王と正妃
「黒団が無事に竜7匹すべての撃退を成功させました!!!都への被害はございません!」
「そうか!」
民へのアピールのため逃げることなく王城にとどまっていた王。
貴族の多くは巻き込まれることを恐れて王都から離れていた。寵姫や多くの民を王都から避難させておきながらも自分は王都の中心である城にとどまった王と側近は責任のある態度をとったといえるだろう。
前回の時よりも人は少ないが宰相と騎士団長と共に大広間にて黒団幹部の帰還を待った。褒章である正妃もまた控えの間で待っていた、その時を。
そして、時間は黒団と王の密約が果たされた次の日にさかのぼる。
「あら、婚姻の儀以来ね。珍しいこと」それが、夫婦の初めての会話だった。
「用件だけいうぞ、黒団団長が竜の撃退の褒章としてお前が欲しいそうだ。行ってくれるな」
「私に傭兵風情のものになれと…さすが大国の王様は違うはね。10も年の離れた女を妻にしておきながら手も出さず後宮に放置していたと思ったら、今度は褒章品になれとはね」
正妃は扇で目元以外を隠しながら鈴のなる様なきれいな声で嫌味っぽく王を詰った。
「確かに夫としてほめられたものでないことわかっているが、この3年で使った金の分ぐらいはこの国に恩義をかんじないのか!まぁ行かなくても正妃を降り、離宮に行ってもらうがな」
謝りもせずに自分勝手な言い分を言う王に正妃は全てを諦めた。
「わかったわ…でも一つだけお願い」
「なんだ?」
「黒団が成功したら報告に来た場でそのまま私を下賜してちょうだい。そして、その場で誓約してほしいの」
「内容によるが…」
誓約は国の名誉に関わる重要な物なのでさすがに慎重になる王だった。
「お互いに必要とせず、お互いに何の権利も持たないって誓ってほしいの。後からごちゃごちゃ言われるのはいやなの。祖国ともそう誓ってこの国に嫁いだもの」
「まぁ、もうお前は必要ないしな・・・だが、お前が馬鹿な復讐心で黒団にこの国を襲わせる可能性は排除したい」
「そんなことはしないけれど・・・ではお互いにお互いに対して攻撃の意思は持たないと付け加えたらどう?」
「それならいいだろう」
そうして、二人は合意した。
そして物語は現在に戻る。