黒髪の正妃
黒団の幹部様方のご到着ですという声と共に扉が開けられ幹部たちは順々に王の前にて片膝をついて頭をさげた。
「頭を上げよ」
本当にカイル以外の幹部が仮面をつけていることに驚きながらも、王の御前の為フードが外されているにも関わらず黒髪の者がいないことで団長の不在がわかり少し怒りを感じた。だが、この3年怪我の療養をしているとのうわさがあった為に、もしや影武者にでもするつもりで黒髪の正妃を欲しがったのかと正体不明の彼らにつながる情報を探ろうと注意深く観察していた。
「此度のことよくやってくれた。褒章として我が誠意の証として正妃ミルガルドをそなた達に下賜しよう。正妃をここに」
王の発言と共に正妃が連れてこられた。
彼女は珍しく輿には乗らず、旅装のようなすっきりしたドレスを身にまとっている。
「ミルガルドよ、お前の望み通り誓約を果たそう。我らは婚姻の解消とともにお互いを必要とせず、また、お互いに対して権利も敵意も持たぬ、いいな」
「はい」
「ではこれにサインを。宰相と黒団カイルが証人となる。これで誓約はなされた。
黒団よ、ミルガルドはお前たちのものだ」
「ありがとうございます、王よ。これで我らの至宝が戻ってきました」
「戻る?」
カイルの言葉に不思議そうな顔をする王たち。
黒団に歩み寄る元正妃ミルガルドの歩みを見て騎士の一部はなぜか、違和感を感じた。仮面をかぶった幹部の一人が彼女に何かを差し出す。彼女は笑ってそれを受け取り…付けた。
「改めましてご挨拶を。私、黒団団長を務めさせて頂いておりますミルガルド・クシャナと申します」
銀色の仮面をつけて彼女はにんまりと笑いながら言った。