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傭兵団長は〇〇がお好き!  作者: あると
セイヤード国編
15/17

彼と彼女の裏事情

これにて本編終了です。そして最後にして転生キーワードが増えました!


「そういえば、黒髪が好きだから献上するために正妃が欲しいって馬鹿な理由

なんなのよ?離宮に閉じ込められたら竜の襲撃にあって生死不明にして逃げるってことだったじゃない!証拠を残して行けばあの子が誘導してあいつらに見つけさせるって!なんで計画変えたのよ!」


そうどなるのは黒髪の美しい女性、セイヤード国元正妃の黒団団長ミルガルドだった。

彼女に怒られているのは黒団交渉役のカイルだ。


彼らは王から去った後、拠点の一つである隠れ家で3年ぶりの再会の祝杯を挙げていた。飲んだくれる幹部たちをよそに、まったく酒に酔わない2人は3年間の情報を交換するとともに反省会を行っていたが、計画を突然変えられたミルガルドはカイルに怒りをぶつけていた。


「団員を抑えられなかったんだよ~。3年は長いよ。大変だったんだからな。姫さんの噂聞くたびに奴らは怒り来るって物壊すわ、王宮襲撃計画たてたり、寵姫ちゃん殺そうとしたり…。寵姫ちゃん殺したら姫さんが、疑われるし監視が厳しくなっちゃうからダメだって言ってんのに。あの脳筋どもが!!!」


羽交い絞めにして止めようにも悲しいかな、暴れる幹部はカイルより強かった…。

黒団の数少ない頭脳派は口は回っても力は弱かった。


彼は間違いなく、黒団一の苦労性だった。

団員はそんな彼をこう呼ぶ…お母さんと…。


「おれだってあんな理由でくれるなんて思わなかったよ!大金と戦闘で脳筋どもの気を紛らわせるために青竜に襲撃やってもらったんだよ。もうすぐ時期だっていうから!離宮は砂竜の生息地の近くだったから2度の襲撃もそんなに不審じゃないしね。ダメもとで言ってみただけなのに。なのに…よっぽどいらなかったんだな…」


そういって可哀相な目で敬愛する団長を見るカイルだった。


「うっ…うるさいわね!いらなく思われるようにしてたんだから、しょうがないでしょ。私だってあんな男いらないわよ!あんなマザコンこじらせた女性不審で鱗も太い尻尾もない男願い下げよ!」


そう言い放つミルガルド、そう彼女には秘密があった。


「姫さん、まだ竜の嗜好抜けてないんだな…。初めて会った時も生きたままのウサギににかじりつこうとする姫さんを必死で止めたっけな。」


遠い目をして過去を想うカイルは、実は王に使わされた元教育係だった。

王族の作法を教える前に人間としての教育をさせられることになるとは思ってもみなかった。ミルガルドが場に合わせて、社交的にふるまえるのは彼のおかげだった。


「うっ…今は!ちゃんと自分が人間の娘だってわかってるけど!500年も竜やってたんだからしょうがないじゃない!どこにいるのかも良くわかんないし、あの人達も世界のことなんて知らなかったし…あんたが来て、やっと同じ世界の人間に生まれ変わったってわかったんだもん!」


10年気づかなかったって…竜の時に建物や人を見たでしょうに…ニブッと周りの幹部に呆れた目で見られながら、必死で言い訳をする団長ミルガルドは、竜として500年生きた記憶を持つ女性だった。


幼少期に最低限の教育だけで放置されていた彼女は10年もの時間をぼーっと過ごした。乳母達がこだわらない性格だったこともあり、教育らしい教育はしなかった。なにせ王の謁見まで乳母達を個別認識している様子も無かった。意思の疎通が出来て健康ならいいかと乳母達には放置されていた…。いいのか、それで…?

彼女にとっては子育て中のメスは100年ぐらい巣穴にこもることも多く、そんな竜として生きてきたための時間の感覚の違いもあり、私何に生まれたんだろうと考えているうちに軽く10年は経っていた。


「だって視点が違いすぎるのよ!あんな豆みたいだったものに、自分がなるなんて思いつかなかったんだもん。間近で見たことなかったし!踏みそうで…まずそうだったし…興味なかったから。でも同じ世界なんだから必死に体鍛えて傭兵団作って最愛の旦那様をさがしたら!あんな若い子をナンパしてて!私が死んでそんなにたってなかったのに!」


えーあれナンパ?よくわかんないけど狩り教えてただけだろ

とぼそぼそとささやく周囲に「竜が狩りを教えるのは好意の表れなのよ!私だって、狩りが下手で死にかけてたあのひとに一目ぼれしたから、狩りを教えて番まで持ち込んだもの!」と教える彼女だが、実際は年上のオス竜の役目なため、彼女の元旦那竜にナンパの意図はなかった。


彼女の勘違いは彼女の父竜が娘可愛さでオス竜を近づけさせないためについた嘘が原因だった。


そして、それにより悲劇が…。


姫さんが教えたんだ…。

そして狩ったのですね、あの黒竜の旦那を…。

でもナンパしたからって去勢って…。

俺らはあの時に姫さんには絶対に逆らわないって決めたもんな。

おかげで黒龍(の男)をちょんぎったって騒がれているうちになぜか、黒龍殺しの英雄になっちまうし…。新人はこれを知ると死んだ目になるもんな…竜の旦那も引きこもって出て来ないし…。


痛みをこらえるような悲痛な表情で旦那竜を憐れむ黒団幹部たちは、続く彼女の言葉を聞き、竜じゃなくて良かったと心の底から思った。


「うるさいわね、どうせ脱皮したら生えてくんのよ。(竜すげぇ)

あれは浮気男への制裁として竜の女はみんなやるの。かみちぎるのよ。

(股間を抑え震える幹部達) 

剣でスパッと切ってやっただけ優しいわよ。(そんな優しさいらない)

まったくあれぐらいで引きこもるなんて軟弱な!

(引きこもりで済むなんて強いよ!)

嫉妬させようとほかの男の妻になっても出て来ないし!(そんな思惑が!?)

迎えを待っていたのに!(国にとっては襲撃だよな)

悪い王様にとらわれた姫を竜が救う…憧れだったのに!

(この人、閉じ込めてた方が正解だったんじゃあ?)

出て来ないし…もう私のこと愛してないのね。

もうあの輝く黒い鱗も真っ白な爪も牙も!

はたいてくれとあまたのオスの誘いを受けた自慢の岩をも砕く尻尾もないもの…。(竜ってマゾ!?)黒竜一の美竜とたたえられたこの私が!

こんな姿に…皮も肉も切り裂けないこんな爪と牙(歯だよ)のなにがいいのよ!

尻尾もないし!(いらないから)良さがまったくわからない!

そもそも、見分けがつかないのよー!(俺らのこと色で判断してるもんな)」


そう吠えるミルガルドに王の前での気品はまったく感じられなかった。


はぁ姫さんが3人以上いると見分けられないから俺ら仮面してんだぞ、まったく。

同じ格好して正体不明にしてたら姫さんが名前間違いまくっていてもばれないからな…恥ずかしいんだがなこの恰好。

あぁ、なんでもうちょい違う衣装にしなかったんだろう…わかげの至りか…酒のせいか…

姫さん人から見れば絶世の美女だが、竜視点からは残念すぎるか…

どっちから見ても中身は残念だろうがな…


そう次々に酒を片手にミルガルドの叫びに突っ込みを入れながら、ぼやく幹部たちは自分の世界に浸っている彼女を可哀相なものを見る目でみるが、口元は楽しげに微笑んでいた。


彼女に救われたために、彼女の行動を見ていたいがために彼女と共に生きることを決めた彼らは、間違いなく彼女を愛していた。ラブではなさそうだが…。

彼女の傍にいられなかった3年間は本当に辛かったのだから、幹部だけで彼女を独占できるこの機会は大切な時間だった。


「そうよ!出て来ないんだったら、こっちから迎えに行くわ!

籠城中の王子を姫が迎えに行くっていうのも斬新でいいわ!」


こぶしを振り上げそう叫ぶ彼女は、竜時代になかった創作物にはまっていた。

彼女を喜ばせる為に黒団幹部のカイルが小説を書いたり、芝居の脚本を書いているのは彼女には秘密。


カイルが書く黒団団長の冒険はこれからも続く、彼女が歩み続ける限り。



後は番外編にて竜襲撃の事情など団長と愉快な仲間たちを書いていきます。


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