった。
彩莉は、唖然としてその場に棒立ちしていた。
すると廊下から「早く来ないと全部任せちゃうわよ〜」と声が聞こえ、それで初めてびくりと動いた。
「ま、待てって!今行くから!」
彩莉は慌ててそう言うと、駆け足で廊下へ出て行った。
「……カンスト先越された……いくらなんでも早すぎない……?」
美鑑はぼんやりと呟きながら、窓の外を眺めた。
「にしてもさあ、お前もほんと仕事熱心な奴だよな」
彩莉が、両腕を頭の後ろで組みながら藍に言った。
二人は廊下を歩いていた。地下倉庫なんて普段は絶対使わないため、たまに壁に掲示された校内案内図で位置を確認しつつだった。
「そーお?」
藍は上の空だ。
「う〜ん……こっちね。まったく、この学校はほんとに無駄に広いわねぇ……迷路みたい」
藍はため息をつきながらぼやくと、校内案内図に背を向けて再び歩き始めた。彩莉もそれについていった。
「ところでさ、一人でいったいどうやって辞典なんか運ぶつもりだったんだ?何十冊って要るだろ?」
彩莉が藍に尋ねた。
「うん?ああ、そうじゃないの。今日の国語は昔の辞典と今の辞典においての言葉の意味の解釈の違いを調べるっていう内容らしいの。だから倉庫に置かれてる古い辞典がいるみたいなんだけれど、クラス全員分はないみたいだから数人で一冊を使うそうよ」
藍はまるで練習していたかのように、これだけを一気に説明した。
「へえ〜……なるほどねぇ。なーんかめんどくさそうな内容だな今日も」
彩莉は気落ちしたようにため息をついた。しかし、そのときちょうど地下に着き、彩莉は初めての地下に興味津々の様子になった。
「ふふふ、そうかしら。私はむしろ興味深い内容だと思うわよ」
藍がそう返したが彩莉は地下の観察で忙しく、まったく聞いていないようだった。
「それにしても、地下っていっても一階とかと別に変わりないんだな。私どっかで「地下はもっと廃墟感がある」って聞いてたから期待してたんだけど」
彩莉はそう言いながらも、まだあたりを観察していた。
「ええ。確かにそれは言えて──あら?」
そのとき、藍がはたと足を止めた。それにつられて、彩莉も咄嗟に立ち止まった。
「なんだよ急に」
彩莉が不思議そうに藍を見た。
すると、藍は壁に掲示された校内案内図をじっと見つめていた。
「なんだよおい。まさか道を間違えたってわけじゃ──」
彩莉がそう言いかけたそのとき、藍が目を閉じてため息をついた。
「その案内図を見て。そしてここが何階の「はず」かを思い出すのよ」
藍はなおも目を閉じたまま、彩莉にそう言った。
「え?ここは地下だろ……って、は!?」
校内案内図を改めて見た彩莉は、思わず声を上げた。
そこには、はっきりと「F1」と記されていた。
今いる場所を間違えたのならまだわかるが、階数そのものなんて間違えようがない。
「そういうことなのよ。……でも、間違えたのは私たちじゃないわ」
藍は、まだ目を閉じていた。まるで、何かを考えて探っているような様子だった。
「私たちにそう思わせてる「なにか」があるのよ……。いや、「誰か」と言った方が正しいかしら?」
藍は瞬時に振り向き、自分の前方に手をかざした。
すると、そこが爆音と共に爆発した。瓦礫が四方八方に飛び、埃がもうもうと舞った。
それから一瞬のことだった。瞬きをするかしないかの一瞬で、あたりは見違えるように変わった。床はところどころ割れた灰色のコンクリートに変わり、天井には使えるかもわからない電球がついている。
しかし、そんな一瞬の出来事よりも、彩莉はその埃の煙に目をとられていた。
埃の中から、咽せる声が聞こえてくるのだ。すると藍は悦に入った表情でそこに歩いて近づき、埃が床に落ちて煙が薄れていくのを見ていた。
「誰かしら?ここ最近ずーっとこの学校の生徒に悪戯してたかまってちゃんは」
藍は猫撫で声でそう言うと目を細め、右手を腰に当てた。
「これは……書き取り罰則じゃすまないわねぇ…?」
藍は口角を上げて、再び手をかざした。
なんか淡々とした感じしますねwストーリー展開とか意味わからなくなってたらすみません。
主人公は美鑑だけど僕は重が圧倒的に好きなんですよね。もうね、白髪可愛い(自分で書いといて何言ってんだこいつ)
一、二ヶ月ほど前から友人とキャラ設定などについてよく話し合ってたので、だいたいの構想はできているつもりです。まあその辺はおいおい書いてきますけどねw
ていうか一話目ってどうしていいかほんとにわかんないですねwキャラを紹介するような日常の内容で終わらせるべきか、ふつうに始めるべきか…
結局自由に書きたい話から書くことにしたんですけどねwまだ書きたい話はたくさんあるので、のんびり書いていきたいと思っています。
更新速度安定しないかもしれないです。ですので、更新に関しては気長にお待ちいただけると…
とりあえず、第1話を読んでいただきありがとうございました!第2話もよろしくお願いいたします!