ある悲劇の予兆
ある小国の王が自分たちの地位を守るために大国に姫を差し出します。
姫に待ち受ける悲劇を理解していながら・・・
ある小さな国の話をしよう。
あの暗黒の時代に度重なる戦乱に巻き込まれずに済んだ小国があった。
あまりにも小さく、手に入れるにもうまみがなく必要とされなかった為に侵略されなかったからだ。よって、戦乱が終わり、5つの国の王となる者たちによる共和会議でも属領ではなく国を解体した方がいいのではと論じられた。
解体さればらばらに国に取り込まれてしまえば、王族は貴族の位や領土すらもらえなくなるだろう。その為、その小国は貴国の属領にしてほしい、なんでも条件をのむからとある大国に求めた。
助けを求められた国はある条件をもとにその国を属領とし、王族にも貴族の位を与えそのまま小国を領地として治められるようにした。利益がないが故にあの戦乱の時代にも放っておかれた小国に対して破格の待遇だった。
その条件とはその小国の王女を大国の王の正妃に迎えることだ。
一見、小国側にしか利益がないようにみえるが、実際は王女に悲劇を与える条件だった。その条件に隠された悪意は小国側も理解していた。
小国には1人の王子と2人の王女がいた。
愛され可愛がられる王太子の同腹の妹姫と疎まれる異腹の姉姫だった。
姉姫は正妃の娘だったが、実母は早くに亡くなり、王は本当に愛していた女性をすぐに次の正妃とした。その継母がすぐに王子を産んだため、姫はよけいにかえりみられることはなかった。
離宮と乳母と侍女の2人だけが姉姫に与えられたものだった。
誰も関心を寄せず教育係りすらつけられなっかた姉姫は忘れられた存在だった。
異腹の弟と妹とすら年に1度会えば良いほうだった。そんな静かな存在だった姫は10歳の時に実の父である王により王位継承権の放棄を求められた。なぜならこの国は性別ではなく順序により王位継承権が決まるからだ。
ただ、王にふさわしくないと判断された者が王位継承権を放棄すれば次の子が王太子となる。王太子は10歳の誕生日に立太子するのがこの世界の伝統である。10歳は成長の一つの区切りとされ貴族の子は10歳で社交界にデビューし、庶民の子供も弟子入りなどが可能になる。姉姫が教育を受けさせられなかったのも継承権を放棄させるためである。後見人や味方になる人間も近づけず、王位に関して教えなければ何もわからないために素直に継承権を放棄するだろうという王のもくろみは当たった。
「お前は王にはなれない、ふさわしくないからだ。わかったか?」
「はい、わかりました父上。」
それだけで姉姫は継承権は放棄した。それで終わったかと思ったが、10年ぶりに間近で見た姫は無表情ながらも美しく成長していた。姫の容姿に貢物としての利用価値を見出した王は姫の住む離宮に人を増やし姫を磨かせることにした。
礼儀作法や会話術などを教え込まれた姫は自分に価値があることを知ったためか移動はすべて侍従が運ぶ輿に乗り侍女を介してではないと他者と話さない高慢な美しい姫として知られることになった。
発言も上からの内容が多く、高位の貴族や他国の使者を怒らせるなどの問題を起こしたため、誰からも期待されることはなく、社交の場にも呼ばれぬ、無能な顔だけの高慢な姫と噂されていた。
大国に差し出す生贄の姫をどちらにするかなど、わかりきったことだった…。




