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傭兵団長は〇〇がお好き!  作者: あると
セイヤード国編
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黒子の独白

黒子をこなしていた姫のつぶやきです。


ある国の城の一室に一人たたずむ女性がいた。


やっと闇が晴れたわ。

そう、彼女はつぶやいた。

そして、彼女は語る。


彼女の想いを、誰に聞かせるともなく。




まったく、私がいなくなった途端に兄様ったら…。

あの女狐と深い仲にならないようにずっと邪魔していたのに、寵姫にするなんて…父様が生きていれば…。あいつらはまるで兄様を諌めないし。


母様の罪を知らない者にとっては、今は爵位がなくても元は公爵家の血統でしかも私の従姉妹なんだから寵姫にはぴったりだもの、反対なんてしないものね。

身分はなくても血は正統。

王様との身分違いの恋なんて民は大好きですもの。

実態は王を堕落させた性悪の娘でもね。

本当に立ち回りのうまい親子だったわ。

上級侍女は貴族出身だから王に報告される危険性があるから懐柔して、いつでも辞めさせられる下級侍女の前でしか本性を現さなかったものね。


おかげであの方に頼んで証拠集めと起爆剤になってもらわなくちゃいけなかったじゃないの!

はぁ、でも3年以内にあの方の正体に気づけば、飾りじゃない正妃になってくださるはずだったのにな。

あの強くて美しい人をお義姉様って呼べるの楽しみにしていたのに…。

あのばか兄は本当に女を見る目がないんだから。

あの女を正妃にするためにお飾りの正妃を探すなんて馬鹿をやるから、侍女に彼女の情報を資料に混ぜてもらったり、お義父様に彼女の祖国の解体を提案したり、黒団に彼女の祖国で解体への危機感をあおってもらったり、ほかの候補者に相手見つけたり…私、がんばったわね。


でも、どうして男ってあのわざとらしい媚びと上から目線に気づかないのかしら?

ほかの貴族令嬢は嫌ってたわよね…私にあの女の話、絶対にしなかったし。

あの女がべったりだったから兄様にも近づかなかったもの。

あら、まさか比較対象がなかったから女を見る目ないのかしら?

やだわ、思い出してみても兄様の周り、私とあの女しかいない…もしかして兄様…もてない?

あんな女じゃなくて私をっていう貴族令嬢なんでいなかったのかしら?

あのぼんくら側近はよく囲まれてたのに…。まさか、兄様あれ以下…?

悲しくなるから考えるのやめましょ。

きっとあの国には肉食系女子はいなかったのよ、そうよ、絶対にそう。

私とあの女のバトルを乗り越えるほど兄様に魅力がないなんてこと、そんなこときっと…きっとないわ。


まあ、あいつらは離宮に閉じ込めたし、甥っ子達には大神官様に有能な教育係を紹介してもらったし。

母を狂わせた奴らも、もう流行病でとっくに逝ってるし、きっともうあの国は平気ね。


母の罪滅ぼしは出来たはずね。

でも、婚姻が決まる前に母の罪を明らかにすれば未来はかわったのかしら?

母を殺した女の娘だって、知られるのが怖くて、兄様に憎まれたくなくて言えなかった。

母様の日記を読んで全てを知っていたのに…私が臆病だったから。


でも、全てを知った時のあの絶望と恐怖は…。

狂った罪人の娘の私もいつか狂うのかと子供ながら不安だったわ。

兄が立太子をするまで合わせてもらえなかったのは兄を私から守るため。

私が先に生まれなかったから、愛する人を守れなくなってしまった母様は狂った。

私が生まれなければあの親子が兄様に近付けることはなかった。

私の乳母だったから兄様は信じてしまった。

私のせいであの国は闇に付けこまれてしまった。

それを私を生かしてくれた父様に知られたくなかった。

たとえ駒としてしか思われていなくても、私はあの隠し部屋で泣く私を抱きしめてくれた父様の為に生きると、私は絶対に狂わない、嘘はつかない、でも気づかれるまでは隠すと決めたのだもの。


流行病によって弱ったあの国を守るためには大国との政略は必要だった。

兄にちょうどいい年頃の姫がいなかったのだから、私がこの国に嫁ぐしか道はなかったのだもの。

私がこの国で地位を確立するまでは、私が罪人の娘とばれるわけにはいかなかった。

父様の死で予定より遅くなってしまったけれど、彼女の協力で兄様の眼を覚ませたんですもの。

最良の未来ではなくても最悪の未来は避けられたわ。


私はもう後悔しない。

過去を想っても、来た道は戻れない。進むだけだわ。

私はこの国で生きていく。

王が彼らの子を望まないから、義兄夫婦に子供は出来ない。

側室が禁じられているこの国ですもの。

王に望まれた夫婦の私達の可愛いあの子が王になる。

はとこ同士の王ね。

五大国で近い血縁関係を持つのはあの子たちだけ、強固な結びつきは国を守るわ。

私はあの国では闇だった、この国では光になって見せるわ。


だって彼女が言ったもの。


光と闇は表裏一体、なくすことはできないがどちらかを強くすることはできる。

どちらか片方しか持ってない人間なんていないんだってそう言ったもの。

私は彼女を信じるわ、闇色の光輝く彼女を。







シリアス半々ですね。

次の話との落差が…着ぐるみの中の人が知りたくないタイプの方は次の話は読まない方がいいかも…。

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