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サクラ

作者: 時雨杏子

私はずっとここにいた


晴れの日も雨の日も台風の日も、春夏秋冬と季節がめぐってもずっとここに居続けた。

それが私のすべきことだから。


春になれば沢山の人が私を見に訪れた。

酒瓶片手にどんちゃんと楽しい歌を歌いながら私の周りに集まった。

時にはゴミを置いたままにする奴もいたが、それを片付ける人もいた。

夏になれば鳥が日除けにと訪ねてきた。

たまに巣を作っていったり、私に寄り添ったりとしていった。

秋になれば私の衣替えが始まった。

緑の衣から茶色のような衣へと姿を変える。

そして衣は春や夏よりも薄くなった。

冬になれば私は白い衣を纏った。

空から舞い落ちてくる白き物を身に纏い、下を歩く人々や寒さに凍える鳥に寄り添った。


それから年月が過ぎたとき一人の女性が現れた。

「もういいの。ごめんなさい…」彼女はそう悲しげに私を見つめながら呟いた。




あぁ、そうか。


彼女に会って私は全てを悟った。

この土地は、私の居場所はもうすぐ無くなるのだと。

持ち主は亡くなり、この場所は道路にされてしまうということを。


涙を流しながら私を見つめる彼女に手を伸ばす。

君が生まれてから私はずっとここにいた。

君が幸せなら私はそれで充分だ。


私はここにいられて幸せだった、と。

君にそれだけを伝えたかった


「もうすぐ最後の花が咲くね。また見に来るから」


それならば私はこの想いを込め花を咲かそう。




君の為に最後の笑顔を咲かせよう。




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